著者
松村 良之 木下 麻奈子 白取 祐司 佐伯 昌彦 村山 眞維 太田 勝造 今井 猛嘉 林 美春 綿村 英一郎 長谷川 晃
出版者
明治大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

2020年度には実査が予定されているので、総括班、社会調査班を中心に実査の大枠を固めた。本調査は継続調査であり、第1、2波の調査と同一の調査方法によることが必須であることが確認された。予算制約の結果、抽出サンプル数は900(予想回収数500)であり、第1波、第2波調査の半分程度となるが、統計学的に許容できる水準であることが確認された。調査票については、16頁構成のうち、シナリオ部分約4頁を新規設問に入れ替えることが確認された。そして、心理学班も加えて検討した結果、責任主義関連項目では、心理学的な能動性(moral agency)評価と責任能力、少年、過失・故意を取り上げることとした。心理学班は第1に、日本人の法意識の背後にあると想定される公正観(公正世界尺度に由来する「運の等量仮説」、ハイトに由来する道徳尺度の日本バージョンなど)尺度の開発を試た。さらに、agency性評価の心理尺度について、その妥当性、信頼性を検討し調査票に組み込むべく準備した。第2に、少年犯罪について、人々が少年を罰しようとする応報感情の性質について検討した。世論は非行少年に対して厳罰志向的な態度を有しているが、他面、非行少年の置かれた環境的負因(責任主義につながる)について全く意識していないわけではない。そのことを踏まえて、少年に対する保護と刑罰という観点からの質問票作成を試みた。第3に、刑事法学班と協力して、刑法学の観点からは学説史に遡りつつ、また近年の脳科学の成果を踏まえた自由意思についての見解にもよりつつ、錯誤論、共犯論と関連させて過失・故意の教義学的議論について検討を深めた。それを踏まえて、大きくは結果責任と主観責任という枠組みで、質問項目を検討した(なお、少年、過失・故意については、シナリオを用いた実験計画法による)。
著者
村山 眞維
出版者
千葉大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1989

1.今回東京で行った質問票調査によれば、我国の法律業務は個人の不動産や相続・離婚など主に個人を顧客とする仕事と、中小企業を主な顧客とする仕事とが中心となっている。渉外関係などを突出した部分とする大企業関係の法律業務は、増えてきているように見えるが、まだ法律業務の基本構造を変えるには至っていないように思われる。2.刑事弁護の担手は徐々に減少してきているようである。少なくとも国選受任者の割合は2割に満たない。国選弁護の主な担手は、登録後十年未満の弁護士と老令の弁護士、および刑事弁護を続ける意志のある比較的少数の中堅弁護士である。これに対し、私選弁護はより広い弁護士層によって受任されており、いわゆる一般民事案件と同様なものとして受任されているように見える。3.以上の状況は、今世紀初頭の米国と比較し、国選弁護に類似の問題をもつ反面、弁護士会について大きな相違いがある。ビジネスロイヤ-が主導権をもった米国と異なり、東京では一般民事案件を扱う個人経営弁護士が運営の中心となっている。これは、法律業務の構造と、法律専門職の理念の相違とも関連しているのかもしれない。4.国選弁護活動は、私選弁護活動に比べ余り活発に行なわれているとは言えない。ただし、それは国選事件の内容が活発な弁護活動を必要としないようなものであるからかもしれず、その点の今後の検討が必要である。5.法律業務の構造変化がもたらし得る影響をより明確にするためには、刑事事件の受任がいかなる業務環境の下で、どのような動機によってなされているかを、面接調査などの方法により明らかにすることが必要であろう。