著者
斎藤 義朗 福村 忍 齋藤 貴志 小牧 宏文 中川 栄二 須貝 研司 佐々木 征行
出版者
The Japanese Society of Child Neurology
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.44, no.6, pp.477-481, 2012-11-01

ノイロトロピン<sup>®</sup> (Neurotropin, ワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液) は頸肩腕症候群や帯状疱疹後疼痛に有効であり, 成人の一次性頭痛に対する効果も報告されている. 今回, 他の各種薬剤に効果が乏しかった慢性頭痛の小児2例で本剤が有効であった. いずれも中学生女子, 片頭痛を発症して2~3年後に増悪をきたし, 不登校にいたった経過で, 起立性調節障害の併存, 間欠的な四肢・背部の疼痛, MRI上の大脳白質散在性病変も共通していた. Neurotropinには他の鎮痛薬にはない下降性疼痛抑制系の増強効果があり, 小児の難治な慢性頭痛にも有効と示唆された.
著者
斎藤 義朗 福村 忍 齋藤 貴志 小牧 宏文 中川 栄二 須貝 研司 佐々木 征行
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.44, no.6, pp.477-481, 2012 (Released:2014-12-25)
参考文献数
15

ノイロトロピン® (Neurotropin, ワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液) は頸肩腕症候群や帯状疱疹後疼痛に有効であり, 成人の一次性頭痛に対する効果も報告されている. 今回, 他の各種薬剤に効果が乏しかった慢性頭痛の小児2例で本剤が有効であった. いずれも中学生女子, 片頭痛を発症して2~3年後に増悪をきたし, 不登校にいたった経過で, 起立性調節障害の併存, 間欠的な四肢・背部の疼痛, MRI上の大脳白質散在性病変も共通していた. Neurotropinには他の鎮痛薬にはない下降性疼痛抑制系の増強効果があり, 小児の難治な慢性頭痛にも有効と示唆された.
著者
山内 秀雄 野田 泰子 須貝 研司 高嶋 幸男 黒川 徹
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.23, no.5, pp.492-496, 1991-09-01 (Released:2011-08-10)
参考文献数
10

前頭葉起源の自動症を呈する2例を報告した.共通した自動症の臨床的特徴は,(1) 開始, 終了が突然である,(2) 発作時間が短い,(3) 動作停止ないし凝視期がない,(4) 腹臥位になり四肢および体幹を激しく不規則に動かす, うなり声ないし悲鳴様の大きな発声を伴うあるいは急に走りだすことがある,(5) 群発する傾向をもつ,(6) 発作時に意識が保たれていることがあり, 発作直後より意識は清明である,(7) 難治性である,(8) 偽性てんかんと誤診されやすい, などであった.自動症時の脳波は激しい運動活動のためartifactのみしか捉えられなかった.自動症開始直前に前頭部, 前頭極部の低振幅律動性速波を認め, また直後の脳波所見は覚醒閉眼時で両側前頭部, 前頭極部に高振幅徐波を認め, 同時に後頭部を中心にα波を認めた.これらの脳波所見は発作の中心が両側前頭葉に限局し, 他の部位に波及しなかったことを示唆するものと考えられた.
著者
中川 栄二 石川 充 山内 秀雄 花岡 繁 須貝 研司
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.25, no.6, pp.571-573, 1993-11-01 (Released:2011-08-10)
参考文献数
6
被引用文献数
2

