著者
津川 定之
雑誌
研究報告高度交通システム(ITS)
巻号頁・発行日
vol.2009-ITS-39, no.9, pp.1-8, 2009-10-29

この報告は 1950 年代に R&D が始まった自動車の自動運転システムのサーベイを述べ,その特長と課題について考える.1950 年代,1960 年代の自動運転システムは路面に埋設した誘導ケーブルに基づいていたが,1970 年代,1980 年代にはマシンビジョンに基づく自律車両の研究が行われている.1980 年代に始まる各国の大規模な ITS プロジェクトでは自動運転システムが重視され,単独車両の自動運転だけでなく小さな車間距離で走行する自動隊列システムが開発されている.自動運転の特長はヒューマンエラーをなくすることによる安全と,精密な車両制御による道路容量の増加,隊列走行による空気抵抗減少による渋滞の発生抑止と省エネルギー化にある.しかし法的課題があって公道上での実用化には至っていない.
著者
前川勇樹 内山彰 山口弘純 東野輝夫
雑誌
研究報告高度交通システム(ITS)
巻号頁・発行日
vol.2014-ITS-56, no.17, pp.1-8, 2014-02-27

本稿では,快適な鉄道利用を実現するため,鉄道旅客の乗車車両および各車両の混雑状況を推定する手法を提案する.提案手法は,乗客の持つ携帯端末が受信した近隣端末の Bluetooth シグナルをサーバに集約し,各端末間で観測された RSSI から,それらが同じ車両に存在する確率 (同一車両確率) および端末間の混雑確率を算出する.次に,得られた同一車両確率および一部の端末の (信頼度の高い) 乗車車両情報を用いて全端末の乗車車両を推定し,その結果と端末間の混雑確率を用いて車両毎の混雑を推定する.この際,電車内の乗客移動は一般にあまり見られないことを利用し,同一車両確率を継続的に更新することで,乗降車が発生しても高精度かつ迅速な推定を実現する.大阪都市部における 4 路線において 259 分間に渡り収集したデータを用いて提案手法の評価を行った結果,16 名の各車両位置を精度 83%,車両毎の混雑の有無を F 値 0.75 で推定できることがわかった.
著者
勝田 悦子 内山 彰 山口 弘純 東野 輝夫
雑誌
研究報告高度交通システム(ITS)
巻号頁・発行日
vol.2011-ITS-47, no.18, pp.1-8, 2011-11-03

携帯電話の普及とともに携帯電話にGPSを搭載することが求められるようになり,ナビゲーションなどの目的でGPSを利用する機会が増えている.本研究ではGPSの新しい利用方法として,Signal to Noise Ratio(SNR)などGPSの受信状態を用いて端末が屋内・屋外のどちらに存在するかを判定する方法を提案する.このため,様々な屋内外環境においてGPSの受信状態を収集し,各環境での特性から事前に判別モデルを構築しておくことで,屋内外判定をリアルタイムに実行する.屋内外判定により,屋内外で位置推定法をシームレスに切り替えたり,地図情報と組み合わせた位置推定の精度向上などの実現が期待される.提案手法の精度を確認するため,郊外や都市部など様々な屋内外環境でGPSの信号強度を収集し環境に応じて評価した結果,屋内外が切り替わってから7秒で90%の判定成功率を達成できることを確認した.
著者
神村 吏 木谷 友哉 渡辺 尚
雑誌
研究報告高度交通システム(ITS)
巻号頁・発行日
vol.2012-ITS-48, no.2, pp.1-8, 2012-03-09

近年,車両通信の研究が盛んに行われている.しかし,ノードとなる車両について,二輪車と四輪車の違いに目を向けた研究は少ない.二輪車の挙動は,すり抜けが可能,車体を傾けて曲がるなど四輪車の挙動とは異なる点が多く,従来の ITS サービスを二輪車にそのまま使うことはできない.そこで,それらを区別し,二輪車特有の挙動を推定把握することで車両通信の効率化や交通安全支援を目指す.本研究では,近年普及しつつあるスマートフォンを通信デバイスとして用いることで通信デバイスの導入コストを下げ,スマートフォンに内蔵される加速度センサとジャイロセンサを使用して,車両の傾きなどの状態をセンシングするシステムを提案する.さらに,実際に二輪車にこのシステムを装着し,挙動データの収集する.実際に収集した結果から,二輪車の旋回挙動をジャイロセンサの Y 軸 Z 軸の値から把握可能であることを示す.
著者
楠嶺 生宏 石原 進
出版者
情報処理学会
雑誌
研究報告高度交通システム(ITS) (ISSN:21862583)
巻号頁・発行日
vol.2011, no.7, pp.1-8, 2011-03-02

