著者
村上 和保 藤井 沙織 杉山 治代 多田 理恵 玉川 淳子
出版者
日本食品微生物学会
雑誌
日本食品微生物学会雑誌 (ISSN:13408267)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.208-211, 2009-12-31 (Released:2010-07-15)
参考文献数
12
被引用文献数
2

手指衛生管理において,消毒が適正であるかどうかは非常に重要な事項である.本研究では,手洗い時のエタノール消毒効果をより確実に発現させる条件はいかなるものかを中心に検討した.石けんで手洗いを行い,ペーパータオルで水分をふき取った後には手洗い前に比べて手指の細菌数は減少したが,除菌効果は十分とはいえなかった.これにつづいてエタノール消毒(両手掌に噴霧し,擦り合わせながら乾燥)をした場合,80%, 99.5% エタノールでは十分な消毒効果がみられたが,70% では効果が発現しなかった.一方,手洗い後に手指を十分に風乾してエタノール消毒をすると,いずれの濃度でも十分な効果が認められた.そして,これらの条件での手洗い前後の手指水分量を調べてみると,手洗い後にペーパータオルでふき取った場合,手洗い前よりも水分量が依然として高かったのに対し,十分に風乾した場合,手洗い前とほぼ同等になった.以上から,エタノールによる手指消毒では手指を十分乾燥させることが極めて重要で,使用するエタノール濃度は 80% 以上が望ましい.
著者
村上 和保
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.46, no.9, pp.881-883, 1995-09-15 (Released:2010-03-12)
参考文献数
5

一般家庭から持ち込まれたケフィールおよびケフィール粒の汚染細菌の検出ならびに検査依頼主へのアンケート調査を行い, 以下の結果を得た.(1) 全検査検体 (90例) のうち11例 (12.2%) から大腸菌群が検出され, 菌種としてはKlebsiella aerogenes I (II例), Klebsiella aerogenes II (2例), Citrobacter freundii I (3例), Escherichia coli III (1例) であった.(2) 検出された大腸菌群の菌数は最少のものが60個/g, 最多が520,000個/gであった.(3) ケフィールからの大腸菌群の検出状況と季節との間には明確な相関は認められなかった.(4) 大腸菌群の検出された検体 (11例) および一部の検体 (3例), 合計14例からはサルモネラは検出されなかった.(5) アンケート結果からみて, ケフィールを作る際に使う器具や容器の消毒は, 一般家庭では必ずしも十分に行われているとは言い難い.
著者
村上 和保 門出 清香 表 彩子 佐藤 佑子 竹森 真由美 立道 洋子 和田 貴臣 三好 真理
出版者
日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 = Journal of home economics of Japan (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.57, no.12, pp.793-798, 2006-12-15
参考文献数
16

真空調理法の安全性を評価する目的で,耐熱性食中毒起因菌であるセレウス菌の真空調理過程における消長を調べた.実験には牛肉スライスを真空包装にした検体を用い,加熱条件は,初回加熱が58℃・40分,67℃・40分および80℃・15分の3条件,再加熱は一律80℃・10分とした.なお,セレウス菌の消長を調べる際には,栄養体あるいは芽胞を実験的に接種した検体で検討した.その結果,次のような結果が得られた.(1)使用した牛肉は加熱前では,一般生菌数が5.4×10^4個/g,大腸菌群およびセレウス菌は検出されなかった.その後,一般生菌数は,58℃・40分の初回加熱後でのみ5.4×10^2個/g検出されたものの,再加熱後では検出されなかった.(2)接種したセレウス菌栄養体(4.0×10^4個/g)は初回加熱後に完全に死滅した.(3)接種した芽胞(3.2×10^2個/g)は初回加熱後で微量生残したが,再加熱により完全に死滅した.本実験結果をみる限り,真空調理法によって作られた料理は概ね安全であるといってよいが,安全性を確保するためには再加熱工程が非常に重要であると考えられた.