経管栄養を受け血清亜鉛値が低値であった重症心身障害児 (者) 8名に亜鉛欠乏症の治療を目的とし, 硫酸亜鉛, きなこ, ココアを投与してそれぞれの投与前後の血清亜鉛値の変化を検討した. 投与量は, 硫酸亜鉛は金属亜鉛として1~2mg/kg/日, きなこは15~259/日 (亜鉛としては0, 7~hng/日), ココアは6~129/日 (亜鉛としては0.7~1mg/日) とした. 投与前後の血清亜鉛値は, 硫酸亜鉛では45.5μ9/dl±8.1から76.5μ9/dl±4, 5に, きなこでは53.5μ9/dl±6.4から67.6μ9/dl±9.4に, ココアでは53.7μg/dl±7.2から66.4μg/dl±59にそれぞれ変化し, 硫酸亜鉛, きなこ, ココアのいずれも投与後に, より有意に亜鉛値を改善維持した. また, きなこおよびココアは硫酸亜鉛より少ない亜鉛投与量で同等の効果が認められた。さらにココアはきなこより少ないカロリーと投与回数で亜鉛値を改善維持することができた. 以上の点からこの三者の中では, ココアが亜鉛欠乏症改善剤として最も優れていると考えられた.
著者
小林 瑛美子 中川 栄二 宮武 千晴 竹下 絵里 石山 昭彦 齋藤 貴志 小牧 宏文 須貝 研司 佐々木 征行
出版者
一般社団法人 日本てんかん学会
雑誌
てんかん研究 (ISSN:09120890)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.76-82, 2015-06-30 (Released:2015-08-06)
参考文献数
13
被引用文献数
2 2

症例は10歳女児。新生児期脳出血後遺症による非定型欠神発作を認めていたが抗てんかん薬(クロナゼパム、カルバマゼピン、ラモトリギン)の内服により疲労時に短い発作症状を認めるのみに落ち着いていた。9歳時に乾燥細胞培養日本脳炎ワクチン第1期1回目及び2回目を接種した。2回目接種後から1カ月経過した頃より非定型欠神発作が群発するようになった。頭部MRIでは右側大脳・脳幹部の萎縮を認めていたが進行はしていなかった。脳波では2.5~3 Hzの全般性棘徐波を睡眠ステージに関係なく連続的に認め、電気的なてんかん重積状態を示した。髄液中の抗グルタミン酸受容体抗体の上昇を認め、てんかん発作の急激な悪化に自己免疫異常が関与していると考え、免疫グロブリン静注投与を行ったところ発作頻度が減少し脳波上の改善も得られた。臨床経過からてんかん発作の急性増悪因子として日本脳炎ワクチン接種が考えられた。
著者
吉岡 誠一郎 須貝 研司 富士川 善直 小牧 宏文 中川 栄二 佐々木 征行
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.39, no.6, pp.432-435, 2007-11-01 (Released:2011-12-12)
参考文献数
9

乳児期に部分皮質形成異常と診断されていたが, 経過中に片側巨脳症に進展した難治性てんかん男児例を報告した.患児は4カ月時に難治性てんかんを発症し, 発達は退行した.4カ月時の頭部MRI検査では, 右前頭葉弁蓋部周囲の部分皮質形成異常と診断された.この皮質形成異常部位は徐々に肥厚, 拡大し, 5年後には右大脳皮質のほとんどを占め, 右半球全体も大きくなり, 片側巨脳症と診断した.最重度精神運動発達遅滞を呈し, てんかん発作のコントロールは困難であった.FDG-PET, 脳血流SPECTでは片側巨脳症側の糖代謝低下と発作時脳血流量増加を認めた.進行性腫大を呈した片側巨脳症の報告は今までになく, 片側巨脳症の病態生理を考察する上で重要な症例である.
著者
須貝 研司 麻生 雅子 江川 文誠
出版者
日本重症心身障害学会
雑誌
日本重症心身障害学会誌 (ISSN:13431439)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.349, 2019

