著者
住友 典子 石山 昭彦 竹下 絵里 本橋 裕子 齊藤 祐子 小牧 宏文 佐々木 征行
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.51, no.5, pp.303-308, 2019 (Released:2019-10-26)
参考文献数
15

【目的】慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー (chronic inflammatory demyelinating polyneuropathy; CIDP) の臨床的特徴を後方視的に再考し, 診断の要点を探る. 【方法・対象】2か月以上進行する末梢神経障害で, 電気生理学的もしくは神経病理所見から脱髄を認め, CIDPと確定診断しえた8小児例を対象とした. 診療録より調査し, 障害部位から典型例, 遠位型 (distal acquired demyelinating symmetric; DADS) と非対称型 (multifocal acquired demyelinating sensory and motor; MADSAM) に分け臨床症状, 検査所見, 治療反応性を検討した. 【結果】典型例4例, 非典型例4例 (DADS 3例, MADSAM 1例). 全例で電気生理学的に脱髄所見が確認され, 3例では節性脱髄を認めた. 非典型例2例は髄液蛋白細胞解離と神経根腫大を共に認めなかった. 非典型例では, 典型例に比べ診断に時間がかかり (p=0.029), 遺伝性ニューロパチーとの鑑別に病理検査が有用であった. 治療反応性は全典型例, 非典型2例において免疫修飾治療により症状寛解を認めた. 【結論】小児の緩徐進行性の末梢神経障害ではCIDPの非典型例も鑑別に挙げ, その診断には電気生理学的な節性脱髄所見や病理所見が有用である.
著者
井上 道雄 本橋 裕子 竹下 絵里 石山 昭彦 齋藤 貴志 小牧 宏文 中川 栄二 須貝 研司 佐々木 征行
出版者
日本重症心身障害学会
雑誌
日本重症心身障害学会誌 (ISSN:13431439)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.231, 2015

はじめに経鼻胃管を利用する重症心身障害児(者)(以下、重症児(者))では、骨格変形や嚥下障害等により、適切な胃管留置ならびに胃内に管があることの確認がときに困難である。当院では、管の胃内留置を確認するため、pHチェッカーを用いて逆流物が胃酸と同等のpH5.5以下であることを確認している。一方で、重症児(者)の胃酸分泌抑制薬使用者へのpHチェッカーの有用性を検討した報告は乏しい。目的経鼻胃管を使用する重症児(者)において、胃酸分泌抑制薬の内服がpHチェッカーの結果に与える影響について検証する。対象当院重症児(者)病棟に入院中で経鼻胃管を利用している17人。方法カルテ診療録を調査し、胃管の留置位置が適正であると確認できた例の、注入前と胃管交換時に用いたpHチェッカー5.5 (JMS)の値と内服情報を収集し、その関係について検討した。経鼻胃管内腔の容量が最低1.6mlであるため、胃内容物が1.6ml以下は除外した。結果対象者の使用薬剤数は平均7.8剤、16人が胃酸分泌抑制薬(H2受容体拮抗薬、プロトンポンプ阻害薬)あるいは制酸剤(酸化マグネシウム)を内服していた。46機会の計測を行った。そのうち、胃内容物が1.6ml以下は25機会(全体の54%)であった。残りの21機会分のpH値で検討を行った。21機会中、胃酸分泌抑制薬もしくは制酸薬内服ありの19機会でpH 5.5以下は14機会(74%)だった。考察胃残が十分引けない機会が相当数あり、重症心身障害児の胃酸分泌抑制薬・制酸薬内服者で、pHチェッカーで逆流物を胃内容物であると同定できた割合は半数以下であった。胃残が十分量引けない例での内服薬の間接的影響の有無は今回は検討できていない。胃残が十分量引ければ、pHチェッカーは74%の感度で呼吸器分泌物と胃内溶液が鑑別できる。今後、胃酸分泌抑制薬・制酸薬の非内服者における、胃逆流物量、pHチェッカー値のデータが蓄積し、今回のデータと比較を行うことが必要である。