著者
松居 竜五 小泉 博一
出版者
龍谷大学国際社会文化研究所
雑誌
龍谷大学国際社会文化研究所紀要 (ISSN:18800807)
巻号頁・発行日
no.6, pp.93-97, 2004-03

Minakata Kumagusu (1867-1941), a distinguished scholar both in ecology and folklore, wrote many Japanese essays which are often viewed as pedantic and difficult to read through. It is, however, important to understand that he spent fourteen years in the US and UK, and only wrote essays in English until he was nearly forty years old. Even after his late start as a Japanese essayist, he seems to have put priority on his English contributions to the two London magazines, Nature and Notes and Queries over publications in Japanese. It is therefore necessary to analyse his English essays in order to fully understand his studies and philosophy. In this project, we aim to trace the background to Minakata's English essays in connection with the scholary exchanges published in Nature.
著者
玉川 一郎 吉野 純 加野 利生 安田 孝志 村岡 裕由 児島 利治 石原 光則 永井 信 斎藤 琢 李 美善 牧 雅康 秋山 侃 小泉 博
出版者
システム農学会
雑誌
システム農学 (ISSN:09137548)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.129-136, 2008-04-10
参考文献数
6
被引用文献数
1

岐阜大学21世紀COE「衛星生態学創生拠点―流域圏をモデルとした生態系機能評価―」(代表:村岡裕由 平成16年度~20年度)ではプログラムの中心的課題として、岐阜県高山市の大八賀川流域を対象に炭素吸収量などの生態系機能を面的に評価する研究を行っている。対象地域の代表的植生を示す場所にある2つの重点的観測サイト(スーパーサイト)での現地観測で得られた結果を用いて、陸面モデル NCAR LSMを対象地域に適した形に改良し、衛星リモートシンシングによって得られた土地利用などのデータを取り込み、気象モデルMM5と結合して流域での生態系機能評価を行うという手順を考え研究を行っている。そこでは生態系プロセス研究と衛星リモートセンシング、数値モデルの3つの研究分野の研究者がそれぞれの知識や技術を出し合い、相互理解を深めつつ協力して研究を進展させている。完成に近づいた現在の姿を報告する。
著者
岩崎 仁 萩原 博光 小泉 博一
出版者
京都工芸繊維大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

平成15年度は、国立科学博物館植物研究部保管の南方熊楠菌類図譜の調査とスキャニングによるデジタルファイル化をおこない、その結果3,800点余となった。同時に図譜記載英文の調査と翻字作業をおこなった。平成16年度はまず、1901年から1911年にかけて描かれた菌類図譜デジタルデータ130点ほどを中心に、図譜記載英文テキストおよび当時の日記テキストを関連づけて組み込んだ公開用画像データベース(試作版)を構築し、龍谷大学オープンリサーチセンター展示「南方熊楠の森」(平成16年6月7日〜8月1日開催)において一般公開した。南方熊楠旧邸保管の写真類、画像関連資料についてもおおむねデジタルファイル化を終了した。さらに、書簡類および日記についても早急なデジタルファイル化の必要性を感じたため平成16年度の後半はこの作業に力を注いだ。特に土宜法竜との往復書簡については新資料が大量に発見されたこともあり、この作業が今後の熊楠研究に寄与するところは大きいと考える。また、図譜記載英文については現在3,200点ほどについてテキストファイル化が終了したが、その後も京都工芸繊維大学工芸学部と国立科学博物館植物研究部の両者で進行しており、その完了は当分先になる見込みである。インターネット上での公開については菌類標本の所有・管理者である国立科学博物館、平成18年4月に開館が予定されている南方熊楠顕彰館を運用する和歌山県田辺市、および研究代表者の三者で環境を整えるための協議をおこない、龍谷大学人間・科学・宗教オープンリサーチセンターホームページにて公開用画像データベースを近々公開することが決まり、現在その準備中である。このように、菌類図譜デジタルデータは、その範囲を全ての菌類図譜へと拡大した画像閲覧データベースの整備がほぼ終了し、今後はテキストファイルと連携した統合型の南方熊楠データベースへと発展させる予定である。
著者
鈴木 創 中村 陶子 長谷川 亮 形山 憲誠 住友 秀孝 小林 重雄 布村 眞季 小泉 博史
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.41, no.5, pp.329-334, 2008-05-28 (Released:2008-11-26)
参考文献数
16
被引用文献数
1 1

