著者
アカミネ ロジェリオ 舟橋 國男 鈴木 毅 木多 道宏 李 斌
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.68, no.566, pp.71-79, 2003
被引用文献数
6

1. 序 1990年代以降、世界各地の大都市における都市再開発プロジェクトが勢いを増してきた。この過程における重要な特徴の一つは、密集市街地の居住者に、高密に由来する社会的な諸問題やストレスを軽減し得るオープンスペース(以下OS)を確保することである。 地方自治体は、民間セクターを計画に惹きつける手段として「インセンティヴゾーニング」を採ってきた。Kaydenはニューヨークにおける「私有公的空間privately owned public spaces (pops)」事例を法的側面・空間的配置から分析した。Whyteはプラザの利用実態研究に基づいてプラザのデザインに関する法の改良に寄与した。日本の大阪アメニティパーク(OAP)は都市再開発プロジェクトに含まれる私有公的空間の一事例である。 日本の都市におけるpopsの着想は建築基準法に基づく総合設計制度による公開空地に見られ、1980年代以来多くの研究者がその研究に従事した。それらの成果は主に、利用状況・心理的側面・物理的側面・維持管理的条件・手法の適用方法、の5テーマにまとめられる。2.目的と方法 本研究では、一つの空間事例に絞ったり適用された手法の詳細に限定せず、いくつかのOSが併存する一定の地区におけるOSとしてのOAPのpopsを様々な視点から分析する。空間的配置状況に基づく各場所利用の特徴を明らかにすると共に、公的利用に対するOAP-OSの役割を評価する。特定の場所に即しながら、有意義な評価が今後の計画のデザインコンセプトに参照され得るものと期待される。調査は、OAPを校区に含む公立小学校と隣接校区の小学校児童の保護者を対象とする。良く行くOS・行為内容・同伴者・時刻・頻度・滞在時間等、オープンスペース利用に関する質問紙調査を行うと共に(回収率約70%)、面接調査に応じた者に対するインタビューを行い(質問紙回答者の約10%)、さらに詳細な利用状況を把握した。3.回答者属性(図1) 質問紙調査回答者は各家庭1名としたので、30才乃至40才代女性、主婦もしくは有業者が多く、男性は全体の17%であった。 4.OAPとその近隣におけるOS 調査対象2校区にある15箇所の各OSについて、インタビューによって得られた特徴づけは、雰囲気・魅力・利用・問題点・改善への示唆、という5つの側面に整理された(表2,図3)。雰囲気は場所のイメージに関連し、魅力は利用に対する固有の誘因、利用は各場所に於ける人々の行為である。各場所に対する不満は問題点と示唆として、また全般的な問題点も記述された(表3)。主として、公園に住むホームレスの人々に関するもの、周辺との関連の欠如、管理、施設利用の葛藤などである。5.OAP開設後の変化(表4)インタビューによると、OAPは近隣を活性化し、人口増加をもたらし、その結果として交通量・商業業務の増加という3点で周辺を変化させた。 6. OSと利用の特徴 質問紙調査結果から、OSの利用者数順位が得られた(図、4)。OAPのOSは第1位である。回答者の半数以上が、24ヵ所のOSを利用している(図5)。質問紙調査で得られた各種の結果(利用行為・同伴者・時刻・頻度・滞在時間)は表5に示されている。 扇町・滝川・東天満公園は子どもとの遊びに最も好まれている。他の共通の活動は川沿い公園における散歩である。OSの利用は通常昼間帯である。多くの回答者は週2回乃至月1回利用し、滞在時間は扇町公園と大阪城公園で最も長く天満宮境内では最も短い。OAP-OSと他の場所との利用順位比較は明確な結果を示すが、他の変数を同時に観察すると明確な関係は少なくなる。 7. OSへの距離 OAP利用者と非利用者別に、住居からOAPへの距離ならびに住居から最もよく利用するOSへの距離がそれぞれ測定された。それらの関連が図6に示されている。OAP非利用者の大多数がOAPから500M以上の範囲に住んでいる。 8. 0APのOS空間的配置とまとまりとに基づいてOAPのOSが更に細分化された(表6,図7)。それぞれが、雰囲気・魅力・利用・問題点・改善への示唆の観点から特微づけられ他のOSと比較された(表6,図7-1)。 桜広場と河畔までの延伸部分が最も好まれる場所であり、北端のプレイグランドが最も嫌われている。歩行者の流れは、好まれる場所の連結を示し(図8)、桜広場はOAP-OSの核であると言われ、OAPタワー周囲のOSはOAPのOSであると良く認識されている(図9)。 9. 結論 OAPのOSは、不潔物・ホームレスの人々に関する問題等は無い一方利用が制限され、静かな活動のみが適している。少なくともより多くの施設設備、例えば座れる場所、がここには確保されるべきである。OAPのOSは都市構成体との妥当な統合を与えているが、アクセシビリティの改善が、例えば源八橋下の息詰まるような通路の如く、近隣のOSへのアクセシビリティに対して悪影響を与えている場合も生じている。近隣におけるOSの利用に関するあらゆる要求を把握し、それらが私有公的空間プロジェクトにおいて満足されるように、検討条件として設定されるべきである。それにより、公的利用に対するより効果的な施設であり得るであろう。
著者
李 斌 舟橋 國男 奥 俊信 鈴木 毅 小浦 久子 木多 道宏
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.64, no.518, pp.145-151, 1999-04-30 (Released:2017-02-03)
参考文献数
48
被引用文献数
1 1

It is known that, in ancient China, the sitting styles changed from sitting-on-floor to sitting-on-chair. But the time of turning-point of sitting-on-chair has not been ascertained yet. By dividing into 4 stages, namely, "Age of Sitting-on-Floor", "Appearance of Sitting-on-Chair", "Expansion of Sitting-on-Chair" and "Generalization of Sitting-on-Chair", this study tries to clarify the changing process of sitting styles themselves and its reasons. With the change of sitting styles, the floor structure of building also changed. From the point of view of sitting style, this study tries to clarify the relationship between the change of this behavior style and the change of architectural environment.