著者
杉本 昌子 槇田 浩祐 吾妻 有貴 福田 典子 先田 功
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.117-124, 2022-02-15 (Released:2022-03-02)
参考文献数
29

目的 マンモグラフィ(MMG)単独検診の推進に向けて,問診内容を含めた住民検診データを用いて,視触診で見つかるMMG非検出乳癌の実態を明らかにし,乳癌との関連要因を検討することで,視触診省略によるMMG非検出乳癌への対応策について示唆を得ることを目的とした。方法 西宮市においてデータ化が可能であった2014, 2016, 2017年度の乳がん個別検診のデータベースから,個人情報をすべて削除し,連結可能匿名化したデータファイルを用いた。MMG非検出乳癌は,視触診判定のみで要精密検査(MMG判定はカテゴリー2以下で異常なし)となった者のうち,精密検査で「乳癌」と診断された者により把握した。乳がん検診の精度管理指標(プロセス指標)は,受診者全体に加え,視触診判定のみで要精密検査となった者についても算出した。乳癌と各項目との関連は,χ2検定またはFisherの正確確率検定等により分析した。結果 受診者13,504人のうち,要精密検査者は1,247人(9.2%)であった。精密検査の結果,乳癌と診断された者は44人(3.5%)であり,このうち,MMG非検出乳癌は4人であった。また,プロセス指標はいずれも許容値を満たしていた。MMG非検出乳癌症例を検討したところ,4例中3例は乳房で気になることとして「しこり」と答えていた。乳癌と各項目との関連を分析した結果,乳癌と有意な関連が認められた項目は,「乳房で気になることの有無」であり,「しこり」と「分泌物」に有意な差異が認められた。結論 MMG非検出乳癌の4例中3例はしこりを自覚しており,しこりと分泌物の自覚症状は乳癌と有意に関連していた。視触診省略によるMMG非検出乳癌への対応策として,これらの自覚症状に着目した受診勧奨の啓発,問診の徹底と観察,医師への伝達など多職種による連携,ならびにブレスト・アウェアネスの普及が重要であることが示された。
著者
横山 美江 杉本 昌子
出版者
Japan Academy of Nursing Science
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.189-197, 2014-08-20 (Released:2014-10-03)
参考文献数
17
被引用文献数
1

研究目的:本研究では,4か月児健康診査のデータベースの分析から,母親の喫煙が児の出生時の身体計測値(体重,身長,頭囲,胸囲)ならびに出生後の発育にどのように影響するかを明らかにすることを目的とした.方法:本研究で用いたデータベースは,4か月児健康診査を受診した児の健診データのうち,個人情報を全て除外し,連結不可能匿名化したデータファイルを用いた.統計解析には,母親の喫煙と児の身体計測値を重回帰分析等を用いて分析した.結果:3494人の単胎児のデータを分析対象とした.妊娠中に喫煙をしていた母親は全体の2.9%であった.妊娠中の母親の喫煙は,他の要因の影響を調整しても,出生体重,出生身長,出生頭囲と有意な関連が認められた.さらに,4か月児健康診査時の身長および頭囲においても関連が認められ,喫煙していた母親から出生した児は,喫煙していなかった母親から出生した児よりも有意に身長および頭囲が小さく,他の要因を調整しても有意であった.結論:妊娠中の母親の喫煙は,出生時の身体計測値のみならず,4か月児健康診査時の身長や頭囲にも影響していることが明らかとなり,禁煙支援のための対策をさらに強化する必要性が示された.