53歳,女性.10年間の維持透析歴あり.偶然,高レニン・高アルドステロン血症を指摘され入院.血漿アルドステロン濃度は40,080pg/mLと著明高値を認めた.右副腎腫瘍を認め各種内分泌的検査結果より,腎細動脈硬化によるレニン上昇とアルドステロン産生副腎腺腫による原発性アルドステロン症の合併と診断した.右副腎摘除術施行.術後,血漿アルドステロン濃度は低下した.慢性腎不全患者においては,時に著明な高アルドステロン血症を呈する例が散見される.腎不全の病態においては,各種のアルドステロン分泌抑制因子が減弱することから適切なネガティブフィードバック機構が作用せず,より高値をとりやすいと考えた.また維持透析患者ではアルドステロン測定系に干渉する物質が存在すると思われ,その評価は慎重に行う必要がある.
著者
末廣 栄一 藤山 雄一 杉本 至健 五島 久陽 篠山 瑞也 小泉 博靖 石原 秀行 野村 貞宏 鈴木 倫保
出版者
一般社団法人日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.178-184, 2016 (Released:2017-03-25)
参考文献数
17
被引用文献数
4 2

One Week Study 2012 (日本頭部外傷データバンク) によると, 軽症・中等症頭部外傷は入院を要する頭部外傷の86%を占め, 頻繁に遭遇する病態である. 中等症頭部外傷においては15%, 軽症頭部外傷においては7.6%の割合で重症化し, 外科的治療が必要となっており, 軽視せずに慎重な判断や対応が重要である. 入院後は, 重症化の危険因子を踏まえたうえで, 積極的な経過観察が重要となる. 頭蓋内病変の有無や重症化の予測ツールとしてS-100B proteinやD-dimerなどの血液biomarkerが注目を浴びており, 自験例も含めて紹介する. 軽症・中等症頭部外傷においては, “重症化” への対応と同様に, 高次脳機能障害や脳震盪後症候群などの社会的問題への対応も重要である. 今後, 脳神経外科医が真摯に取り組むべき分野である.
著者
土屋 亮輔 栗栖 宏多 後藤 秀輔 小林 理奈 小泉 博靖 櫻井 寿郎 小林 徹 竹林 誠治 瀧澤 克己
出版者
一般社団法人日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.30, no.11, pp.796-803, 2021 (Released:2021-11-25)
参考文献数
19

解離性脳動脈瘤破裂に対し開頭術で治療した2症例を報告した. 症例1は血腫の局在と前大脳動脈 (A1部) のわずかな形態変化から, 同部の解離の破裂と診断した. 血腫除去, および直視下に穿通枝を温存した破裂点を含む母血管のtrappingを施行した. 症例2は右椎骨動脈解離の破裂で, 対側椎骨動脈はposterior inferior cerebellar artery (PICA) endであった. 破裂点を含んだ血管形成的なpartial clippingを行い, 椎骨動脈の血流温存を図った. 穿通枝や母血管の血流温存を図りながら急性期の再破裂予防を達成するという観点からの開頭手術の有効性が示唆された.
著者
佐藤 光政 伊藤 一幸 宇佐美 洋三 小泉 博
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.377-384, 1990

日本国内における除草剤に抵抗性を示す雑草のバイオタイプの出現の状況を把握するため, 1989年3月にアンケート調査を実施した。<br>1. ハルジオン, ヒメムカシヨモギ, オオアレチノギク, ヒメジョオン, オニノゲシ, スズメノカタビラ, ノボロギク, オニタビラコ, イヌガラシの9種およびノエビ類において除草剤抵抗性のバイオタイプが見られた。比較的多くの地点で抵抗性バイオタイプが見られたのはハルジオン, ヒメムカシヨモギ, オオアレチノギクの3種で, ハルジオンの除草剤抵抗性バイオタイプは関東地方を中心に出現し, ヒメムカシヨモギとオオアレチノギクの抵抗性バイオタイプは関東地方から九州地方に至る比較的広い地域に出現した。<br>2. 除草剤抵抗性バイオタイプが見られるようになった時期は,「5年以上前から」または「2~3年前から」が多かった。<br>3. 除草剤抵抗性バイオタイプは果樹園, 桑・茶園, 路傍, 畑地および放棄地などで多く見られた。それらの場所で使用している除草剤はパラコートが多かった。
著者
拝師 智之 小泉 博 新井 朋徳 小泉 美香 狩野 広美
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.249-257, 2009 (Released:2017-04-20)
参考文献数
20
被引用文献数
1

