著者
本多 由美子
出版者
計量国語学会
雑誌
計量国語学 (ISSN:04534611)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.1-19, 2017-06-20 (Released:2018-08-01)
参考文献数
13

本稿では,二字漢語における語の透明性の量的な傾向を明らかにし,日本語教育に活用できる情報を得る目的で,書き言葉において頻度の高い語について,調査,分析を行った.語の透明性は「透明」,「片透明(かたとうめい)」,「不透明」に3分類し,調査の際には,客観性を考慮し,辞書に書かれている語義の説明を用いた.分析の結果,以下の3点の結果が得られた.(1)書き言葉において,頻度の高い語には,3分類がそれぞれ一定の割合で存在する.(2)日本語能力試験の初級よりも中級以上の語のほうが「透明」の割合が高く,「不透明」の割合は,初級のほうが高い.(3)日本人大学生を対象にした調査と辞書の説明を利用した調査は,結果の傾向が類似する.これらの結果から,透明性の傾向は日本語教師が教育の内容を検討する際に利用できる情報であることを述べた.
著者
早川 杏子 本多 由美子 庵 功雄
出版者
一橋大学全学共通教育センター
雑誌
人文・自然研究 = Hitotsubashi review of arts and sciences (ISSN:18824625)
巻号頁・発行日
no.13, pp.116-131, 2019

外国をルーツとする非漢字圏出身のJSL 児童生徒がまずぶつかる困難は、複雑な字形を持つ漢字である。本稿では、漢字の字形(形態)の視認性を高めること、一字ごとに造形や構造が異なる字形学習にかかる記憶の負担を軽減することを目的に、教育漢字1,006 字を対象に小単位への構成要素分解を行った。重視したのは、①漢字を母語の文字としない日本語学習者にとって認識しやすいかどうか、②覚えるべき構成要素をできるだけ少なくすることの2 点である。その結果、「漢字部品」の上位30 と「非漢字部品」57 によって認識可能になる漢字は476 個で、1,006 字のうち47.3% の漢字をカバーできることがわかった。