著者
小川 新吉 古田 善伯 山本 恵三 永井 信雄
出版者
The Japanese Society of Physical Fitness and Sports Medicine
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.45-55, 1973-06-01 (Released:2010-09-30)
参考文献数
24
被引用文献数
2 1

巨大な体格, 豪力の持ち主であると考えられている現役上位力士) (関取) の形態, 機能の測定および調査を行ない, 種々なる検討を試みた。形態的な測定1.関取の平均身長は180.2cmと, 日本人としてはずばぬけて大柄な集団であるが, スポーツ選手の大型化を考えるとき, 特筆すべき特徴とは考えられない。2.体重は平均122.2kgと超重量級で, ローレル指数も平均210.5と異常に近い充実度を示し, この超肥満体に力士の特徴がみられる。身体の軟組織に富む周囲径, 特に腰囲は, 114.9cm, 臀囲は115.7cmと著しく大きく, 皮脂厚 (3部位の合計) も109.9mmと驚くべき肥厚を示し, 力士の体型の特徴は皮脂厚の異常なまでの発達にあることがわかる。機能の測定3.背筋力の平均は181kg, 握力左右平均47.9kgと予想したほど大きくなく, オリンピックの重量挙や投擲選手以下である。筋力の測定方法等に問題があるにしても, 筋力は形態に比べ予想外に発達していないと考えられる。5.垂直とび47.9cm, サイド・ステップ35.1回, 腕立屈伸21.4回と, 体重が負荷となるテストでは体重の影響が問題となり, スポーツ選手としては著しく小さい。6.しかし, 身体の柔軟性や全身反応時間等は肥満体にもかかわらず, さして劣っていない。7.被検力士の平均肺活量は4918.6mlで, 巨体の割には小さい。8.ステップ・テストの評点は平均49.4, 体重増が負担となり, 同年令成人より著しく劣っている。総体して, 形態の発達に比べて, 呼吸循環器系機能の発達が明らかにアンバランスになっていると考えられる。力士の発育・発連9.一部関取の形態につき, 過去4年間の測定結果を追跡調査した結果では, 身長の伸びはほとんどみられないが, 体重, 胸囲の発達は著しく, 特に体重では6~29kgの著明な増大がみられた。10.上位と下位の力士を比較すると, 上位力士は形態, 特に体重, 周囲径が優れており, 機能面では上位と下位の間にそれほど著明な差違は認められない。したがって, 相撲競技では, 形態の大小が勝負に大きく関与していると考えられる。11.以上の結果を総括してみると, 力士は形態の発達には著しい特徴が認められるが, 機能面では, 他種目の一流スポーツ選手と比較し, 伸びが著しく劣っている。これらについては, 伝統的な練習方法や稽古, 生活様式等に考慮すべき問題があると考えられる。謝辞: 本研究は文部省の特定科学研究費, IBP.HA班の研究助成金をえて実施されたことを銘記しておく。なお, 本研究について, 多大の理解と好意を賜った日本相撲協会の武蔵川理事長, 故秀の山監事, さらに直接御協力を願った各部屋の親方, 責任者, 関取衆に感謝の意を表するものである。
著者
江左 篤宣 永井 信夫 井口 正典 池田 智明 大鶴 栄史 井手 辰夫
出版者
社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.78, no.7, pp.1215-1219, 1987-07-20 (Released:2010-07-23)
参考文献数
15

妊娠により水腎症が出現することは200年以上前から知られている. 我々は妊婦30例に対し腎の形態学的変化を無侵襲かつ簡便な超音波断層法を用いて経時的に観察し, また同時に尿化学的検査を行ない, 妊娠が腎に及ぼす影響についても検討した.1) 妊娠中の腎の計測値では健康成人に比べ厚径が増加していた.2) 妊娠中の水腎症の出現は妊娠中期から後期にかけて著明となり, その出現率は71%と高率であった.3) 妊娠中の水腎症の出現は左腎に比べ右腎に程度, 率ともに有意に高かった.4) 水腎症の程度と尿中BMG・NAG値との間に相関性を認めなかった.5) 水腎症の程度と妊娠中毒症の症状の間に関連性はなかった.6) 妊娠により出現した水腎症は分娩後約1カ月で正常に復すると考えられた.超音波断層法によって妊娠により水腎症が高率に出現することが証明された. しかし分娩後の回復は著明であり, 妊娠, 分娩という女性における生理学的環境の変化は腎の形態に一時的に水腎症を招来するものの妊娠中, 分娩後には機能的に影響を及ぼすことは少ないと考えられた.
著者
永井 信 小谷 亜由美 丸谷 靖幸
出版者
日本生気象学会
雑誌
日本生気象学会雑誌 (ISSN:03891313)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3-4, pp.89-99, 2022-11-25 (Released:2022-12-06)
参考文献数
61

