著者
石井 学 阪本 亘 東郷 香苗 中澤 徹 島﨑 聡立 田中 真衣 大手 辰哉 松澤 寛
出版者
一般社団法人 レギュラトリーサイエンス学会
雑誌
レギュラトリーサイエンス学会誌 (ISSN:21857113)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.27-41, 2021 (Released:2021-01-31)
参考文献数
59

医薬品開発におけるリアルワールドデータ (RWD) およびリアルワールドエビデンス (RWE) の活用は, 開発の効率化, 患者の新薬へのアクセス向上, 二次利用データの活用による医療機関側のデータ収集の負担軽減など, さまざまな立場でのメリットが期待される. 一方で, RWD/RWEの承認申請での受け入れ可能性は日米を含むいずれの国においても不明確な点が多い. そこで, 日米の規制当局におけるRWD/RWEに関する規制と基盤整備プロジェクトおよび承認申請でのRWE活用事例について調査した. 規制や基盤整備プロジェクトは, 日本では未承認薬や適応外使用に関するもの, 市販後の安全対策を目的としたものおよびレジストリデータ活用に関連する取り組みがみられた. 一方, 米国では, FDAから承認申請へのRWD/RWE活用を評価するための枠組みが示されていた. また, FDAは製薬や医療データベース分野の民間企業やアカデミアと協業して, RWD/RWEの活用の可能性や懸念点を検討するプロジェクトを実行していた. FDAへの承認申請でRWEがエビデンスとして採用・不採用となった事例からは, エビデンスとしての適切性や信頼性が問われる点が明らかになった. また, 米国ではレジストリデータ, もしくは電子健康記録 (EHR) データにもとづく事例が認められたが, 日本ではレジストリデータが主に活用されていた. わが国において承認申請へのRWD/RWE活用を促進するためには, 多様なデータソースを利用できる環境整備や, 信頼性のあり方の共通目線をもつことが重要である.
著者
前田 章太郎 東郷 香苗 石黒 武蔵 井上 貴之 坂本 武彦 菅野 公寿 近藤 充弘
出版者
一般社団法人 日本臨床薬理学会
雑誌
臨床薬理 (ISSN:03881601)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.167-175, 2019-07-31 (Released:2019-08-24)
参考文献数
33

Background: The use of big data/real-world data (BD/RWD) is expected to be a new option for evidence generation in drug development. Pharmaceutical companies are considered to be a group of key drivers to promote widespread use of BD/RWD in Japan. However, little is reported about the current status of the use of BD/RWD for drug development in Japan.Objective: This study was conducted to reveal the current usage of BD/RWD by pharmaceutical companies in Japan and their current organization structure, with the aim to gain insight on the challenges and future perspective of BD/RWD in Japan.Methods: A questionnaire survey was conducted on 66 pharmaceutical companies affiliated with Japan Pharmaceutical Manufacturers Association from 16 to 31 October 2018. The survey consisted of two parts: Questionnaire 1 investigated the current usage of BD/RWD in drug development in Japan, and Questionnaire 2 investigated the current organization structure.Results: Of 52 companies that responded to Questionnaire 1, 30 companies (57.7%) were currently using BD/RWD for drug development in Japan for various purposes, 29 of which (96.7%) planned to continue using BD/RWD. Of 28 companies that responded to Questionnaire 2 and currently using BD/RWD, 9 companies (32.1%) had established divisions or organizations for internal management of BD/RWD, and 14 companies (50.0%) had standard operation procedures or guidance for handling legal and regulatory aspects associated with the use of BD/RWD for drug development in Japan.Conclusion: BD/RWD is currently used for various purposes in drug development in Japan. However, the proportion of companies currently using BD/RWD for drug development is limited to approximately 50%. Proactive involvement of pharmaceutical companies toward the use of BD/RWD for drug development in Japan together with further industry-government-academia harmonization for environment improvement are awaited.
著者
東郷 香苗 川松 真也 木口 亮 今井 康彦
出版者
一般社団法人 日本薬剤疫学会
雑誌
薬剤疫学 (ISSN:13420445)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.19-30, 2019-03-31 (Released:2019-05-17)
参考文献数
55
被引用文献数
1 3

医薬品開発におけるエビデンス創出はこれまで臨床試験に偏っていたが,そのアプローチにはもっと選択肢があるべきであり,リアルワールドデータ (RWD) がその役割を果たすことが期待される.ICH GCP リノベーションでも,多様な試験デザインとデータソースの選択肢を持つこと,患者に画期的な新薬を早く提供するために早期承認申請をサポートすることが挙げられている.本邦においても,条件付き早期承認制度や改正GPSP 省令で医療情報データベースや患者レジストリ等の活用が可能であることが明記された.本稿では,医薬品開発における RWD の活用として,① 承認申請データへの活用, ②臨床試験計画および患者リクルートメントへの活用,③ Electronic Health Record をデータソースとした臨床試験データの収集,④ 臨床試験の評価や診断への活用,⑤ 開発戦略,薬価・アクセス戦略への活用についてまとめる.それぞれの活用場面で課題があり,インフラと規制環境の整備が望まれるものの,それを待つことなく医薬品開発の現場でRWD の活用が進むことに期待したい.