- 著者
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李 振泰
塔 娜
渡来 仁
柿谷 均
小沼 操
趙 丹丹
保田 立二
- 出版者
- 社団法人日本獣医学会
- 雑誌
- The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
- 巻号頁・発行日
- vol.59, no.3, pp.169-174, 1997-03-25
- 被引用文献数
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陽性荷電リポソームが, ウシ白血病ウイルス(BLV)感染細胞への毒素遺伝子の導入に応用可能かどうかを調べた. 陽性荷電リポソームは, N-(α-trimethylammonioacetyl)-didodecyl-D-glutamate chloride(TMAG), dioleoyl phosphatidylethanolamine(DOPE), dilauroyl phosphatidylcholine(DLPC)(モル比1 : 2 : 2)から作製し, 遺伝子を封入させた. ルシフェラーゼアッセイにより, 陽性荷電リポソーム(TMAGリポソーム)によるBLV感染細胞(FLK/BLV細胞)への遺伝子導入効率を調べたところ, TMAGリポソームの遺伝子導入効率は, ホスファチジルセリン(PS)から作製されたリポソームに比べ高い導入効率を示した. さらに, ルシファラーゼ遺伝子とともにプロモーター活性を持つBLVのLTRの下流にジフテリア毒素遺伝子を挿入したプラスミドDNA(pLTR-DT)をTMAGリポソームによりFLK/BLV細胞にco-transfectionし, ルシフェラーゼ遺伝子によるルシフェラーゼ活性が, TMAGリポソームにより導入されたpLTR-DTにより, どの程度阻止されるかを調べることにより, pLTR-DT封入TMAGリポソームの, BLV感染細胞に対する殺傷効果を検討した. その結果, ルシフェラーゼ活性は, pLTR-DTを導入することによりdose-dependentに抑制された. また, pLTR-DTをFLK/BLV細胞に複数回導入すると, FLK/BLV細胞の増殖が顕著に抑制された. さらに, pLTR-DT封入TMAGリポソームを血清あるいは核酸分解酵素と反応させたところ, TMAGリポソームに封入された毒素遺伝子は分解されなかった. これらのことから, 陽性荷電(TMAG)リポソームはBLV感染細胞への遺伝子導入法として優れており, 毒素遺伝子封入陽性荷電リポソームによる, BLV感染細胞の遺伝子治療の可能性が示唆された.