本稿では,VANET を用いて位置依存情報を,情報が生成された位置の周辺エリアを走行する車両に対して情報の有効期限の間配信し続ける手法について議論する.筆者らは,これまでに Push 型のエリア内位置依存情報配信手法として,ランダムネットワークコーディングと Opptunistic 型データ通信を組み合わせた RNC based Regional Data Distribution on VANETs(R2D2V) を提案している.R2D2V では,高車両密度時におけるデータの一斉配信によるパケット衝突や帯域浪費の問題に対して,ランダムネットワークコーディングの利用,車両速度に応じたビーコンパケットの送信間隔の動的変更,周辺車両密度によるデータの返信確率の動的変更の 3 つの技法を組み合わせることで,低トラフィックで確実なデータ配信を可能にする.R2D2V は,1) 情報有効領域にいる全車両に対して短時間で確実に情報を配信する,2) 情報生成後に情報有効領域に新たにやってくる車両に対しても短時間で情報を配信する,ことを目的に設計されている.しかし,これまでに 1) に対する評価は行われているが,2) に対する評価や各パラメータの詳細な評価は行われていない.そこで本論文では,A) 各車両の通信可能半径を大きくした場合のデータ配信に対する受信率の変化,B) 情報の生成された位置周辺 (有効領域) に情報生成後に新たに進入した車両が情報を低遅延で受信できるか,C) 返信確率の変更による配信の遅延・確実性とデータ配信トラフィックの間のトレードオフ,の 3 点に着目して詳細な評価を行った.シミュレーションの結果,通信可能半径が大きく,かつ車両密度が高いときでは R2D2V が単純な Opportunistic 型配信よりも有効領域内の全車両だけでなく,有効領域に新しく進入した車両に対して低遅延,低トラフィックでデータを配信できることを確認できた.In this paper, we discuss a method for continuously providing location-dependent information generated by a vehicle to other vehicles being driven in the surrounding areas of a location where the information was generated during the information effective period using Vehicular Ad hoc NETworks(VANETs). We have proposed a scheme called R2D2V which uses both random network coding and opportunistic data dissemination techniques. The main purposes of this scheme are i) disseminating location-dependent information rapidly and reliably to vehicles in the effective area of the information, and ii) providing the information to vehicles coming to the effective area of the information after the information was generated. In this paper, we focus on the following scenario and evaluate this scheme for the second purpose. A) Changes in data reception ratio in the data effective area when each vehicles' communication range is large, B) Whether vehicles newly coming to the data effective area after the information was generated can obtain a data item quickly, C) The trade-off between data distribution traffic and data reception ratio in the data effective area by changing the probability of replying to Hello messages. The simulation results showed that R2D2V can achieve high delivery ratio with low data distribution traffic and low delay when the vehicle density is high against all vehicles in the data effective area.
著者
金原辰典 石原 進
雑誌
研究報告高度交通システム(ITS)
巻号頁・発行日
vol.2011, no.14, pp.1-8, 2011-11-03

