著者
筒井 昭仁 藤井 東次郎 松尾 忠行 本郷 啓成 境 脩
出版者
有限責任中間法人日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.257-265, 1995-04-30
被引用文献数
15

フッ化物配合歯磨剤の普及状況を知ることを目的に,福岡市内2保健所の1歳6ヵ月児健康診査の受診者349名とその保護者348名,および1幼稚園の3歳から6歳の167名とその保護者164名を対象に質問紙法による調査を行い,以下の知見を得た。1)歯磨きを毎日するものは,1歳6ヵ月児健康診査受診者で54%,園児で85%以上,保護者では90%以上と高く,園児,保護者においては歯磨きは生活習慣として定着していた。2)1歳6ヵ月児健康診査受診者のほとんどが歯磨剤を使用していなかった。園児については60〜85%が,いつもあるいは時々使用していた。同じく,保護者では80%以上が使っていた。3)フッ化物配合歯磨剤使用者は,1歳6ヵ月児健康診査受診者で5%,3,4歳から6歳の園児で32%から56%,保護者では36%であった。4)歯磨剤選択の理由は,幼児,保護者ともに「むし歯予防のため」,「フッ素が入っている」が上位を占めていた。「歯科専門家の指導による」としたものはほとんどいなかった。また,歯磨剤を使わない理由として「歯科医にいわれて」と答えたものが多くみられた。5)使用歯磨剤中のフッ化物配合歯磨剤の割合をみると,幼児で76%,保護者で39%であった。フッ化物配合歯磨剤のう蝕予防効果は20〜25%と報告されており,わが国における今後の普及が期待される。この点については,歯科医師,歯科衛生士等の専門家による正しい情報の普及や指導が大きな鍵となるであろうことが考えられた。
著者
本郷 啓成
出版者
有限責任中間法人日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.150-168, 1996-04-30
被引用文献数
1

齲蝕や歯周疾患の原因系の一部を構成すると考えられる歯列不正の関与の程度を疫学的に明らかにすることを目的に,青年期の140名を対象に,齲蝕または歯周疾患と,歯列不正および口腔清掃状態について各種指数問の関連性について検討した。基本統計量としては齲蝕,歯周疾患および口腔清掃状態の把握に使用した指数は各4種,歯列不正は6種であり,重回帰分析では齲蝕は2種,歯周疾患は3種,歯列不正は6種,口腔清掃状態は3種の指数であった。各種指数について,齲蝕指数あるいは歯周疾患指数を目的変数とし歯列不正指数および口腔清掃指数を説明変数として,また,口腔清掃指数を目的変数とし歯列不正指数を説明変数として,その関連性を段階的重回帰分析(Stepwise変数選択法)により分析した。齲蝕と歯列不正の関連については齲蝕のDFSに対する歯列不正指数ALD(偏相関係数:-.267)およびNMT(.312)の関与において高い重相関係数(R>.4)が得られたが,口腔清掃状態との関連は見られなかった。歯周疾患に対する歯列不正および口腔清掃指数間の関与においてはいずれも高い重相関係数(R>.6)が得られた。歯列不正のNMT(.174〜.195)が有意であり,下顎前歯においては叢生のCRDはPMA(.235),PI(.260),BOP(.252)のすべてに対して有意変数となった。また,口腔清掃指数との間にはいずれも高度に有意な偏相関係数が得られ,ことに歯石指数CI(>.443)との関連が強くいずれも高度に有意であった。一方,口腔清掃状態と歯列不正の関連については一部を除き有意変数は存在せず,ほとんど関連は観察されなかった。