著者
坂井 文彦
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.118, no.8, pp.1005-1010, 2015-08-20 (Released:2015-09-04)
参考文献数
5
被引用文献数
1

頭痛は頭部の痛みであり, 耳鼻咽喉科は鼻腔・副鼻腔・内耳, 咽頭部など頭部の約3分の2の領域を対象とするため, 頭痛との関係が深い. 一次性頭痛 (慢性頭痛) の代表である片頭痛, 緊張型頭痛, 群発頭痛のいずれも, 耳鼻咽喉科的症状が混在する. 片頭痛は前駆症状や随伴症状として時に回転性めまいがある. 緊張型頭痛にはいわゆる “ふわふわめまい” が多く, 耳鳴りもあると耳鼻咽喉科受診となる. 患者さんは「頭痛もあったが, 耳鼻咽喉科の症状があった」ために耳鼻咽喉科を受診する. 群発頭痛とその類縁疾患は三叉神経・自律神経性頭痛としてまとめられている. いずれも片側性頭痛で, 痛みに三叉神経が関与するとともに随伴症状に自律神経, 特に副交感神経が関与している. 頭痛と同側に鼻汁, 鼻閉, 流涙が随伴するのが特徴であり, 三叉神経と翼口蓋神経節との神経回路が病態に重要な役割を果たしていると考えられている. 耳鼻咽喉科疾患に二次的に生ずる頭痛としては耳, 鼻腔, 副鼻腔の炎症性疾患が頭痛を主訴として発症することがあり, 特に小児では注意を要する.
著者
東 邦彦 坂井 文彦 五十嵐 久佳 田崎 義昭
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.13, no.5, pp.361-366, 1991-10-25 (Released:2009-09-03)
参考文献数
19

既往に片頭痛を持つ若年者に脳梗塞が発症した4例につき, 脳梗塞の危険因子としての片頭痛の意義につき検討した.症例1はmigraine with auraの発作中, 脳梗塞が発症したと考えられ, その病態としては前兆の原因となる脳血管攣縮が遷延し脳梗塞に移行したと考えられた.症例2~4の3例はmigraine without auraの患者で, 脳卒中発作は発症様式, CT, MRI所見よりはいずれも脳塞栓症と診断され, 脳塞栓症に頭痛が前駆あるいは随伴した可能性が考えられた.そのうち2例は妊娠中の発症であった.migraine without auraに脳梗塞が発症した機序としては, 片頭痛が脳梗塞に移行したというよりも片頭痛にもとづく血小板凝集能の亢進による5HT, ノルエピネフリンの放出, エストロゲソをはじめとする性ホルモンの変動による凝固系の亢進などを介して脳梗塞の危険因子となった可能性が考えられた.
著者
坂井 文彦
出版者
医学書院
雑誌
神経研究の進歩 (ISSN:00018724)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.343-349, 2002-06-10

国際頭痛学会分類の診断基準を使用した慢性頭痛の大規模な疫学調査が日本でも行われ,片頭痛の有病率は15歳以上の人口の8.4%と多いことが明らかにされた。片頭痛のために日常生活がかなり犠牲になっている人も多く,約74%の人がかなりの支障度に悩まされている。その割に,片頭痛に対する認識度は低く,定期的に医療機関を受診している人は全体の2.7%にすぎない。片頭痛により患者が大きな犠牲を強いられていることは社会にとっても大きな損失であり,経済的損失としても大きい。最近,片頭痛治療薬に大きな進歩がみられている。新しい薬剤を正しく使用するために,医療側,患者側いずれの認識も高まることが必要である。
著者
小田口 浩 若杉 安希乃 伊東 秀憲 正田 久和 五野 由佳理 金 成俊 遠藤 真理 及川 哲郎 坂井 文彦 花輪 壽彦
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.58, no.6, pp.1099-1105, 2007-11-20 (Released:2008-09-12)
参考文献数
9
被引用文献数
1 1

