著者
筒井 昭仁 小林 清吾 野上 成樹 境 脩 堀井 欣一
出版者
Japanese Society for Oral Health
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.79-88, 1983 (Released:2010-11-26)
参考文献数
33
被引用文献数
8

4つの小学校からの卒業生が進学する新潟県燕市立燕中学校の1年生計502名を対象に, 1980年5月, 検査者盲検法 (Blind Recerding Method) によりう蝕の状況と歯牙不潔度を調査した。その結果, 4つの小学校からの卒業生を, それぞれA, B, C, D群とした時, 小学校において特記すべき歯科保健対策の採られてこなかったA群はDMFS index 8.24 (SE=0.54), B群8.70 (0.54) であった。これに対し, 歯科保健対策として毎給食後の歯みがきを学校で実施してきたC群歯みがき群は7.99 (0.47) であり, 小学校入学時よりフッ素洗口法を行なってきたD群フッ素洗口群は4.56 (0.41) であった. C群のDMF Sindexは, A, B群を合わせた対照群に比べ5.8%少なかった。しかし, この差は統計学的に有意ではなかった。一方, D群のDMFSindexは, 対照群に比べ46.2%少なく, この差は統計学的に高度に有意であった。各群単位でみた歯牙不潔度, 治療歯率は, それぞれの群の間に統計学的な有意差は認められなかった。また, 別に調べたD群の出身小学校6年生のDMFT indexは, フッ素洗口法を開始した1973年の6年生が4.84 (SE=0.26) であったが, 8年後の1981年の6年生では3.00 (0.27) で, その差は38.0%であり, 統計学的に有意であった。以上, 小学校における毎給食後の歯みがきの励行は, 中学1年生時のう蝕り患状況の改善には有意に作用しなかった。一方, 小学校における週3回のフッ素洗口法の実施は有意に作用し, 同年齢の非フッ素洗口群に比べ口腔全体で40%前後のう蝕抑制効果をもたらした。これらの歯口清掃群およびフッ素洗口群の結果から, 学校歯科保健対策として採るべき方策について考察した。
著者
境 脩 筒井 昭二 佐久間 汐子 滝口 徹 八木 稔 小林 清吾 堀井 欣一
出版者
Japanese Society for Oral Health
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.116-126, 1988 (Released:2010-10-27)
参考文献数
23
被引用文献数
3 2

In 1970 a weekly fluoride mouthrinsing program using 0.2% neutral NaF solution was initiated in the elementary schools of Yahiko District, Niigata Prefecture, Japan (F<0.1ppm in drinking water). The same program was started at the juniour high school in 1973 and a daily fluoride mouthrinsing program was started in 1978 at all four nurseries in the district. Therefore at present, such programs start at the nursery school level and continue to the 3rd grade in the junior high school within an individual school system.We investigated the benefits to the permanent teeth from this 17-year school-based fluoride mouthrinsing program. This report presents the effects of ongoing supervised fluoride mouth rinsing program on caries prevalence of permanent teeth according to the age of starting the fluoride mouthrinsing program.A baseline examination for schoolchildren in 1st-6th grades was conducted in 1970, before the mouthrinsing program began. An examination conducted in 1978 presents the data of children who participated in the program since their entrance into the elementary school, that is, at the age of 6. An examination conducted in 1987 presents the data of children who participated in the program since the age of 4 in the nursery schools.The DMF person rate in all grades decreased from 72.8% in 1970 to 41.6% in 1978 and 27.6% in 1987.The DMFT-index in all grades decreased from 2.27 in 1970 to 1.39 in 1978 and to 0.48 in 1987. The differences in caries prevalence were 38.8% and 78.9%, respectively, and were statistically significant (p<0.001).The school-based fluoride mouthrinsing program produced high caries-preventive effects. Especially, the program started from the nursery level provided higher caries prevention when the 1st molar teeth erupted.The younger the children were when they entered the program, the longer that they rinsed, the greater were the accumulated benefits.
著者
筒井 昭仁 瀧口 徹 斎藤 慎一 田村 卓也 八木 稔 安藤 雄一 岸 洋志 小林 秀人 矢野 正敏 葭原 明弘 渡辺 雄三 小林 清吾 佐久間 汐子 野上 成樹 小泉 信雄 中村 宗達 渡辺 猛 堀井 欣一 境 脩
出版者
Japanese Society for Oral Health
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.329-341, 1994-07-30 (Released:2010-10-27)
参考文献数
35
被引用文献数
4

著者らは, 日本における飲料水中フッ素濃度とエナメル斑の発現状況の関係を明らかにすることを目的に, 1978年以来, 東北, 関東, 甲信越地方で飲料水中フッ素濃度の測定を継続的に行ってきた。その結果, フッ素濃度の変動が少なかった7つの天然フッ素地域を確認した。水道給水系は26あり, フッ素濃度は0から1.4ppmの範囲に分布していた。フッ素濃度を確認してきた地域に生まれ, 当該の水道水を利用して育った小学5, 6年生1,081名を対象に, 1987年歯牙フッ素症検診を行った。歯牙フッ素症の分類にはDeanの基準を使用した。また, 非フッ素性白斑についてもDean基準の白濁部面積算定基準を準用して分類した。確認された歯牙フッ素症はいずれもmild以下の軽度のものであり, very mild以上のフッ素症歯所有者率と飲料水中フッ素濃度との間に有意な正の相関関係 (r=0.485, p<0.05) が認められた。また, 非フッ素性白斑歯所有者率と飲料水中フッ素濃度との間には有意な負の相関関係 (r=-0.429, p<0.05) が認められた。全エナメル斑発現状況と飲料水中フッ素濃度の間には特別な傾向は認められなかった (r=-0.129, ns)。CFIは0.04から0.30であり公衆衛生上問題のない地域と判定された。この度の研究結果は, わが国の歯牙フッ素症に関する疫学研究において不足しているとされていたデータ部分を補うものであり, わが国の至適フッ素濃度研究に寄与するものであると考察した。
著者
筒井 昭仁 藤井 東次郎 松尾 忠行 本郷 啓成 境 脩
出版者
有限責任中間法人日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.257-265, 1995-04-30
被引用文献数
15

