著者
水野 貴斗 氏原 嘉洋 中村 匡徳 杉田 修啓
出版者
公益社団法人 日本生体医工学会
雑誌
生体医工学 (ISSN:1347443X)
巻号頁・発行日
vol.Annual58, no.Abstract, pp.311, 2020 (Released:2020-08-05)

毛細血管再充満時間(CRT)とは,トリアージで循環機能を簡易的に判定する指標で,爪を5秒間加圧した後に解除し,爪の赤みが回復するまでの時間である.CRTは,脱水症の判定など循環機能の判定以外への応用も検討された(McGee et al. 1999)が,水分とCRTの関連性が低く,実用には至っていない.また,CRTは体温に影響されることが知られている(Schriger et al. 1988).本研究では,指標に影響を与える要因を把握し,この要因による影響を補正して正確なCRTを計測できれば,水分量の判定も含む他の病状診断に応用できる可能性があると考えた.そこでまず,CRTを定量的に計測するために,一定の力を負荷できる加圧装置を作製し,加圧を解除した後の爪の色の変化を撮影した.このとき,爪の輝度値の時間変化を測定し,得られたデータに指数関数を回帰し,輝度値が一定値に漸近するまでのうち90%変化するまでの時間を本法でのCRTと定義した.また,信頼性の高いCRTの算出方法を決めるために,連続してCRTデータを得た後,画像処理方法を変えてCRTを算出し,各解析法での値のばらつきを評価した.輝度値をRGB色空間とHSV色空間に分解し,各チャンネルの輝度値の変化からCRTを算出したところ,Greenチャンネルで計測毎のばらつきが最小となった.これは,爪上から見られる白から赤への輝度値の変化が,Greenチャンネルで最大となり,ノイズの影響が最小になるためと考えられる.
著者
菊地 康博 北崎 知子 斉藤 秀之 柴沼 忠夫 諸住 なおみ 金井 靖 米本 儀之 杉田 修 大沼 規男
出版者
公益社団法人 日本化学療法学会
雑誌
CHEMOTHERAPY (ISSN:00093165)
巻号頁・発行日
vol.42, no.Supplement1, pp.227-234, 1994-04-25 (Released:2011-08-04)
参考文献数
5

新規経口ペネム薬SY5555の体液内濃度測定法および体液中での安定性について検討した。微生物学的定量法 (bioassay法) では, 検定菌としてBacillus subtilis ATCC6633, 検定培地として日抗基記載の培地 (ペプトン0.5%, 肉エキス0.3%, クエン酸ナトリウム1%, カンテ ン1.5%, pH6.5~6.6) を用いる寒天平板拡散法により測定可能であった。検出感度はカップ法およびagar well法で0.05μg/ml, ペーパーディスク法で0.10μg/mlであった。血漿中濃度の測定では標準溶液は対照血漿により調整することが必要であり, その時のagar well法での検出感度は0.10μg/mlであった。高速液体クロマトグラフ (HPLC) 法では, 血漿はアセトニトリルで除たん白後, 尿は緩衝液で希釈後。逆相系カラムにより測定可能であり, 検出感度はそれぞれ0.1μg/mlおよび2.5μg/mlであった。臨床第一相試験におけるヒト血漿および尿中のSY5555濃度をbioassay法とHPLC法で測定したところ, 両法による結果はよく相関した。また, SY5555を添加したヒト血漿試料および尿試料をそのまま-20℃ 以下に凍結保存した時, SY5555はそれら体液中で少なくとも42日間は安定であった。
著者
金井 靖 諸住 なおみ 米本 儀之 杉田 修 大沼 規男 菊地 康博
出版者
公益社団法人 日本化学療法学会
雑誌
CHEMOTHERAPY (ISSN:00093165)
巻号頁・発行日
vol.42, no.Supplement1, pp.243-253, 1994-04-25 (Released:2011-08-04)
参考文献数
13