0.2テスラ(T)小型MRI装置を用いて収穫果実におけるモモシンクイガ(Carposina sasakii Matsumura)幼虫の食入害を非破壊的に観測した。安定性が高い三次元スピンエコー法(分解能(470μm)3)によって食害孔、虫糞とともに成長した幼虫を検出することができた。本測定法では輪郭が明瞭な画像が得られたが、撮像時間は一果実につき82分を要し、果実に食入した幼虫の行動観測のためには撮像できる試料数の制限が問題となる。食害孔および蓄積された虫糞は、輪郭の鮮明度が若干劣るが、三次元グラディエントエコー法(分解能(860μm)3)によって27分で検出された。グラディエントエコー法による食害孔の拡大の追跡は、果実における幼虫の活動を追尾する指標となると同時に、試料の数に関する問題を解決できる。画素サイズに対して幼虫は小さいので、幼虫自体の検出には画素サイズが小さい画像を長時間かけて撮像することとともに、画像回転などの画像処理技術が必要であるが、0.2T小型MRIは果実における蛾の幼虫の生態学において、ユニークで新しい視点を切り拓く研究手法となると考えられる
著者
熊本 吉一 小泉 博義 黒沢 輝司 山本 裕司 呉 吉煥 鈴木 章 松本 昭彦 近藤 治郎 清水 哲 梶原 博一
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科医学会雑誌 (ISSN:03869776)
巻号頁・発行日
vol.45, no.11, pp.1429-1434, 1984-11-25 (Released:2009-02-10)
参考文献数
10

急性腸間膜血管閉塞症は,絞扼性イレウスと共に腸管の血行障害をきたす代表的な疾患である.最近我々は塞栓摘除術のみで救命せしめた上腸間膜動脈塞栓症の1例を経験したが発症より手術による血流再開に至るまで3時間40分と短時間であったため腸切除を免れた.また横浜市立大学第1外科のイレウス症例中,術前に動脈血ガス分析をおこなった33例を検討したところ,腸切除を免れた.すなわち腸管が壊死に陥らなかった症例ではbase excessはすべて-2.8mEq/l以上であった.このことより絞扼性イレウスの手術適応決定の指標としてbase excess測定が有用であるとの結論を得たが,本来イレウスにおける手術適応の決定は遅くとも腸管の可逆的な血行障害の時点でなければならず,この点よりbase excessのみでの適応決定は慎重でなければならないと考えられた. これらの経験をもとに,腸管の血行障害における有用な補助診断法としての的確な指標を検討するために犬を用いて上腸間膜動脈を結紮する実験をおこなった.その結果,早期診断の一助として, total CPK, base excessが有用であるとの結論を得た.
著者
小泉 博義 寺島 卓 松田 和也 内記 陽一
出版者
社団法人 日本伝熱学会
雑誌
日本伝熱シンポジウム講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.185, 2008

管内鉛直上向き流中に設置したヒーターにより、流体を局所的に加熱する。ヒーター直後に設置したディフューザとレジューサにより、加熱に基づく浮力による加速を抑制し、拡散を促進させることにより流体温度を一様化する。このときの最大流体温度上昇?Tと管内流量Qの間に、Q < 1 mL/min の流量範囲で線形な関係が実験的に得られた。これにより、安価かつ保守の必要性の少ない微小流量計の実用化の可能性を示せた。なお、本流量計は、管内平均流速Um=0まで適用でき、流体の漏れ探知にも使用できる。
著者
村岡 裕由 野田 響 廣田 湖美 小泉 博
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.345-355, 2007-11-30 (Released:2016-09-16)
参考文献数
41
被引用文献数
2

植物の生理生態学が取り組んできた主要な課題の一つは、光合成に必要な資源の獲得と利用を司る形態的機能、および生理的機能と生育環境との関係を明らかにすることである。様々な種について、与えられた生育環境におけるこれらの機能の効率性や変動環境に対する可塑性に着目して研究することにより、個体の成長と物理的環境との関係を作るメカニズム、個体群や群落の中での個体の振る舞いとその適応的意義、さらに群落の維持・更新過程のメカニズムなど、個体から群落、生態系に至るまで、様々なスケールでの生態現象の解明が進められてきた。植物生理生態学の視点は、大気中の二酸化炭素(CO_2)濃度の上昇や温暖化などの環境変動が生態系に及ぼす影響、または生態系の反応の理解においても重要な役割を果たす。生態系の炭素シーケストレーション機能は、その生態系を特徴付ける植物の生理生態的特性に依存するため、CO_2フラックス観測結果の解析や炭素収支のモデルシミュレーション解析における植物生理生態学的視点と知見の貢献は大きい。また、数十m四方から流域、地域、地球スケールでの生態系観測に有効なツールであるリモートセンシングの解析精度の向上には、葉群をなす個葉の生理的特性に加えて樹形や葉群構造への着目が大きく寄与することが新たにわかってきた。本稿では、筆者らが取り組んできた研究を紹介しながら、植物の光合成生産に関わる生理生態学的特性が個体から生態系スケールでの生態現象に果たす役割について考えてみる。
著者
青山 法夫 米山 克也 徳永 誠 南出 純二 小沢 幸弘 山本 裕司 今田 敏夫 赤池 信 天野 富薫 有田 英二 小泉 博義 松本 昭彦
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.24, no.10, pp.2594-2598, 1991-10-01
被引用文献数
2

