- 著者
-
東 秀憲
- 出版者
- 金沢大学
- 雑誌
- 若手研究(B)
- 巻号頁・発行日
- 2004
昨年度までに高温高圧水に対する無機塩の溶解度の測定を目的として流通型の装置を用い,無機塩として塩化ナトリウム(NaCl)と塩化カリウム(KCl)の溶解度を測定してきた.そこで今年度は.無機塩として1価のカチオンによる違いの変化をみるため塩化リチウム(LiCl)を,価数の違いによる変化をみるために塩化カルシウム(CaCl_2)を選択し,それらの溶解度を測定した.実験は,温度350-400℃、圧力6-14MPaの条件下で行った.さらに,Pitzerらの状態方程式を用いて得られた溶解度データの相関を行い,それらの適用性について検討した.以前,本研究室において松本らにより同じ装置を用いて測定された塩化ナトリウムおよび塩化カリウムの溶解度は,固気平衡領域であり,一定圧力において温度の上昇とともに溶解度は減少するという傾向を示した.しかし,本研究で測定した塩化リチウムおよび塩化カルシウムの溶解度は,一定圧力において温度の上昇とともに溶解度は増加するという異なる傾向を示した.Pitzerらによると,H_2O-NaClの気液平衡領域では,一定圧力において温度の上昇とともに溶解度は増加するという同様の傾向を示しているため,測定条件下において気液平衡になっている可能性が示唆された.また,得られた塩化リチウムおよび塩化カルシウムの溶解度データをPitzerの状態方程式に基づく相関式により相関を行った.状態方程式中のパラメータを最適化することで,相関結果は,塩化リチウムおよび塩化カルシウムの気液平衡領域で各温度,圧力において良好な結果を与えた.