春の気候変動と植物季節の対応関係を長期的に評価するためには,気象庁による生物季節観測が行われていない過去におけるサクラの開花季節の記録の発掘(マイニング)は重要な課題である.本研究は,明治から大正期を対象に,教育者である跡見花蹊(あとみ かけい:天保11年 [1840年]〜大正15年・昭和元年 [1926年])の日記からサクラの開花季節の記録をマイニングし,その品質と系統的な誤差を調査した.明治6年(1873年)から大正13年(1924年)の間に,開花日を22年,満開日を33年,それぞれマイニングできた.この期間における開花日や満開日は,現在と比べて10日程度遅かった.日記の記録は,観察場所や観察者の違い・不連続な観察日・サクラの種や個体差を要因とした系統的な誤差を少なくとも数日程度含むと考えられる一方,植物季節に対する気候変動の影響を明らかにするための有用性が示された.
著者
玉川 一郎 吉野 純 加野 利生 安田 孝志 村岡 裕由 児島 利治 石原 光則 永井 信 斎藤 琢 李 美善 牧 雅康 秋山 侃 小泉 博
出版者
システム農学会
雑誌
システム農学 (ISSN:09137548)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.129-136, 2008-04-10
参考文献数
6
被引用文献数
1

岐阜大学21世紀COE「衛星生態学創生拠点―流域圏をモデルとした生態系機能評価―」(代表:村岡裕由 平成16年度~20年度)ではプログラムの中心的課題として、岐阜県高山市の大八賀川流域を対象に炭素吸収量などの生態系機能を面的に評価する研究を行っている。対象地域の代表的植生を示す場所にある2つの重点的観測サイト(スーパーサイト)での現地観測で得られた結果を用いて、陸面モデル NCAR LSMを対象地域に適した形に改良し、衛星リモートシンシングによって得られた土地利用などのデータを取り込み、気象モデルMM5と結合して流域での生態系機能評価を行うという手順を考え研究を行っている。そこでは生態系プロセス研究と衛星リモートセンシング、数値モデルの3つの研究分野の研究者がそれぞれの知識や技術を出し合い、相互理解を深めつつ協力して研究を進展させている。完成に近づいた現在の姿を報告する。
著者
斎藤 琢 永井 信 村岡 裕由
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.243-252, 2014-11-30

急速な気候変動が顕在化した現在において、陸域生態系の炭素収支の時空間変動(炭素動態)を地域から地球規模で広域的に高精度に評価することが「環境科学」に関連する様々な分野で期待されている。リモートセンシングは、様々な時間・空間スケールで陸域生態系の炭素動態に関わる物理量を推定可能であり、陸域生態系の炭素収支の現状診断と将来予測の高度化に貢献している。本稿では、陸域生態系の炭素収支の現状診断と将来予測におけるリモートセンシング観測の期待と課題について、特に、リモートセンシングによる光合成量・光合成能の推定と葉群フェノロジーの推定およびそれらの炭素動態研究への応用について概説した。いずれの研究の発展においても、多地点に展開する生態系サイトで得たリモートセンシング観測情報や関連する生態学的な物理量に関する知見の集積・統合(観測ネットワーク化やデータベース化)および研究者コミュニティの連携が必要不可欠であり、生態学者の更なる積極的な参加が強く望まれる。
著者
永井 信二
出版者
愛媛大学
雑誌
愛媛大学農学部演習林報告 (ISSN:04246845)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.1-8, 2004-03-26

