著者
玉川 一郎 吉野 純 加野 利生 安田 孝志 村岡 裕由 児島 利治 石原 光則 永井 信 斎藤 琢 李 美善 牧 雅康 秋山 侃 小泉 博
出版者
システム農学会
雑誌
システム農学 (ISSN:09137548)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.129-136, 2008-04-10
参考文献数
6
被引用文献数
1

岐阜大学21世紀COE「衛星生態学創生拠点―流域圏をモデルとした生態系機能評価―」(代表:村岡裕由 平成16年度~20年度)ではプログラムの中心的課題として、岐阜県高山市の大八賀川流域を対象に炭素吸収量などの生態系機能を面的に評価する研究を行っている。対象地域の代表的植生を示す場所にある2つの重点的観測サイト(スーパーサイト)での現地観測で得られた結果を用いて、陸面モデル NCAR LSMを対象地域に適した形に改良し、衛星リモートシンシングによって得られた土地利用などのデータを取り込み、気象モデルMM5と結合して流域での生態系機能評価を行うという手順を考え研究を行っている。そこでは生態系プロセス研究と衛星リモートセンシング、数値モデルの3つの研究分野の研究者がそれぞれの知識や技術を出し合い、相互理解を深めつつ協力して研究を進展させている。完成に近づいた現在の姿を報告する。
著者
斎藤 琢 永井 信 村岡 裕由
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.243-252, 2014-11-30

急速な気候変動が顕在化した現在において、陸域生態系の炭素収支の時空間変動(炭素動態)を地域から地球規模で広域的に高精度に評価することが「環境科学」に関連する様々な分野で期待されている。リモートセンシングは、様々な時間・空間スケールで陸域生態系の炭素動態に関わる物理量を推定可能であり、陸域生態系の炭素収支の現状診断と将来予測の高度化に貢献している。本稿では、陸域生態系の炭素収支の現状診断と将来予測におけるリモートセンシング観測の期待と課題について、特に、リモートセンシングによる光合成量・光合成能の推定と葉群フェノロジーの推定およびそれらの炭素動態研究への応用について概説した。いずれの研究の発展においても、多地点に展開する生態系サイトで得たリモートセンシング観測情報や関連する生態学的な物理量に関する知見の集積・統合(観測ネットワーク化やデータベース化)および研究者コミュニティの連携が必要不可欠であり、生態学者の更なる積極的な参加が強く望まれる。
著者
村岡 裕由 野田 響 廣田 湖美 小泉 博
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.345-355, 2007-11-30 (Released:2016-09-16)
参考文献数
41
被引用文献数
2

植物の生理生態学が取り組んできた主要な課題の一つは、光合成に必要な資源の獲得と利用を司る形態的機能、および生理的機能と生育環境との関係を明らかにすることである。様々な種について、与えられた生育環境におけるこれらの機能の効率性や変動環境に対する可塑性に着目して研究することにより、個体の成長と物理的環境との関係を作るメカニズム、個体群や群落の中での個体の振る舞いとその適応的意義、さらに群落の維持・更新過程のメカニズムなど、個体から群落、生態系に至るまで、様々なスケールでの生態現象の解明が進められてきた。植物生理生態学の視点は、大気中の二酸化炭素(CO_2)濃度の上昇や温暖化などの環境変動が生態系に及ぼす影響、または生態系の反応の理解においても重要な役割を果たす。生態系の炭素シーケストレーション機能は、その生態系を特徴付ける植物の生理生態的特性に依存するため、CO_2フラックス観測結果の解析や炭素収支のモデルシミュレーション解析における植物生理生態学的視点と知見の貢献は大きい。また、数十m四方から流域、地域、地球スケールでの生態系観測に有効なツールであるリモートセンシングの解析精度の向上には、葉群をなす個葉の生理的特性に加えて樹形や葉群構造への着目が大きく寄与することが新たにわかってきた。本稿では、筆者らが取り組んできた研究を紹介しながら、植物の光合成生産に関わる生理生態学的特性が個体から生態系スケールでの生態現象に果たす役割について考えてみる。