著者
村上 千鶴子
出版者
学校法人 開智学園 開智国際大学
雑誌
日本橋学館大学紀要 (ISSN:13480154)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.3-19, 2010-03-01 (Released:2018-02-07)

近年、卑近なものを題材にしながら大胆な構成、目を見張る色彩で装飾的にも芸術としても高い評価を得ている伊藤若冲作品の特徴を色彩、題材、作者の生き方などから分析する。若冲作品はその成立から250 年を経て現代もなお斬新な驚きをもって広く受け入れられている。主に、若冲作品の初期の代表作「動植綵絵」の分析によって見えてくるものについて、分析心理学、禅宗、華厳教の視点からその作品創造の原点を検討する。それによって、芸術の専門家とは異なった視点からその作品の意義、美しさの意味、および作者の深層の心情を明らかにすることを意図した。結果として、若冲の動物綵絵は、決して派手な色彩で彩られているわけではなく、地味な背景に輝く白が特徴的であった。題材は、卑近な生物の緻密な描写から想像上の生き物の模写まで幅広く、構図はむしろ抑制と熟慮の利いたものであった。その緻密な描写による生命の迸りには、臨済禅宗徒の絵師伊藤若冲の心の深い境涯への没入と見性が示唆された。彼こそは真の芸術家と呼ばれるに相応しい稀有な存在であることが示唆された。
著者
村上 千鶴子
出版者
学校法人 開智学園 開智国際大学
雑誌
日本橋学館大学紀要 (ISSN:13480154)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.15-26, 2009-03-01 (Released:2018-02-07)

統合失調症犯罪者の認知について、ロールシャッハ検査の分析を用いて検討した。方法:司法精神鑑定に付された40 名の統合失調症犯罪者の精神鑑定時のロールシャッハ検査所見を統計学的に分析した。結果・考察:片口の修正BRS が、病型によって有効度が異なることが分かった。また、形態の崩れは解体群で顕著であり、形態の崩壊が言語連合の弛緩につながる可能性も示唆された。統合失調症素因は、のちの形態の崩れを予測する因子としては有効ではないことが示唆された。さらには、明確な誘因なく生起した犯罪においては、明らかな質的論理構造変化(思考障害)が存在し、統制の欠如した感情反応性が犯罪生起の間接誘因となった可能性が示唆された。情性欠如の進んだ群では、発達水準の低さ、衝動性、知的水準の貧困、共感能力の貧困が示唆され、先行研究の知見に矛盾しなかった。また、病識が欠如した場合には、感情的に不安定になり、一方、病識がある程度ある場合には適応的であることが示唆され、適切な病名告知とフォローアップが犯罪防止に有効に作用する可能性を示した。また、病的体験型の場合には、人格的未熟は関係なく、まさに病的体験に支配されていることを示していた。認知心理学的に最も興味深い質的論理構造変化では、思考障害の高度群が未熟さや衝動性を示さず、やや不安が高かった。これは、統合失調症者が被害関係妄想に陥った場合、それが継続すると、その妄想的気分に合わせた認知の枠組みの変化が生起し、不安をもたらす方向で固定され強化され続ける可能性を示唆している。ここに統合失調症の認知行動療法の可能性が示された。
著者
村上 千鶴子
出版者
学校法人 開智学園 開智国際大学
雑誌
日本橋学館大学紀要 (ISSN:13480154)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.69-79, 2011

目的:統合失調症者の世界観について、正常対照群と比較して評価した。方法:統合失調症の診断がついている入院患者41 名と正常対照群50 名について、1996 年に世界観調査が実施された。結果:統合失調症者では、対象群と比較して具体性、感情的反応、二極化、分散、断定、自惚れ、被害妄想(女性)、宗教的傾向(女性)、関係性重視(女性)がより頻回にみられた。考察:統合失調症者の回答にみられた傾向は、ほとんどがPiaget の認知発達理論でいう「前操作期」あるいは「具体的操作期」と同様の認知段階を示した。慢性統合失調症患者では、情緒の退行と情緒の不安定性と同様に認知段階の退行が起こり、これが、自閉思考や原始的思考にみられる奇異な論理を惹起し、同時に心の平衡を保とうとすると考えられた。また、統合失調症者は、批判的に体験を受け入れる代わりに、生起した主観的、特殊な体験を無批判に受け入れる傾向があり、また断定的に物事を否定することで自身の意識の明瞭性を印象付ける傾向があることが示唆された。このことは、疾病それ自体だけではなく、環境要因への配慮も必要であることが示唆されており、その意味では、統合失調症者においても環境制限的であり、所与の環境における心理学的影響が注意深く考慮されなければならない。
著者
村上 千鶴子 ムラカミ チズコ Chizuko Murakami
雑誌
総合福祉
巻号頁・発行日
no.3, pp.107-115, 2006-03