フッ化物配合歯磨剤の普及状況を知ることを目的に,福岡市内2保健所の1歳6ヵ月児健康診査の受診者349名とその保護者348名,および1幼稚園の3歳から6歳の167名とその保護者164名を対象に質問紙法による調査を行い,以下の知見を得た。1)歯磨きを毎日するものは,1歳6ヵ月児健康診査受診者で54%,園児で85%以上,保護者では90%以上と高く,園児,保護者においては歯磨きは生活習慣として定着していた。2)1歳6ヵ月児健康診査受診者のほとんどが歯磨剤を使用していなかった。園児については60〜85%が,いつもあるいは時々使用していた。同じく,保護者では80%以上が使っていた。3)フッ化物配合歯磨剤使用者は,1歳6ヵ月児健康診査受診者で5%,3,4歳から6歳の園児で32%から56%,保護者では36%であった。4)歯磨剤選択の理由は,幼児,保護者ともに「むし歯予防のため」,「フッ素が入っている」が上位を占めていた。「歯科専門家の指導による」としたものはほとんどいなかった。また,歯磨剤を使わない理由として「歯科医にいわれて」と答えたものが多くみられた。5)使用歯磨剤中のフッ化物配合歯磨剤の割合をみると,幼児で76%,保護者で39%であった。フッ化物配合歯磨剤のう蝕予防効果は20〜25%と報告されており,わが国における今後の普及が期待される。この点については,歯科医師,歯科衛生士等の専門家による正しい情報の普及や指導が大きな鍵となるであろうことが考えられた。
著者
境 脩 小林 清吾 榎田 中外 野上 成樹 堀井 欣一
出版者
一般社団法人 口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.21-34, 1978
被引用文献数
3 1

学童における永久歯の歯垢分布を, 疫学的手法により, 経年的に追跡調査し, 分析した。新潟市近郊の7小学校学童の昭和45年4月の時点で1学年から4学年851名の永久歯を対象とし, 歯の萌出状態, う蝕の発生状態, 歯垢の付着状態などを満6年間, 被検者各個人の各歯を歯面単位で追跡した。検査は年2回計13回行ない, データ処理に汎用コンピューターを使用した。<BR>口腔全体の歯垢の付着程度, 不潔度は学年の進行とともに減少していく傾向は確実であった。その減少速度はほぼ一定しており, 1年間およそ不潔度で0.36程度であった。不潔度を歯種, 歯面別に, 歯の萌出してからの期間, すなわち歯牙年齢を追って検討すると, 歯垢の経時的な分布にはそれぞれの歯種, 歯面で特徴がみられた。咬合面は萌出初期において不潔度は大きいが, 歯牙年齢の増加に従って急に減少する。臼歯部の頬, 舌側面は上下顎によって差があり, 上顎頬側面と下顎舌側面, 上顎舌側面と下顎頬側面は同様なパターンを示した。また, 上下顎同名歯での対合状態の差によって不潔度に差がみられ, 全く対合していない状態に比較して, 完全に対合した状態では不潔度は小さかった。<BR>これらの結果から, 不潔度の経年変化に及ぼす要因のうち, 咬合の完成による要因が, より重要であると考察した。
著者
晴佐久 悟 筒井 昭仁 境 脩 西山 葉子 松鶴 さゆり 山根 奈々
出版者
福岡歯科大学学会
雑誌
福岡歯科大学学会雑誌 (ISSN:03850064)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.141-149, 2001-12-30
被引用文献数
4

We investigated toothbrushing habits and toothpaste use, especially of fluoride toothpaste, of Japanese young children in Fukuoka. Parents of 767 young children aged between 1.5 and 4 years completed the questionnaire we distributed. The total response rate was 90.0%. The present findings were compared with those of a similar investigation in 1992. The findings were as follows: 1. Most young children brushed their teeth at least once a day assisted by their parents. 2. Few young children aged 1.5 years used toothpaste. About 65%-70% of young children aged 3 and 4 years used toothpaste. There was little change in these findings in 1992 and 2000. 3. Few children aged 1.5 years used fluoride toothpaste. About 50% of young children aged 3 and 4 years used fluoride toothpaste. The annual market share of fluoride toothpaste in Japan had increased from 39% in 1992 to 77% in 1999. It is still less however, than those of other highly developed countries. The percentage of young children who use fluoride toothpaste may be passive due to the little information available on the effects of fluoride toothpaste. Dentists, dental hygienists and other dental personnel should provide information fluoride toothpaste and strongly recommend its use among parents in Japan.