2003年の8月から10月にかけて,四国におけるオオセンチコガネの分布調査を行った。調査地63か所のうち,24か所で本種の生息を確認し,合計1,185頭の個体を採集した。このうち,今回新たに生息を確認した場所は,愛媛大学農学部附属演習林,楢原山,音無山および笹山(以上すべて愛媛県)である。結果として,四国内に主要な3つの分布域があることが確認された。それらは相互に地理的に隔離された四国北西部,南西部および東部であった。各地域個体群の分布域は,その糞が主要な餌となる野生の鹿の分布と深く関連しているようであった。ついで,四国各地の個体群の体色の特徴を,新たに考察した紫がかった青色(A)から緑色(F)を経て瑠璃色がかった赤色(Q)までの17色に区別した円形色彩モデルを用いて解析した。その結果,四国全体では,色彩IからPの範疇に含まれ,四国北西部はK(濃い赤銅色を帯びた明るい緑色),L(濃い金緑色光沢を伴う紫を帯びた赤色),M(弱い金緑色の光沢を伴った紫色を帯びた赤色),南西部はL,M,N(弱い金緑色の光沢を伴った濃い紫色を帯びた赤色),東部はJ(赤銅色を帯びた明るい緑色),K,Lを中心とした色彩分布を示した。
著者
国方 聖司 加藤 良成 永井 信夫 八竹 直
出版者
泌尿器科紀要刊行会
雑誌
泌尿器科紀要 (ISSN:00181994)
巻号頁・発行日
vol.28, no.7, pp.p861-865, 1982-07

Seventy-two patients suffering from urethral stricture were treated at our clinic between May 1975 and December 1980. The clinical findings are reported. The common causes of the urethral stricture were trauma and infections, but iatrogenic (postoperative) cases have recently increased. Optical urethrotomy provided greater dilatation of the urethral stricture than the internal urethrotomy done using a Meisonneuve internal urethrotome. Optical urethrotomy is recommended for the treatment of urethral strictures because of the high success rate and safety.
著者
小川 新吉 古田 善伯 山本 恵三 永井 信雄
出版者
日本体力医学会
雑誌
体力科學 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.45-55, 1973-06-01
被引用文献数
1

巨大な体格、豪力の持ち主であると考えられている現役上位力士)(関取)の形態、機能の測定および調査を行ない、種々なる検討を試みた。形態的な測定、1.関取の平均身長は180.2cmと、日本人としてはずばぬけて大柄な集団であるが、スポーツ選手の大型化を考えるとき、特筆すべき特徴とは考えられない。2.体重は平均122.2kgと超重量級で、ローレル指数も平均210.5と異常に近い充実度を示し、この超肥満体に力士の特徴がみられる。身体の軟組織に富む周囲径、特に腰囲は、114.9cm、臀囲は115.7cmと著しく大きく、皮脂厚(3部位の合計)も109.9mmと驚くべき肥厚を示し、力士の体型の特徴は皮脂厚の異常なまでの発達にあることがわかる。機能の測定、3.背筋力の平均は181kg、握力左右平均47.9kgと予想したほど大きくなく、オリンピックの重量挙や投擲選手以下である。筋力の測定方法等に問題があるにしても、筋力は形態に比べ予想外に発達していないと考えられる。5.垂直とび47.9cm、サイド・ステップ35.1回、腕立屈伸21.4回と、体重が負荷となるテストでは体重の影響が問題となり、スポーツ選手としては著しく小さい。6.しかし、身体の柔軟性や全身反応時間等は肥満体にもかかわらず、さして劣っていな
著者
谷本 洋 永井 信夫
出版者
一般社団法人 電気学会
雑誌
平成29年電気学会電子・情報・システム部門大会講演論文集, C部門
巻号頁・発行日
pp.1321-1326, 2017-09-06

線形回路において正弦波定常状態を扱う場合,その電圧・電流は2次元実ベクトル空間のベクトルと考えられることはよく知られている.一方,交流理論では電圧・電流を複素数(フェーザ)として取り扱い,これらがベクトルであるとの認識が薄い.そのため,特に複素電力における無効電力の物理的意味づけがわかり難くなっている.本報告では電圧と電流をベクトルと考えて,電力をこれらの双一次形式と捉えることにより,複素電力の物理的な理解が深まり,電力には有効電力と無効電力以外の成分も存在することを示した.
著者
井口 正典 辻橋 宏典 永井 信夫 片岡 喜代徳 加藤 良成 郡 健二郎 栗田 孝 八竹 直
出版者
社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.76, no.3, pp.293-302, 1985
被引用文献数
1

