著者
稲村 雄 本郷節之
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.45, no.8, pp.1823-1832, 2004-08-15

SSL,SSH,IPSec等のいわゆるセキュアプロトコルを利用することにより,インターネット等の公衆ネットワークを介してプライバシ保護の必要な情報を安全にやりとりすることは,現在では十分現実的なオプションとなっている.しかし,そのようなネットワークの末端となる個々の計算機の内部実行環境を見ると,プライバシを要するデータの機密性/完全性を保護する機構はほとんど用意されていない.そのため,今後はこの内部実行環境に存在する脆弱性を突いた形でプライバシ情報を含む機密データを奪取するという形の攻撃に対する防御が重要性を増すと考えられる.本稿ではそのような計算機内部の実行環境を改善するための一方式として,暗号コプロセッサ等を持たない一般的な計算機ハードウェア(H/W)およびソフトウェア(S/W)で実装可能な“暗号化メモリシステム”なる手法を提案する.
著者
寺田雅之 竹内大二朗 齊藤克哉 本郷節之
雑誌
マルチメディア、分散協調とモバイルシンポジウム2014論文集
巻号頁・発行日
vol.2014, pp.224-233, 2014-07-02

集計データのプライバシーを差分プライバシー基準に基づいて保護する上で,データの統計的正確性と計算効率に着目した手法を提案する.差分プライバシー基準は,安全性に対する数学的な裏付けが保障されているものの,(1)非負データが負の値となってしまう場合が生ずる,(2)広範囲のデータの集計値において真値からの偏差が大きくなる,(3)疎なデータ分布を密なデータ分布へと変化させることにより計算量の著しい増大を招く,などの実用上の課題を持つ.本報告では,これら三点の課題を解決する手段として、Wavelet 変換とTop-down 精緻化処理と呼ぶ方法を組み合わせた,差分プライバシー基準を満たす新たなプライバシー保護方式を提案し,国勢調査データを用いた提案手法の評価結果を示す.
著者
森 謙作 寺田 雅之 石井 一彦 本郷節之
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告コンピュータセキュリティ(CSEC) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2004, no.129, pp.11-16, 2004-12-20
参考文献数
9

電子価値を公平に交換可能なプロトコルをICカードへ実装し,プロトコルの実用性の検証を行った.実装にあたり,電子財布などの取引アプリケーションからの利用が容易であること,および電子価値の交換を電子商取引として実用的な速度で行えることを目的とした.また,ICカードのI/F設計において分散ICカード環境のためのフレームワークであるTENeTを利用することにより,ICカード間のメッセージのやり取りをアプリケーションから隠蔽し,ICカードとアプリケーションとのI/Fを簡素化することができた.実装の結果,プロトコルのコードサイズは約6KB,プロトコル処理時間は約1.8secであり,現在市販されているICカードを用いて,上記プロトコルを実用的な性能で実現可能であることを示した.This paper reports the result of our implementation of the fair exchange protocol for electronic rights on smartcards. In this implementation, we adopted TENeT, a framework which enables smartcards to directly communicate one another, to simplify the interface between smartcard and application programs. Our implementation built on current smartcards can exchange electronic rights in less than 1.8sec, which is practically sufficient for electronic rights trading markets.