著者
那波 宏之 村山 正宜
出版者
日本生物学的精神医学会
雑誌
日本生物学的精神医学会誌 (ISSN:21866619)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.147-151, 2019 (Released:2020-03-30)
参考文献数
20

近年,ヒトの知覚認知機能が単純に感覚受容器の信号(ボトムアップ情報)だけを基に発現しているのではなく,記憶,経験,情動の脳内信号(トップダウン情報)によって修正,介入されていることが脳科学領域で重要視されるようになっている。本来,このトップダウン情報は記憶や状況判断より形成され,その予測される情報を感覚受容野に提供することで,より正確に認知することを目的にするのである。しかし実際の感覚受容器からの信号が制限されたり,過度な注意や薬物などによりトップダウン情報が介入しすぎると,予測情報そのものが間違って実感覚として認知される,つまり錯覚や幻覚となる可能性がある。ドパミンはそのトップダウン情報を担う前頭前野の活動を高め,セロトニンは脳全体の情報連合性を亢進させるので,覚せい剤などの薬物が,錯覚・幻覚を誘発する事実とも矛盾しない。ここではトップダウン障害仮説と統合失調症の幻聴・錯聴との関連性について考察を加える。
著者
大澤 匡弘 粂 和彦 村山 正宜 祖父江 和哉 小山内 実
出版者
名古屋市立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

痛みは不快な情動を生み出す感覚刺激とされるが、心の状態が痛みの感受性にも影響を与える。本研究の成果から、慢性的に痛みがあると不快な情動を生み出す脳内神経回路が活性化していることを全脳イメージングの解析から明らかにできた。また、気持ちが落ち込んでいる状態(抑うつ状態)では、些細な刺激でも痛みとして認識されることが明らかになった。特に、前帯状回皮質と呼ばれる情動に関係が深い脳領域の活動が高まっていると痛みに対して過敏になることも示すことができた。これらのことから、難治化した痛みに対しては、情動面に配慮した治療法が有効であることが提唱できる。
著者
齋藤 喜仁 村山 正宜
出版者
金原一郎記念医学医療振興財団
巻号頁・発行日
pp.40-44, 2020-02-15

記憶は覚醒時に符号化され,記憶固定化を介して長期記憶として貯蔵される。Müllerにより記憶固定化の概念が提唱されてから100年以上が経ち,睡眠が様々な種類の記憶を固定化することが行動学的に示されてきた1)。では,睡眠時の脳において,いつ・どこで・どのようにして記憶固定化が起こるのであろうか?