補完・代替医療としてのホメオパシーについて概観し、その日本的展開の可能性について論じる。はじめに、ホメオパシーとはどういうものかについて論じ、次に、evidence based medicineとしてのホメオパシーの位置付け、narrative based medicineとしてのホメオパシーの位置付けと特徴について論じた上で、ホメオパシーの日本的展開の可能性を、以下の項目に分けて論じた。1.漢方薬との共通点と相違点 2.漢方薬のレメディ化について 3.レメディの日本製原材料について 4.複雑なレメディ像とその例 5.風土と医療。その後、2例の事例提示を簡単に行った。結果として、全人的アプローチを要し、対人知覚に優れた国民性をもつ、植生の豊かな日本におけるホメオパシーが、臨床的可能性を大いにもつことが示唆された。また、我々の心身のメカニズムを知る上で、用量依存とは異なった次元の身体機能の説明概念である[波動医学]の洗練が期待され、それによってホメオパシーの治療効果の論理的説明が可能になることが示唆された。

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著者
村上千鶴子著
出版者
駿河台出版社
巻号頁・発行日
2009
著者
村上 千鶴子 ムラカミ チズコ Chizuko Murakami
出版者
浦和大学総合福祉学部
雑誌
総合福祉
巻号頁・発行日
vol.3, pp.107-115, 2006-03

補完・代替医療としてのホメオパシーについて概観し、その日本的展開の可能性について論じる。はじめに、ホメオパシーとはどういうものかについて論じ、次に、evidence based medicineとしてのホメオパシーの位置付け、narrative based medicineとしてのホメオパシーの位置付けと特徴について論じた上で、ホメオパシーの日本的展開の可能性を、以下の項目に分けて論じた。1.漢方薬との共通点と相違点 2.漢方薬のレメディ化について 3.レメディの日本製原材料について 4.複雑なレメディ像とその例 5.風土と医療。その後、2例の事例提示を簡単に行った。結果として、全人的アプローチを要し、対人知覚に優れた国民性をもつ、植生の豊かな日本におけるホメオパシーが、臨床的可能性を大いにもつことが示唆された。また、我々の心身のメカニズムを知る上で、用量依存とは異なった次元の身体機能の説明概念である[波動医学]の洗練が期待され、それによってホメオパシーの治療効果の論理的説明が可能になることが示唆された。
著者
村上 千鶴子 ムラカミ チズコ Chizuko Murakami
雑誌
総合福祉
巻号頁・発行日
no.3, pp.117-126, 2006-03

松尾芭蕉(1644-1694)と木喰明満(1718-1810)とは、各々江戸時代中期・後期に活躍し、共に貴重な文化遺産を創造した。俳句と木彫という異なる分野ではあるが、共に希有の芸術家として知られている。また、両者には類似点が多く、共に放浪の旅人として旅に生き、また妻帯することなく、人並み外れた超俗の人生を送った。しかしその現世への関わりには対照的ともいえる部分が存在する。つまり芭蕉は最初の紀行文「野ざらし紀行」において、「猿を聞人捨子に秋の風いかに」という句を読み、現実と理想の相克のうちに捨て子を置き去りにした。一方木喰明満は旅の先々で布教を第一義としながらも、医療・奉仕活動に精進し、その傍ら寝る間を惜しんで彫像を彫り続けた。それを、芸術家と宗教家の違いと片づける立場もあるが、むしろ彼らをしてその各々に分かったものについて、彼らの経歴を振り返りながら、また彼らの悟道の程度、芸術の相異に着目しながら種々の観点から考察を加えた。
著者
村上 千鶴子 古橋 幸男
出版者
日本橋学館大学
雑誌
紀要 (ISSN:13480154)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.112-120, 2012-03-01