食事が尿中排泄物質 (とくに蓚酸) に及ばす影響について検討した.<br>1) 健康成人男子9名に16時間の絶食の後普通食を与えると, Ca排泄量は食後2~4時間目にピークをしめし, 蓚酸は食後4~6時間目にはじめて有意に増加した. 食事負荷による食後6時間の増加分は, Ca 38.4%, 蓚酸11.8%, 尿酸7.1%, Mg 27.8%で, 普通食が尿中蓚酸排泄量に及ぼす影響はCaに比べてはるかに少なかった.<br>2) 健康成人男子11名に一定の朝食と, 昼食として標準食, 高蓚酸食 (標準食+ホウレンソウの油イタメ150g), 高蓚酸高蛋白食を負荷した. 高蓚酸食負荷により蓚酸排泄量は標準食の約2倍増加したが, 逆にCa, Mg排泄量は標準食の約半分に減少した. 高蓚酸高蛋白質食を負荷すると, 高蓚酸食負荷時に比べてCa排泄量は有意に増加し, 逆に蓚酸排泄量は有意に減少した.<br>3) 上記と同じ高蓚酸高蛋白食を absorptive hypercalciuria と診断した男子結石患者13名に負荷したところ, Ca排泄量は対照群より著明に増加していたが, 蓚酸排泄量には差がなかった.<br>以上の結果ならびに既報の結石患者の食生活調査成績 (日本栄養・食糧学会誌37:1~7, 1984) をもとに, 再発予防法としての食事指導の実際について具体的に述べた.
著者
永井 信 中屋 俊介 櫻庭 光夫 飯田 健一 今村 哲理 須賀 俊博
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.666-672, 2004 (Released:2005-03-30)
参考文献数
9

当院健診センターは平成10年度より, 胃バリウム検査に加えて希望者を対象とした血清ペプシノゲン値の測定を開始した。過去5年間の併用法発見胃癌数は94例であり, 平均胃癌検出率はバリウム法で79.8%, ペプシノゲン法で71.3%となり, バリウム法が高かった。一方, 両検査法が陽性を示したものは51.1%, バリウム法のみ陽性癌は28.7%, バリウム法陰性でPG法のみ陽性癌は20.2%であり約半数の48.9%がどちらか一方で拾い上げられていたことから, 両法は相補的な関係にあると思われ, 併用法の有用性が再確認できた。PGレベル区分の検討では陽性反応的中率でレベル2以上, 経年変化で特に陰性からレベル2, 4への移行群で高く, より高危険群の設定が可能と思われた。
著者
楊 瑞芳 土方 浩美 五十嵐 清人 黒須 悦樹 永井 信司 田川 宏
出版者
東京女子医科大学学会
雑誌
東京女子医科大学雑誌 (ISSN:00409022)
巻号頁・発行日
vol.55, no.6, pp.553-553, 1985-06-25

東京女子医科大学学会第261回例会 昭和60年2月21日 中央校舎1階会議室
著者
長谷山 美紀 永井 信夫 三木 信弘
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.76, no.12, pp.1714-1724, 1993-12-25
被引用文献数
23

入力信号が未知のモデルについて,周波数重みを付けたモデル同定を可能とするARMA4線格子形フィルタが既に提案され,その応用が重要であることが述べられているが,乗算器個数が多いことが欠点とされていた.そこで本論文では,このような同定法が可能な乗算器個数の少ないARMA格子形フィルタの実現法を提案する.乗算器個数の削減は,直接計算量の削減につながり,特に適応処理を行う場合には重要である.本論文では,2種類のフィルタの実現法を提案している.提案されている2種類のARMA格子形フィルタは,実現に用いられる予測誤差の違いにより異なった性質をもつ.本論文では,提案する二つのフィルタおよび乗算器個数の多い従来のフィルタについて,各々を用いる場合にどのような点が異なるかを示す.最後に,本論文で提案するフィルタおよび従来のフィルタは,得られたラティス構造を保ったまま,信号合成フィルタとして用いることができることから,そのような応用を行った場合の係数感度についての考察を実験により行う.実験より,乗算器個数の削減による感度特性の劣化が生じていないことを確認する.