著者
東海林 幹夫 玉田 潤平 岡本 幸市 高玉 真光 平井 俊策
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.79-84, 1985

傍正中視床, 中脳梗塞の1例を報告した.症例は, 46歳男性で, 1) 動揺する過睡眠, 行動異常.2) 上下方向注視麻痺.3) 動揺する瞳孔散大・不同, 対光反射低下.4) 四肢麻痺 (左>右).両側病的反射.5) 知覚障害.6) 左顔面神経麻痺.7) 尿便失禁.8) 自律神経症状.9) 痴呆.10) 不随意運動を呈した.頭部CT像では両側視床・右中脳に蝶形の限局性低吸収域を認めた.椎骨動脈血管写では, 右脳底交通動脈の閉塞を認め, 傍正中視床・中脳梗塞と診断した.文献的考察を行ない, 傍正中視床・中脳梗塞の特殊性及び, akinetic mutismとの違いを指摘した.
著者
東海林 幹夫
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 : CLINICAL NEUROLOGY (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.7, pp.467-475, 2008-07-01
参考文献数
48
被引用文献数
1

先進各国とアジア諸国では人口の高齢化とともに認知症が爆発的に増加している.世界では2,430万人,米国では400万人,本邦でもすでに200万人を超しており,少子超高齢化時代を迎える30年後には人口の11%,400万人と推計されている.未だに根本的な治療法はなく,認知症は早急に解決すべき国民の医療・福祉の最重要課題である.この認知症の多くの原因がAlzheimer病(AD)である.本稿ではADの臨床症状と経過について述べた.新しく標準化されつつある診断基準や神経心理試験をまとめ,近年の病態解明に基づいた診断の進歩とA&beta; oligomerを対象とした新たな治療への方向性について紹介した.<br>
著者
中村 琢洋 瓦林 毅 清野 祐輔 東海林 幹夫
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.7, pp.383-386, 2017 (Released:2017-07-29)
参考文献数
7
被引用文献数
1

症例は家族歴のない17歳男性である.腕立て伏せを中心とした筋力トレーニングを開始した数日後より,左上肢の感覚障害と運動障害を来し当科紹介受診となった.神経学的には左上肢に広範囲な筋力低下と橈側の感覚障害を認めた.Magnetic resonance neurography(MRN)で腕神経叢に信号の左右差を認め,左腕神経叢障害が疑われた.神経伝導検査では腕神経叢障害のみでは説明のつかない広範な障害を認め,遺伝学的検査により遺伝性圧脆弱性ニューロパチーの診断に至った.軽度の労作や圧迫によるニューロパチーでは,家族歴が無くとも本疾患を鑑別する必要がある.