消化管吻合部狭窄の治療法として,内視鏡的切開およびブジーによる拡大術の適応と限界について検討した.吻合部狭窄35例(瘢痕性26例,癌性9例)を対象とした.瘢痕性狭窄の長さによる狭窄解除率をみると,2cm未満14/15(93.3%),2cm以上3cm未満8/9(88.9%),3cm以上0/2(0%)であった.一方,癌性狭窄は0/9(0%)と効果不良であった.効果不良例13例(瘢痕性4例,癌性9例)の内,癌性3例を除く10例に他の治療を加えた.3例(瘢痕性1例,癌性2例)に手術,7例(瘢痕性3例,癌性4例)に食道ブジー挿管術を施行した.手術では,狭窄が解除出来たのは1例のみで他は試験開腹および合併症死におわった.食道ブジー挿管術は7例全例狭窄を解除でき退院可能であった.皮膚管瘢痕性狭窄1例のみ皮膚瘻孔を形成し手術を要した.食道ブジー挿管術は難治性吻合部狭窄の非観血的治療法として有用であった.
著者
小竹 優範 森田 克哉 中田 浩一 俵矢 香苗 藤森 英希 吉野 裕司 小泉 博志 伴登 宏行 村上 望 山田 哲司
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.441-446, 2005-04-01
被引用文献数
13 10

症例は73歳の男性で, 2000年9月に上行結腸癌にて右側結腸切除の既往あり.2003年10月胆嚢炎疑いにて当科紹介となり, CTで膵頭部に濃染不良の3.6cm大の腫瘤を認め, MRCPで下部胆管・膵管が閉塞し総胆管・主膵管の拡張を認めた.血管造影で下膵十二指腸動脈の強い屈曲・蛇行と濃染像を認め, FDG-PETで膵頭部の腫瘤に強いFDGの集積を認めた.以上より, 転移性膵頭部腫瘤の診断で膵頭十二指腸切除術を施行した.切除標本は十二指腸乳頭部, 膵頭部に5.5×4cm大, 2型の腫瘍を認め, 病理組織学的所見では中分化型腺癌で, 大腸・膵臓ともにCK7で陰性, CK20で陽性を示し, 大腸癌の膵頭部転移と診断した.術後経過は良好で, 術後26日目に退院した.大腸癌の膵転移切除例の本邦報告例は自験例を含め12例であったので報告する.
著者
南出 純二 小泉 博義 青山 法夫 小沢 幸弘 徳永 誠 深野 史靖 森脇 良太
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.27, no.11, pp.2384-2390, 1994-11-01
被引用文献数
7

食道癌集学的治療における術前 Cisplatin, 5-Fluorouracil 併用療法 (以下, CDDP+5FU 療法と略記) の安全性, 直接効果について検討した. 対象は1991年9月から1993年8月までに手術した食道癌症例85例中, 術前 CDDP+5FU 療法を施行した32例 である. Cisplatin 80mg/m^2(day 1), 5-Fluorouracil 800mg/m^2(day 1&acd;4) で3週間を1コースとし, 不変または進行例には手術を行い, 有効例には2コース目を施行した. 副作用は軽度であり手術日程や術後経過に影響を及ぼさなかった. 画像診断では有効11例, 不変17例, 進行4例であった. 病理組織学的診断では軽度の効果以上が18例 (56%) となった. 7例 (28%) のリンパ節に軽度の効果以上の効果がみられた. 術前 CDDP+5FU 療法は副作用が少なく, 術後経過に悪影響を及ぼさず, リンパ節に対する効果も認められた.
著者
内藤 靖彦 ELVEBAKK Arv WIELGOLASKI フランスエミル 和田 直也 綿貫 豊 小泉 博 中坪 孝之 佐々木 洋 柏谷 博之 WASSMANN Pau BROCHMANN Ch 沖津 進 谷村 篤 伊野 良夫 小島 覚 吉田 勝一 増沢 武弘 工藤 栄 大山 佳邦 神田 啓史 福地 光男 WHARTON Robe MITCHELL Bra BROCHMANN Chirstian ARVE Elvebak WIELGOLASKI フランス.エミル 伊村 智
出版者
国立極地研究所
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1994

