著者
村上 祥子
出版者
拓殖大学言語文化研究所
雑誌
拓殖大学語学研究 = Takushoku language studies (ISSN:13488384)
巻号頁・発行日
no.140, pp.193-217, 2019-03-29

法師の呪術は共同研究テーマの中で,呪いあるいは迷信の範疇としてとらえることができる。法師が実際の現場で行う呪術とは経文と設経であり,どのように祭祀を行うのか,経文にはどのようなものがあり,どのような効果を持つのか,どのように唱えられているのか,また祭場を飾る設経とは,具体的にどのようなものかを現場の調査を踏まえて考察した。法師の出現は古く高麗時代の盲僧に連なる存在であるといわれ,現在は目がみえる法師により継承されている。韓国で一般的に行われる巫堂による祭祀は,歌と舞により 請神 ⇒ 娯神 ⇒ 送神の構造で行われ,現世の招福を願うものである。それに対し,法師の祭祀は,経文を唱えることと,設経という祭場に取り付ける紙を切った造形により 請神 ⇒ 脅神 ⇒ 送神を行うことで,厄災を払い招福を願うことである。その構造に大きな違いがある。また巫堂は降神巫と世襲巫に分けることができるが,法師は学習によりその技術を修得することから学習巫として理解されている。法師の経文や設経は口承が主であり,師匠によりそれぞれの特徴を有しており,一貫性はない。法師の祭祀は現在では座経といわれるが,実際に行われる経文についてその性質を概観した。また設経は三か所に天禁・内禁・外禁と称され取り付けられる。各設経の意味と,目的をその造形を通して考察した。目には見えない法師の呪術は,耳を通して経文として,目を通して設経としてその効果を発揮するものである。
著者
村上 祥子
出版者
拓殖大学言語文化研究所
雑誌
拓殖大学語学研究 = Takushoku language studies (ISSN:13488384)
巻号頁・発行日
vol.140, pp.193-217, 2019-03-29

法師の呪術は共同研究テーマの中で,呪いあるいは迷信の範疇としてとらえることができる。法師が実際の現場で行う呪術とは経文と設経であり,どのように祭祀を行うのか,経文にはどのようなものがあり,どのような効果を持つのか,どのように唱えられているのか,また祭場を飾る設経とは,具体的にどのようなものかを現場の調査を踏まえて考察した。法師の出現は古く高麗時代の盲僧に連なる存在であるといわれ,現在は目がみえる法師により継承されている。韓国で一般的に行われる巫堂による祭祀は,歌と舞により 請神 ⇒ 娯神 ⇒ 送神の構造で行われ,現世の招福を願うものである。それに対し,法師の祭祀は,経文を唱えることと,設経という祭場に取り付ける紙を切った造形により 請神 ⇒ 脅神 ⇒ 送神を行うことで,厄災を払い招福を願うことである。その構造に大きな違いがある。また巫堂は降神巫と世襲巫に分けることができるが,法師は学習によりその技術を修得することから学習巫として理解されている。法師の経文や設経は口承が主であり,師匠によりそれぞれの特徴を有しており,一貫性はない。法師の祭祀は現在では座経といわれるが,実際に行われる経文についてその性質を概観した。また設経は三か所に天禁・内禁・外禁と称され取り付けられる。各設経の意味と,目的をその造形を通して考察した。目には見えない法師の呪術は,耳を通して経文として,目を通して設経としてその効果を発揮するものである。
著者
安岡 稔晃 藤岡 徹 上野 愛実 村上 祥子 井上 彩 内倉 友香 高木 香津子 宇佐美 知香 森 美妃 田中 寛希 松元 隆 松原 裕子 濱田 雄行 松原 圭一 杉山 隆
出版者
日本産科婦人科内視鏡学会
雑誌
日本産科婦人科内視鏡学会雑誌 (ISSN:18849938)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.121-125, 2017 (Released:2017-06-06)
参考文献数
9

BACKGROUND: With the increase in the cesarean section rate, the complications associated with cesarean section wounds have also increased. The presence of a cesarean scar defect and diverticulum has recently been identified as a source of persistent, irregular vaginal bleeding, menstrual pain, secondary infertility, and lower abdominal pain, known as cesarean scar syndrome. CASE: A 33-year-old woman presented with menstrual and lower abdominal pain in association with an anterior extrauterine cystic mass detected by pelvic ultrasound, thought to represent a cesarean scar diverticulum. The cystic diverticulum was laparoscopically excised, and the lower anterior uterine wall was repaired. The postoperative course was good and the patient was discharged on the fifth day after surgery. Menstrual and lower abdominal pain resolved after surgery. CONCLUSION: In cases of cesarean scar syndrome associated with a cystic diverticulum, laparoscopic surgery should be considered, especially when menstrual and lower abdominal pain is present.
著者
村上 祥子
出版者
拓殖大学言語文化研究所
雑誌
拓殖大学語学研究 = Takushoku language studies (ISSN:13488384)
巻号頁・発行日
vol.137, pp.101-121, 2018-02-20

巫俗儀礼で巫堂が口承する「バリ公主」は,死霊祭で語られる女神の始祖物語である。内容は捨てられた七番目のバリ公主が,両親の病気を治すために薬水を求めて冒険,帰ってきて両親の病気を治癒し,家族と共に神として祀られる話である。ここでは次の二点を考察した。①「バリ公主」の内容は,世界的な英雄譚と共通の要素を持つことを八つの項目について考察し,一致することを確認した。この物語が死霊祭で語られるのは,死者が祖先神への転換のために必要な儀礼であり,祖先神は現在に生きる子孫の繁栄と平安を守ると信じたからである。②長く「バリ公主」が儒教の規範で規制されたにもかかわらず,消えることなく信仰されたのは,女性の力があったからである。儒教の世界観は人間が生きていく価値観と規範は教えたが,死への恐れやあの世への不安,現実の苦悩や苦痛について語ることはなかった。だから女性は儒教では語ることのない信仰を守ってきた。それを可能にしたのは,高麗時代から続いた輪回奉祀と男女均分相続である。輪回奉祀とは息子や娘が祖先の祭祀を交代で担当・挙行するものであり,朝鮮王朝時代も続いた。男女均分相続は内容的に変更点があるが,朝鮮王朝時代の『経国大典』(1485年)に男女均分相続すると記されている。女性は婚姻に関係なく個人の財産を持ち,運営に当たった。以上,「バリ公主」は英雄譚的要素をもち,祭祀権と経済的な権利を有する女性により,今日まで信仰の対象として継承されてきたといえる。