長年にわたる先人の経験に基づいて形成されてきた呉茱萸湯証を再考した。84名の慢性頭痛患者に対してツムラ呉茱萸湯エキス (TJ-31) 7.5g/日を4週間投与した。投与後に患者がレスポンダーか否か判定を行った。投与前に43項目からなる漢方医学的所見をとり, レスポンダーか否かを目的変数にした判別分析 (厳密に言えば数量化II類) を施行した。最終判定を行った80名のうち57名がレスポンダー, 23名がノンレスポンダーであった。ステップワイズ変数選択により「 (他覚的) 足冷」, 「胃内停水」, 「胸脇苦満」, 「臍傍圧痛」, 「腹部動悸」の5項目が有用な項目として抽出された。これらを使用した判別分析の誤判別率は35%であった。特に23名のノンレスポンダーのうち20名を正確に判別することができ, この5項目は呉茱萸湯証でない者を除外するのに役立つと考えられた。経験的に形成された呉茱萸湯証に, 「臍傍圧痛」や「腹部動悸」といった徴候も加えることでさらに診断の正確度が増す可能性が示唆された。
著者
青木 信平 五十嵐 久佳 坂井 文彦 神田 直 田崎 義昭
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.175-179, 1988-04-25 (Released:2009-09-03)
参考文献数
11
被引用文献数
1

脳卒中急性期の患者を対象に血清K値の変動を観察した.対象は発症後24時間以内に来院した脳卒中患者161例 (脳出血96例, 脳梗塞65例) である.脳出血患者の平均血清K値3.63±0.05mEq/l (SE) は脳梗塞の平均値4.02±0.05mEq/lよりも有意に低値を示した (p<0.01).脳出血患者を意識レベルによりunresponsive群とresponsive群とに分け検討すると, 血清K値はそれぞれ3.43±0.76mEq/lと3.79mEq/lであり, unresponsive群が有意に低かった (p<0.01).また, 死亡群の平均血清K値3.51±0.06mEq/lは生存群の平均値3.72±0.06mEq/lよりも低く (p<0.05), 重症例では血清K値が低下することが示された.血漿エピネフリン濃度および血糖値と血清K値の間には有意な負の相関がみられ, 低K血症の発現は, ストレスに起因したKの細胞内への流入の可能性が考えられた.
著者
竹内 昭博 土橋 かおり 島澤 謹江 五十嵐 久佳 坂井 文彦 白鷹 増男 池田 憲昭
出版者
一般社団法人 日本医療情報学会
雑誌
医療情報学 (ISSN:02898055)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.319-326, 2000 (Released:2017-08-21)
参考文献数
7

慢性頭痛の自覚症状を把握するために「頭痛日記」が臨床現場で用いられている.「頭痛日記」に記載されたグラフ(頭痛曲線)の面積(頭痛の強さの積分値)を頭痛量と定義し,その計測を画像解析の技術を用いて自動的に行うシステムを開発した.同時に,頭痛曲線の特徴を表すパラメータ(頭痛の最大強度や持続時間,発作回数,日差変動等)を計測・算出した.本システムは,MS-Windows NT/98/95のインターネットエクスプローラ(IE4.1以降)上で稼働する.システムは,頭痛日記画像ファイルの入力や計測結果の集計・提示を担うHTMLファイル(HTML+VBScript,TKS.HTM 20 KB)と,WWWブラウザから画像ファイル名と輪郭線のRGB値を受取り,画像の二値化・抽出・計測を行うActive Xコントロール(TKS.OCX 100 kB,Microsoft VC++6.0)とから構成されている.自動計測した頭痛量は病状をよく反映しており,頭痛を定量的に把握するための一指標として,頭痛量が有用と考える.なお,本システムは,http://info.ahs.kitasato-u.ac.jp/tks/tkssetup.htmからダウンロード可能である.
著者
飯塚 高浩 神田 直 稲福 徹也 畑 隆志 坂井 文彦
出版者
The Japan Stroke Society
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.16, no.4, pp.239-243, 1994

降圧薬の投与開始後短期間のうちに発症した脳梗塞について検討した.対象は降圧薬の服用開始後1ヵ月以内に発症した脳梗塞9例であり, 年齢は48歳から83歳, 平均66.7±10.5歳である.服用開始後発症までの期間は, 5例が7日未満であり, 平均10.1±8.6日.基礎疾患は高血圧に加え, 4例で糖尿病, 1例で心房細動を認めた.1例を除き全例初回発作であった.降圧薬の種類はCa拮抗薬が8例と最も多く, うち4例はβ遮断薬, ACE阻害薬など2種以上の降圧薬を初回より併用し, 1例は3剤同時開始例であった.また1例は単剤ではあるが高齢者に対して初回より常用最上限が投与され翌日の発症であった.責任病巣は, 放線冠など穿通枝領域が6例と最も多く, 皮質枝領域が2例, 境界領域が1例であった.機能予後は, 7例は独歩, 2例は車椅子であった.降圧薬の投与に際しては, 投与量に留意し, 原則として, 単剤, 少量から開始すべきであると考える.