著者
松下 拓樹 西尾 文彦
出版者
The Japanese Society of Snow and Ice
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.66, no.5, pp.541-552, 2004-09-15
被引用文献数
1 5

過去14冬季間(1989年11月~2003年5月)における気象庁の地上気象観測資料から,着氷性の雨,着氷性の霧雨,凍雨の発生に関する地域分布と,季節変化および経年変化を調べた.日本では,これらの降水種は1月から3月の時期に発生することが多く,毎年10回程度の割合で観測されている.このうち着氷性の雨の発生率は毎年数回程度で,12月~1月に発生する場合が多い.<BR>着氷性の雨と凍雨の発生率が高いのは,中部地方以北の内陸山間部と関東地方以北の太平洋側平野部である.この両地域に着目して,着氷性の雨や凍雨が発生するときの気象条件の形成過程を調べたところ,地上付近の寒気層の形成は,局地的な気象現象や地形の影響を強く受けることがわかった.内陸山間部では盆地地形による冷気湖の形成が関与しており,太平洋側平野部では内陸からの寒気流出によって地上付近の寒気層が形成される.一方,上空暖気層の形成は,総観規模の気圧配置に伴う暖気移流に起因する.
著者
松下 拓樹 西尾 文彦
出版者
The Japanese Society of Snow and Ice
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.66, no.5, pp.541-552, 2004-09-15 (Released:2010-02-05)
参考文献数
28
被引用文献数
5

過去14冬季間(1989年11月~2003年5月)における気象庁の地上気象観測資料から,着氷性の雨,着氷性の霧雨,凍雨の発生に関する地域分布と,季節変化および経年変化を調べた.日本では,これらの降水種は1月から3月の時期に発生することが多く,毎年10回程度の割合で観測されている.このうち着氷性の雨の発生率は毎年数回程度で,12月~1月に発生する場合が多い.着氷性の雨と凍雨の発生率が高いのは,中部地方以北の内陸山間部と関東地方以北の太平洋側平野部である.この両地域に着目して,着氷性の雨や凍雨が発生するときの気象条件の形成過程を調べたところ,地上付近の寒気層の形成は,局地的な気象現象や地形の影響を強く受けることがわかった.内陸山間部では盆地地形による冷気湖の形成が関与しており,太平洋側平野部では内陸からの寒気流出によって地上付近の寒気層が形成される.一方,上空暖気層の形成は,総観規模の気圧配置に伴う暖気移流に起因する.
著者
松下 拓樹 権頭 芳浩
出版者
The Japanese Society of Snow and Ice
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.355-365, 2000-07-15
被引用文献数
2 2

雨氷発生の気候学的な地域特性を調べるため, 長野県を解析対象地域として, 雨氷発生日の特定を行い, その年平均日数の地域分布を求めた.<BR>雨氷は, 過冷却の雨滴が地物などにあたり氷になる着氷現象の一種で, 上空暖気層 (気温0℃以上) で雪片が融解して雨滴となり, それが地表付近の寒気層で冷されて過冷却の雨滴 (気温0℃以下の降水) となり発生する (melting ice process).その他, 大気全層の気温が0℃以下の場合 (supercooled warm rain process) でも発生することがあるが, ここではmelting ice processのみを対象とした.<BR>高層資料から上空暖気層の有無を, AMeDAS資料から地表付近の寒気層と降水の有無を調べ, 二つの気象条件を満たす日を雨氷発生日と定義した.過去20冬季 (1979年11月~1999年4月) について調べた結果, 雨氷の発生は3月に最も多く, 次いで12月に多いことがわかった.また, 最近6年間は雨氷発生日数が少ない傾向にある.<BR>次に, 地形因子値を用いた重回帰分析から, 年平均雨氷発生日数のメッシュマップを得た.その結果, 年平均雨氷発生日数は長野県中部と東部で多いことがわかった.特に標高との関係が強く, 山岳地域や高原地域で多くなる傾向が得られた.一方, 北部と南部の低標高地域では少ない傾向にある.
著者
松下 拓樹 尾関 俊浩 西尾 文彦
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.52, no.9, pp.675-680, 2005-09-30
被引用文献数
1

2004年2月に北海道の岩見沢周辺で発生した雨氷現象について, 地上気象観測資料と客観解析資料を用いた解析を行った.その結果, 岩見沢で着氷性降水があった期間は, 22日21時30分頃から23日5時頃までであり, 雨氷が発生した地域は, 岩見沢から滝川までの約40kmの範囲と推定された.着氷性降水時, 岩見沢における地上気温は-0.5℃前後で推移し, 雨氷の形成環境としてはそれほど低い気温状態ではなかった.しかし, 雨氷表面における理論的な熱収支計算によると, 北東からの6m/s前後の風による通風効果によって負の熱フラックスが増加し, 雨氷が発達しやすい大気環境であったことが示された.
著者
松下 拓樹 権頭 芳浩
出版者
The Japanese Society of Snow and Ice
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.355-365, 2000-07-15 (Released:2009-09-04)
参考文献数
38
被引用文献数
2

雨氷発生の気候学的な地域特性を調べるため, 長野県を解析対象地域として, 雨氷発生日の特定を行い, その年平均日数の地域分布を求めた.雨氷は, 過冷却の雨滴が地物などにあたり氷になる着氷現象の一種で, 上空暖気層 (気温0℃以上) で雪片が融解して雨滴となり, それが地表付近の寒気層で冷されて過冷却の雨滴 (気温0℃以下の降水) となり発生する (melting ice process).その他, 大気全層の気温が0℃以下の場合 (supercooled warm rain process) でも発生することがあるが, ここではmelting ice processのみを対象とした.高層資料から上空暖気層の有無を, AMeDAS資料から地表付近の寒気層と降水の有無を調べ, 二つの気象条件を満たす日を雨氷発生日と定義した.過去20冬季 (1979年11月~1999年4月) について調べた結果, 雨氷の発生は3月に最も多く, 次いで12月に多いことがわかった.また, 最近6年間は雨氷発生日数が少ない傾向にある.次に, 地形因子値を用いた重回帰分析から, 年平均雨氷発生日数のメッシュマップを得た.その結果, 年平均雨氷発生日数は長野県中部と東部で多いことがわかった.特に標高との関係が強く, 山岳地域や高原地域で多くなる傾向が得られた.一方, 北部と南部の低標高地域では少ない傾向にある.