無線アドホックネットワークのプロトコルの研究を進めていく上で,シミュレーションと実環境双方からアプローチしていくことは重要である.筆者らの研究グループでは,車々間アドホックネットワーク(VANET: Vehicular Ad hoc NETwork)上での情報配信にRandom Network Coding(RNC)とOpportunisticなデータ配信,ならびに車両密度や速度に応じたデータ配信制御を組み合わせることで,特定エリア内への低遅延で確実的な情報配信を可能とする手法を提案している.この手法は,シミュレーションによる性能評価によりその効果が確認されているが,実環境での評価がされていない.しかしながら,様々な条件を考慮した実環境での評価を行うには,移動端末の確保や広大な実験スペースが必要等の問題がある.本稿では,省スペースで端末密度や通信状態等の条件を柔軟に変更できる実験環境を整えるため,Wi-FiやZigBee等の通信デバイスと比較して,柔軟に無線信号処理の変更が可能であるソフトウェア無線開発ツールキットGNU Radioを用いて実環境実験環境を構築した.その後,R2D2Vの動作の一部であるRNCとOpportunisticなデータ配信を組み合わせた情報配信動作を屋内外で固定端末を用いて実験を行い,省スペースでエラー発生率の高いアドホックネットワーク環境を模した実験が可能であることを確認した.To evaluate the performance of protocols on wireless ad-hoc networks, approaches both by simulation and experiment in a real environment are important. We have proposed a regional data distribution scheme which utilizes Random Liner Network Coding (RNC), an opportunistic data delivery strategy, and adaptive transmission control considering the density of vehicles and their moving speeds on Vehicular Ad hoc networks (VANETs). It is confirmed that the scheme can disseminate a data item rapidly and reliably by controlling the probability of sending a data item according to the vehicle density and vehicle speed through simulation. However it has not been fully evaluated in a real environment. To evaluate such a scheme in various condition, many devises, wide experiment field, and a lot of manpower are required. In this paper, we discuss using GNU Radio which can control various wireless signal processing more flexibly than off-the-shelf Wi-Fi and ZigBee devices to built a flexible and narrow space wireless network testbed. We evaluated a simplified prototype of R2D2V which disseminates a data item using RNC indoors and outdoors. We obtained a brief guideline of how to build an experimental environment of a wireless ad-hoc network in a small space.
著者
高橋大斗 中村嘉隆 高橋修
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告高度交通システム(ITS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2013, no.16, pp.1-6, 2013-11-07

近年のモバイル端末の高性能化に伴い,モバイル端末が扱うファイルサイズは肥大化している.ファイルサイズの肥大化への対応のため,アドホック通信を用いたモバイル端末間のファイル転送方式は今後さらなる改良が求められる.また,モバイル端末間でのファイル転送の際には,中継役を不要とするアドホック通信が適していると考えられる.本研究ではアドホック通信におけるファイル転送効率化の手段として,マルチホーミングと TCP マルチコネクションに焦点を当て,モバイル端末間における効率的なファイル転送方式を提案・実装した.本提案方式の有効性を示すべく,無線通信環境の変化時におけるスループットの変動などにも注目し,その評価を行った.
著者
浅見宗広 福井隆司 葛城友香 大杉苑子
雑誌
研究報告高度交通システム(ITS)
巻号頁・発行日
vol.2013-ITS-55, no.2, pp.1-8, 2013-11-07

屋内での位置推定手法として,Gaussian Mixture Model (GMM) を用いた WiFi 位置推定手法が提案されている.本稿では,この手法を渋谷駅周辺エリアに実際に適用した際に明らかになった課題やそれに対する対策などを報告する.具体的には,GMM でモデル化するにあたり事前にWiFi電波情報を現地でフロア毎に収集するが,位置推定処理に利用可能な信頼できる WiFi 電波の選定方法が挙げられる.また,位置推定処理ではまずフロアを特定する必要があるが,フロア毎に事前に計測された BSSID 毎の最大強度の情報からフロアを特定する方法について紹介する.その他,フロア推定の正解率や位置推定結果の誤差などを報告する.
著者
澤田 暖 佐藤 雅明 植原 啓介 村井 純
出版者
情報処理学会
雑誌
研究報告高度交通システム(ITS) (ISSN:21862583)
巻号頁・発行日
vol.2011, no.9, pp.1-8, 2011-03-02

本稿では,車載が容易なスマートフォンを用いて構築された,車両間アドホックネットワークにおいて,位置情報に即した情報の流布を行うプラットフォームである 「iDANS」 を構築した.iDANS は特定エリア内の車両同士で,迅速かつ多くの情報を共有することを目的としている.目的を達成するために,iDANS は走行中の場所に応じて,最も流布すべき情報を優先的に流布する機構を備えている.また,位置情報を正確に取得出来ない端末を中継ノードとして有効利用することも可能としている.iPhone を用いた iDANS の実機動作検証とシミュレーションによる効果測定の結果,iDANS は特定エリア内の車両間で多くの情報を迅速に流布する上で有効であることを確認できた.In this paper, iDANS, which is a location based information dissemination platform for smartphones in vehiclar ad-hoc networks (VANETs), is proposed and evaluated. The primary objective of iDANS is to disseminate and share information swiftly between vehicles within a designated area. In order to meet the demands, iDANS disseminates the information most relevant to the current location on a priority basis. It also makes use of devices which can't acquire the current location accurately as relay nodes. As a result of operation tests and simulations, iDANS was verified that it is effective in disseminating information swiftly among vehicles within a designated area.