北極の氷河末端域における生態系の変動は温暖化に強く関連するといわれているがあまり研究はなされていない。とくに今後、北極は4〜5℃の上昇が予測されているので調査の緊急性も高い。本研究では3年間にわたり(1)植生及び環境条件の解明、(2)繁殖過程の解明、(3)土壌呼吸と温度特性の解明、(4)土壌節足動物の分布の解明、(5)人工環境下での成長変化の解明を目的として調査、観測が実施された。とくに気候変動がツンドラの生態系に及ぼす影響を、遷移初期段階である氷河モレーン上に出現する動物、植物の分布、定着、生産、繁殖、移動について研究を行った。調査、観測は海洋性気候を持つスバールバル、ニーオルスンの氷河後退跡地で実施した。初年度は植生及び環境条件の解明を目的として6名の研究者を派遣した。氷河末端域のモレーン帯の植物の遷移過程の研究では、氷河末端域から約50メートル離れたモレーンに数種の蘚類が認められ、これらはパイオニア植物として考えられた。種子植物は100メートル過ぎると出現し、地衣類の出現はむしろ遅いことが明らかになった。また、遷移段階の古いチョウノスケソウ群落は立地、土壌中の窒素量の化学的特性の違いによって7個の小群落に区分された。2年度は植生と環境条件の解明を引き続き実施すると共に、遷移初期段階における植物の繁殖、土壌呼吸と温度特性、土壌節足動物の生態の解明を目的として実施された。現地に6名の研究者が派遣された。観測の成果としては昨年、予備的に実施したスゲ属の生活形と種子繁殖の観察を踏まえて、本年度はムカゴトラノオの無性繁殖過程が調査された。予測性の低い環境変動下での繁殖特性や繁殖戦略について、ムカゴの色、大きさ、冬芽の状態が環境の変化を予測できるという実装的なアプローチが試みられた。パイオニア植物といわれているムラサキユキノシタは生活型と繁殖様式について調査され、環境への適応が繁殖様式に関係しているなど新たな知見が加わった。また、氷河末端域の土壌呼吸速度は温帯域の10%、同時に測定した土壌微生物のバイオマスはアラスカの10%、日本の5%程度であることが始めて明らかにされた。土壌節足動物の分布の解明においては、一見肉眼的には裸地と見なされるモレーン帯にもダニ等の節足動物が出現し、しかも個体数においては北海道の森林よりもむしろ多いなど興味深い結果が得られた。最終年度は2年度の観測を継続する形で、6名の研究者を現地に派遣した。実施項目は氷河後退域における植生と環境調査、土壌と根茎の呼吸調査、および繁殖生態調査が実施された。観測の成果としては植生と環境調査および土壌と根茎の呼吸速度の観測では興味深い結果が得られ、すなわち、観測定点周辺のポリコンの調査では植物および土壌節足動物の多様性が大きいことと、凍上および地温に関する興味深いデータが取得された。また、土壌および根茎の呼吸速度の観測では、実験室内での制御された条件での測定を行い、温度上昇に伴って呼吸速度は指数関数的に上昇するが、5度以上の温度依存性が急に高くなり、これは温帯域のものより高かった。これらを更に検証するためにより長期的な実験が必要であるが、今後、計画を展開する上で重要なポイントとなるものと考えられる。さらに、チュウノスケソウの雪解け傾度に伴う開花フェノロジー、花の性表現、とくに高緯度地域での日光屈性、種子生産の制限要因についての調査では、生育期間の短い寒冷地での繁殖戦略の特性が明らかにされた。初年度および最終年度には、衛星による植物分布の解析し環境変動、北極植物の種多様性と種分化について、ノルウェー側の共同研究者と現地で研究打ち合わせを持った他に、日本に研究者を招聘して、情報交換を行った。最後に3年間の調査、観測の報告、成果の総とりまとめを目的として、平成9年2月27、28日に北極陸域環境についての研究小集会、北極における氷河末端域の生態系に関するワークショップが開催された。研究成果の報告、とりまとめに熱心な議論がなされた。