著者
大須賀 公一 石川 将人 青沼 仁志 李 聖林 小林 亮 佐倉 緑 杉本 靖博 石黒 章夫
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2017-05-31

本研究の「要」は,昆虫の脳(中心体)に薬剤を注入することによって脳機能と下部神経系との情報のやり取りを遮断する「ゾンビ化」であるので,研究期間の前半は,1)昆虫のゾンビ化手法の確立,2)ゾンビ化昆虫のゾンビ化程度の検証法確立,に注力した.同時に,それらのゾンビ化手法が確立した後のために,3)昆虫の適応的運動能力の発現メカニズムの同定手法理論の検討,4)高度な脳機能を持たない運動制御原理の考察,を行なった.以下,進捗状況を説明する.1)昆虫のゾンビ化手法の確立:コオロギの脳内の薬剤投与部位をより厳密に制御するため,頭部の3Dマップに埋め込むための「コオロギ標準脳の作成を進めており,約60%程度進捗した.また,ゾンビ化システム」の構築を完了した.2)ゾンビ化昆虫のゾンビ化程度の検証法確立:「ゾンビコオロギ」はどのような振る舞いがみられるのかを確認するために,二種類の運動解析装置を試作中であり,70%程度完成した.さらに多様な環境を再現できるような球状トレッドミルシステムも開発した.また,頭部のないコオロギの振る舞いや,各部神経接続を外科的に切断したコオロギの振る舞いを確認している.3)昆虫の適応的運動能力の発現メカニズムの同定手法理論の検討:ゾンビコオロギが完成するまでの基礎研究として,一般の昆虫が示す適応能力の中でも特に,a)歩行速度への適応,b)脚切断への適応,c)環境への適応という三つの適応的な振る舞いに着目し,これら能力を発現しうる制御メカニズムのミニマルモデルの構築を目的とした研究を行った.4)高度な脳機能を用いない運動制御原理の考察:ゾンビ化された昆虫と同じく高度な脳機能をもたない脚機構が,環境/身体間および身体内の脚間で調和のとれた運動を生成する制御モデルを構築した.