著者
能城 修一 佐々木 由香 鈴木 三男 村上 由美子
出版者
日本植生史学会
雑誌
植生史研究 (ISSN:0915003X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.29-40, 2012 (Released:2021-03-17)

近年,コナラ属アカガシ亜属のうちイチイガシの同定が木材組織から可能となり,それをもとに,関東地方で弥生時代中期から古墳時代の木製品を多数産出した7 遺跡を対象として,アカガシ亜属の木材を再検討した。その結果,この時期を通して鋤鍬にはイチイガシが選択的に利用されていた。海岸に近い神奈川県池子遺跡と,千葉県常代遺跡,国府関遺跡,五所四反田遺跡では,鋤鍬の完成品だけでなく,未成品や原材でもイチイガシとイチイガシの可能性の高い樹種が50 ~ 70%を占めており,遺跡周辺で原材の採取から加工までが行われていたと想定された。それに対し,内陸部の埼玉県小敷田遺跡と群馬県新保遺跡ではイチイガシの利用比率が下がり,イチイガシ以外のアカガシ亜属やコナラ属クヌギ節を鋤鍬に用いる傾向が認められた。もっとも内陸部の新保遺跡では,鋤鍬の完成品だけでなく未成品や原材でもイチイガシ以外のアカガシ亜属とクヌギ節がほとんどを占め,イチイガシの鋤鍬は完成品と未成品が少数しか出土せず,これらは関東地方南部から移入されたと想定された。鋤鍬以外の木製品では,神奈川県や千葉県の遺跡でもアカガシ亜属以外の樹種が70%以上を占め,アカガシ亜属の中でもイチイガシの比率は低い。このように,イチイガシが鋤鍬に限定して選択されていた理由は,イチイガシの木材がアカガシ亜属の他の樹種の木材に比べて柔軟性があり,軽いわりに強度があるためであると想定された。
著者
飯田 卓 内堀 基光 吉田 彰 伊達 仁美 久保田 康裕 久保田 康裕 村上 由美子 シャンタル ラディミラヒ ルシアン ファリニアイナ
出版者
国立民族学博物館
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

マダガスカル国内では森林保護の動きが急速に高まっているが、村落部では木材を今なお生活のために必要としており、資源の持続と生活文化の持続の双方が求められている。本研究では、両者の調和をはかるため、村落生活者による木材利用の実態と、その経年変化の傾向を明らかにした。An Ethno-Xylological Perspective on Madagascar Area Studies In Madagascar, where the movement of forest conservation is active these years, inhabitants of rural areas are obliged to use wood materials to make their living, and therefore it is necessary to sustain both forest resources and rural life. This research, aiming at balancing the both targets, clarified actualities of rural people's wood use and the tendency of its change.