著者
村松 照男
出版者
Meteorological Society of Japan
雑誌
気象集誌. 第2輯 (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.259-272, 1986 (Released:2007-10-19)
参考文献数
17
被引用文献数
13 17

レーダーと衛星で決定した台風眼(T8019, WYNNE)の移動軌跡上にトロコイダル運動による顕著な周期変動が観測された。周期は5~8時間,最大振幅は23kmであった。周期の減少とともに振幅も減少した。レーダーエコーの解析の結果,台風眼の中心は台風系全体の中心とは一致せず,約20km偏位し系の中心に対し反時計回りに回転していることが明らかとなった。この間,外側と内側の eye wal1の直径が各々260kmと30kmである二重眼構造と,それに対応する風速分布の二重極大が観測された。特に,気圧と風速場で楕円状の循環が見られ,その結果としての矩形状エコー構造が外側 eye wal1の内側で観測された。この矩形と楕円状循環は台風系の中心に対しトロコイダル周期と同周期で,外側 eye wal1に内接しながら回転していた。台風眼は楕円の一方の焦点を追うように移動し,この結果としてトロコイダル軌跡となった。しかしながら,なぜ眼が系の中心から偏れるのかはまだ明らかとなっていない。
著者
村松 照男
出版者
Meteorological Society of Japan
雑誌
気象集誌. 第2輯 (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.64, no.6, pp.913-921, 1986 (Released:2007-10-19)
参考文献数
17
被引用文献数
33 37

明瞭な多角形眼が台風8019のPPIエコー上で観測された。直径30kmの眼は4角形から6角形までその形を変え,台風眼中心に対して半時計回りに回転していた。回転周期は5-6角形で41-43分,4角形で47-50分と回転速度が速い(周期が短い)ほど多角形の角数が増加した。多角形眼は形状を変えながら約15時間観測され,5角形が最も頻度が高く,111分という長寿命であった。逆に,4角形は不安定で寿命は12分前後で,頻度も最もひくく,3角形や7角形は観測されなかった。多角化は眼の壁雲の最も内側の数km幅の狭い領域で起こっていた。眼の中の小エコーセルの追跡の結果,小エコーセル(眼の中の気塊)は等角速度運動をしており,多角形に変形した部分はそれよりやや速い速度で回転していた。多角形眼の現象は水平シヤーの大きい,眼の中の下降流と眼の壁雲の上昇流領域の境界で起こり,境界面の不安定を示唆する多角形の各辺の波打ち現象がしばしば見られた。この現象は発達した台風(ハリケーン)で明瞭な二重眼構造をもつ,中心気圧940mb前後,眼径が30-50kmの場合で多く見られた。
著者
村松 照男
出版者
公益社団法人 日本気象学会
雑誌
気象集誌. 第2輯
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.77-90, 1983
被引用文献数
51

成熟した台風における眼の直径及び絹雲の天蓋(cirrus canopy)の日変化が, GMSの画像上で観測された。台風とともに動く矩形の中に占めるTBB(等価黒体温度)の量の変化をTBB≦-70&deg;C,-7&deg;<TBB≦-50&deg;C,-50&deg;<TBB≦-30&deg;C,-30&deg;<TBB-0&deg;Cの各しきい値で定量的に求めた。TBBが-70&deg;C以下の領域では地方時の6~7時半に極大があらわれ,18~21時に極少となった。極大の起る時刻は-50&deg;TBB≦-30&deg;Cの領域で16~18時,-30&deg;TBB≦0&deg;Cの領域では21時以後となり,TBBのしきい値の上昇とともに遅れている。衛星で観測された眼径は朝の鋭い極少,午後のなだらかな極大を示し,TBB≦-70&deg;C領域の変化と逆位相であった。対流の日変化における早朝の極大に帰因する絹雲の吹き出しによる,拡大と見かけ上の昇温のためTBBの分布にも日変化が現れ,眼径の変化となったことが解析された。<br>また,台風が島を通過する際,cirrus canopyは減少し,また,海洋性の極大に加え,午後の極大があらわれ,二重極大の現象が解析された。