著者
李 海峰 米谷 雅之 藤田 健
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

本研究は、中国における市場経済発展の過程において社会経済がどのように変動しているか、大衆消費社会がどのように形成されているか等について、経済水準の異なる都市で消費者の生活や意識行動の調査を行い、中国における大衆消費社会の形成過程を解明するための調査研究である。本研究は計画とおりに大都市の北京市、上海市、広州市、重慶市において、各300世帯、地方都市の瀋陽市、石家荘市、武漢市において各200世帯、計1800世帯を無作為で抽出し、アンケート調査を実施した。この定量的調査研究を行うと同時に、定性的調査研究も行っている。北京市、上海市、広州市、重慶市、瀋陽市の5都市で計120世帯に対し、聞き取り調査を実施した。二通りの各調査は回収率が99%で、広範囲にわたって質の高い調査結果が得られた。回収したデータを日本に持ち帰り、分析を進めてきた。1990年代との時系列の比較、都市間比較、国際比較の観点から、解明している。従来,アメリカや日本における大衆消費市場の形成過程では,所得階層間の格差が次第に縮小し,上流階層だけではなく,多くの家庭が消費の自由選択力を持ち,消費財を絶えず買い換えたり,購買量を増やしたりする。しかし,中国は欧米や日本と異なり,都市間、所得階層間の格差が1990年代より拡大している一方、「中流階層意識」が急速に増加し、消費者はより高次の欲求の充足を求めているのは特徴である。都市における消費者ニーズは、必需品への支出から贅沢品への支出へ、モノへの支出からサービスへの支出に重点を移している。総体として「量」的欲求から「質」的欲求へと向上している。「消費生活水準の上昇」「所得増加への欲求」「今後の消費支出傾向」「消費者行動の特性」からみて,今後,中国の経済成長率は「政府」「企業」だけではなく,「消費者(家計)の力」から大きな影響を受けることになる。
著者
長谷見 雄二 山田 常圭 金森 道 李 海峰
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

本研究は、環境共生建築のひとつの手法として注目されているアトリウム型建築とダブルスキン型建築について、自然換気と煙制御を両立させる技術的可能性を検討した。環境共生や省エネルギーの要求などから、自然換気の活用への期待が高まっているが、火災安全の視点からは、このように自然換気を促進するための開放的な空間構成は、火災時には、煙の流動拡大を引き起こし、全館に人命危険を及ぼすおそれが大きいため、特殊な例を除いてはなかなか普及していない。この実状は、自然換気システムは、今後、必要性を増すと考えられるにも関わらず、それに適した煙制御計画手法が未整備なままであることが、その適用を特殊な条件に限定し、普及や技術的展開を阻んでいることを浮き彫りにするものである。そこで、本研究は、自然換気と煙流動が同一の流体力学的原理-煙突効果に支配されることに注目し、新たな視点から、ソーラーチムニーによる自然換気システムをほぼそのまま煙制御システムとして利用する設計概念を提示して、その有効性・妥当性を模型実験と数値計算により実証した。本システムでは自然換気のシステムを煙制御に対しても用いることになるので、火災時にも機械の力を頼らずに自然換気システムのポリシーを一貫にしたうえ、設備・しくみが煙制御のためだけのものでない分、コスト的に有利になるものという二次的な効用も得られると考えられる。意匠・空間計画に対しては、排煙設備や遮煙シャッターなどが軽減・省略できるという観点では、本システムは有利なものであるといえる。本研究の成果に基づいて、現在の一般的なアトリウム型建築・ダブルスキン型建築に著しい改変を及ぼすことなく、火災安全性能を確保できるため、今後、自然換気を活用した環境共生・省エネルギーと火災安全性の両立を実現させる建築を普及させていくことが期待される。