流涎・分泌物過多、過緊張、骨軟化症は重症心身障害児(者)(以下、重症児(者))では大きな問題であり、その薬物治療を検討した。方法①流涎・分泌物過多:重症児(者)病棟で流涎・分泌物過多を呈し、不潔・臭い、むせ込み・吸引頻回・唾液の誤嚥による発熱を繰り返し、保険適用外であるが、流涎に有効だったが発売中止になった硫酸アトロピンと同じベラドンナアルカロイドであるロートエキスの効果と副作用を介護者に説明し、同意が得られた32例。3〜51歳、大島分類1が15例、2が7例。ロートエキスは成人上限量90mgを年齢・体重で換算した量の1/2で開始、2週間ごとに10-20mgずつ最大3mg/kgまで増量した。②過緊張:ジストニアによると思われる著しい過緊張を示し、ダントロレン、バクロフェン、チサニジン、トリヘキシフェニジルなどが無効だった6例。10〜49歳、全例大島分類1。不安や精神的緊張が一因であると考えて保険適用外であるがブロマゼパムを成人量上限15mgを年齢・体重で換算した量の1/2で開始し、最大0.6mg/kgまで漸増した。③フェニトイン(PHT)による骨軟化症:PHT 服用中でAlP高値、Pi低値を示した5例。39〜50歳、大島分類1が4例、2が1例。強直、強直間代発作に有効な他の抗てんかん薬に置換しPHTを減量中止した。結果①流涎19例では有効18例、やや有効1例で、バスタオル多数使用、頻回着替え、臭いは消失し、全例継続中。分泌過多13例では、吸引回数激減・むせ混みが軽減、誤嚥性肺炎・無気肺消失各1例、持続吸引不要1例など有効11例、やや有効1例、無効1例(胃残増加のため1か月で中止)であり、副作用は胃残増加3例、腸蠕動低下、痰が固くなり引きにくい各1例であり、中止は胃残増加の2例だった。重症児(者)病棟では便秘は問題なかった。②全例にかなり有効で、介護や生活が改善した。③PHT中止により、AlPは348-582→214-305に、Piは1.8-3.7→2.5-3.7に改善した。結語上記の3つの対応は重症児(者)に有用である。申告すべきCOIはない。
著者
井上 道雄 本橋 裕子 竹下 絵里 石山 昭彦 齋藤 貴志 小牧 宏文 中川 栄二 須貝 研司 佐々木 征行
出版者
日本重症心身障害学会
雑誌
日本重症心身障害学会誌 (ISSN:13431439)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.231, 2015

はじめに経鼻胃管を利用する重症心身障害児(者)(以下、重症児(者))では、骨格変形や嚥下障害等により、適切な胃管留置ならびに胃内に管があることの確認がときに困難である。当院では、管の胃内留置を確認するため、pHチェッカーを用いて逆流物が胃酸と同等のpH5.5以下であることを確認している。一方で、重症児(者)の胃酸分泌抑制薬使用者へのpHチェッカーの有用性を検討した報告は乏しい。目的経鼻胃管を使用する重症児(者)において、胃酸分泌抑制薬の内服がpHチェッカーの結果に与える影響について検証する。対象当院重症児(者)病棟に入院中で経鼻胃管を利用している17人。方法カルテ診療録を調査し、胃管の留置位置が適正であると確認できた例の、注入前と胃管交換時に用いたpHチェッカー5.5 (JMS)の値と内服情報を収集し、その関係について検討した。経鼻胃管内腔の容量が最低1.6mlであるため、胃内容物が1.6ml以下は除外した。結果対象者の使用薬剤数は平均7.8剤、16人が胃酸分泌抑制薬(H2受容体拮抗薬、プロトンポンプ阻害薬)あるいは制酸剤(酸化マグネシウム)を内服していた。46機会の計測を行った。そのうち、胃内容物が1.6ml以下は25機会(全体の54%)であった。残りの21機会分のpH値で検討を行った。21機会中、胃酸分泌抑制薬もしくは制酸薬内服ありの19機会でpH 5.5以下は14機会(74%)だった。考察胃残が十分引けない機会が相当数あり、重症心身障害児の胃酸分泌抑制薬・制酸薬内服者で、pHチェッカーで逆流物を胃内容物であると同定できた割合は半数以下であった。胃残が十分量引けない例での内服薬の間接的影響の有無は今回は検討できていない。胃残が十分量引ければ、pHチェッカーは74%の感度で呼吸器分泌物と胃内溶液が鑑別できる。今後、胃酸分泌抑制薬・制酸薬の非内服者における、胃逆流物量、pHチェッカー値のデータが蓄積し、今回のデータと比較を行うことが必要である。