著者
上嶋祐紀 内山彰 山口弘純 東野輝夫
雑誌
研究報告ユビキタスコンピューティングシステム(UBI)
巻号頁・発行日
vol.2014-UBI-41, no.32, pp.1-8, 2014-03-07

本研究では都市部における GPS を用いた高信頼な端末の存在領域推定を目標に,都市部の 3 次元モデルを利用した手法を提案する.提案手法では,各地点と各 GPS 衛星の間に障害物が存在する状態 (NLOS:None-Line-Of-Sight) であるか,または存在しない状態 (LOS:Line-Of-Sight) であるかを事前に計算し,フィンガープリントとする.携帯端末が受信した GPS の Signal to Noise Ratio (SNR) から LOS/NLOS を学習データに基づき判定し,その判定結果とフィンガープリントに応じて各地点に端末が存在している尤度 (存在尤度) を決定する.しかし,フィンガープリントとのマッチングのみではフィンガープリントの境界付近において安定した結果が得られない場合がある.そこで,提案手法では短期間の SNR 分布に対する統計量から端末の移動に伴う LOS/NLOS の切り替わりを検知する.これによって,フィンガープリントの境界を通過した場合に切り替わり後の地点の存在尤度を一時的に高めることができ,安定した結果が得られる.フィンガープリントの境界通過検知について大阪大学構内で実験を行った結果,検知率,正解率はともに高いことがわかり,平均を用いた場合は検知率は 97%,正解率は 95%,遅延時間は 3.5秒,変化量を用いた場合は検知率は 84%,正解率は 98%,遅延時間は 1.9秒となることがわかった.
著者
前川勇樹 内山彰 山口弘純 東野輝夫
雑誌
研究報告高度交通システム(ITS)
巻号頁・発行日
vol.2014-ITS-56, no.17, pp.1-8, 2014-02-27

本稿では,快適な鉄道利用を実現するため,鉄道旅客の乗車車両および各車両の混雑状況を推定する手法を提案する.提案手法は,乗客の持つ携帯端末が受信した近隣端末の Bluetooth シグナルをサーバに集約し,各端末間で観測された RSSI から,それらが同じ車両に存在する確率 (同一車両確率) および端末間の混雑確率を算出する.次に,得られた同一車両確率および一部の端末の (信頼度の高い) 乗車車両情報を用いて全端末の乗車車両を推定し,その結果と端末間の混雑確率を用いて車両毎の混雑を推定する.この際,電車内の乗客移動は一般にあまり見られないことを利用し,同一車両確率を継続的に更新することで,乗降車が発生しても高精度かつ迅速な推定を実現する.大阪都市部における 4 路線において 259 分間に渡り収集したデータを用いて提案手法の評価を行った結果,16 名の各車両位置を精度 83%,車両毎の混雑の有無を F 値 0.75 で推定できることがわかった.
著者
中村笙子 廣森聡仁 山口弘純 東野輝夫 山口容平 下田吉之
雑誌
マルチメディア、分散協調とモバイルシンポジウム2013論文集
巻号頁・発行日
vol.2013, pp.1995-2007, 2013-07-03

各世帯における節電やピークシフトの達成のため,電力の売買や蓄積,生成が可能なスマートホームが導入されつつあり,電力消費を伴う家庭行動を効率化することで,電力コストの削減が期待できる.しかし,居住者の都合を無視し,電力コストを削減するためだけにピークシフトを強いると居住者の生活の質を下げかねない.そのため,電力コストの削減と生活の質の維持を両立できるような節電方法を居住者に提示し,無理のない節電を実現できることが望ましい.本研究では,スマートホーム一世帯を対象とし,そこに居住する人や配置された家電の電力消費モデルを提案する.さらに,このモデルを利用し,人の行動と家電の稼働に対し,電力コストと生活満足度を最適化するような行動スケジューリング手法を提案する.加えて,ユーザの嗜好をより詳細に反映するためのフィードバックシステムと,ユーザが行った操作から,スケジュールに対する要望を汲み取るためのユーザインタフェースも提案する.評価実験では,電力コストを抑え,かつ生活満足度の高いスケジュールを導出した.また,フィードバック操作により,ユーザの意図を反映したスケジュールが導出されることを確認した.
著者
池田和史 服部元 松本一則 小野智弘 東野輝夫
雑誌
マルチメディア、分散協調とモバイルシンポジウム2011論文集
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.1308-1315, 2011-06-30

近年、TwitterのようなブログやWeb掲示板などに投稿された商品やテレビ番組などに対する口コミ情報を分析してマーケティング等に応用する評判解析技術に注目が集まっている。これらは手軽い情報発信が可能なため、新鮮かつ多数の意見を即座に収集するツールとして、その活用は大きな可能性を持っている。一方で、評判は投稿者の年齢や性別、趣味などのプロフィールに応じて異なることが多いが、ブログや掲示板には投稿者の年齢や性別が記載されていない場合が多く、投稿数や平均的な意見などの表面的な情報しか抽出できず、プロフィールごとの意見を抽出できないことが課題であった。この問題を解決するため、著者らはTwitter上の口コミ投稿者の日常的な投稿内容を解析することで、年代、性別、居住地域などのプロフィールを推定する技術を開発した。本技術を利用することで、ネット上の口コミ情報をプロフィールごとに分類、集約することが可能となり、商品の改善やテレビ番組の企画などに生かすことが可能となる。性能評価実験の結果、提案手法の汎用的な推定精度は性別で88.0%、年代で68.0%、居住地域で70.8%であり、視聴率測定などへの応用を想定したプロフィール分布誤差の評価では、分布に偏りがある場合でも性別で8.8%、年代で12.4%、居住地で14.0%と実利用に十分な精度であることが示された。