新規経口ペネム薬SY5555の体内動態をマウス, ラット, イヌを用いて検討した。1.本薬を絶食下のマウス, ラットおよびイヌに経口投与したところ, いずれの種においても消化管より速やかに吸収され, 生物学的利用率はマウスで27.1%, ラットで13.0%, イヌで40.4%であった。2.幼若イヌに経口投与したところ成犬と比べて半減期は延長した。3.本薬は用量依存的に吸収され, 主吸収部位は消化管上部と考えられた。摂餌後のイヌに本薬を経口投与したところ半減期の延長が観察された。4.経口投与後の未変化体の尿中排泄率はラットで3.8%, イヌで16.3%であり, SY5555以外に活性代謝物は認められなかった。胆汁排泄率はラットで0.1%とわずかであった。イヌを用いた定型クリアランス法により本薬は主に尿細管分泌により排泄されることが示された。5.マウス, ラットおよびイヌに経口投与したところ本薬は速やかに各組織に移行した。イヌにおける組織移行率は腎91.2%, 肝20.9%, 心17.0%, 肺18.1%, 前立腺15.3%, 筋15.2%, 顎下腺12.7%であった, 本薬の分布容積はマウスおよびイヌでそれぞれ127, 127ml/kgであり, 他のβ-ラクタム薬と同様に血漿および組織間質液中に分布するものと推定された。6.腎障害ラノトに本薬を経口投与したところ半減期は延長したが, 生物学的利用率は正常群と変わらなかった,7. SY5555は血清中のアルブミンと結合し, 血清蛋白結合率はSY5555濃度が20μg/mlで81.5~91.2%であった。本薬はヒト血清アルブミンに結合したビリルビンを遊離させなかった。8.イヌにSY5555錠剤および粒剤 (小児用剤: ドライシロップ) を投与したところ, 血漿中濃度推移は原体投与時と変わらず, 錠剤および粒剤の生物学的利用率はそれぞれ47.8%, 50.8%であった。
著者
金井 靖 諸住 なおみ 米本 儀之 杉田 修 大沼 規男 安達 栄樹 菊地 康博
出版者
公益社団法人 日本化学療法学会
雑誌
CHEMOTHERAPY (ISSN:00093165)
巻号頁・発行日
vol.42, no.Supplement1, pp.254-268, 1994-04-25 (Released:2011-08-04)
参考文献数
10

新規経口ペネム薬SY5555のラットおよびイヌにおける体内動態を14C標識体を用いて検討した。1.[14C] SY5555経口投与後の吸収は速やかで, 血漿中放射能濃度はラットでO.5時間, イヌで1.0時間に最高濃度に達した。放射能の尿中排泄率から求めた吸収率はラットで21.8%, イヌで51.6%であった。2.[14C] SY5555静脈内投与後, ほとんどの放射能は尿へ排泄され, 胆汁への排泄はわずかであり, 尿への排泄が主排泄経路であった。経口投与ではラットで17.1%が, イヌで47.0%か尿中に排泄され, 糞中にはそれぞれ85.8%, 52.9%が回収された。3.[14C] SY5555の組織への移行は速やかで, 組織内放射能濃度はほぼ血漿と同様に推移した。ラットおよびイヌともに組織内濃度は腎が最も高く血漿の約3倍の濃度が認められ, その他の組織にも広く分布した。4.血漿および尿中の主代謝物は, β-ラクタム環およびテトラヒドロフラン環か開環したM-1, M-2であった。M-1およびM-2の血漿中濃度はラットで高く, イヌで低かったが, 尿中排泄率には著しい差は認められなかった。これら代謝物は腎ならびに肺に存在するdehydropeptidase-1 (DHP-1) により生成するものと推定された。5.ラットにおけるSY5555のin vivo血漿蛋白結合率は82.8~83.9%であったが, 蛋白との結合は可逆的であった。代謝物の蛋白結合率はM-1で4.3~7.9%, M-2で69.0~76.2%であった。SY5555は血球にほとんど移行しなかった。