著者
山本 幸洋 藤原 伸介 田中 福代 高木 和広 松丸 恒夫
出版者
一般社団法人 日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料学雑誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.78, no.1, pp.15-22, 2007-02-05 (Released:2017-06-28)
参考文献数
28
被引用文献数
2

10種の殺菌剤による土壌中のアンモニア酸化阻害活性を確認するとともに,そのなかで顕著な活性を示したクロロタロニル(テトラクロロイソフタロニトリル)の阻害活性について詳細に検討した.1)供試薬剤のなかでクロロタロニルとチウラムは土壌中のアソモニア酸化阻害活性が最も高かった.これらに比べ,トリフルミゾール,トルクロホスメチル,イプロジオン,フルトラニル,ヘキサコナゾール,イソプロチオラン,ベノミルおよびメタラキシルは,阻害活性が低いか,または認められなかった.2)クロロタロニルによる土壌中のアンモニア酸化阻害は,ジシアンジアミドと比べて長く持続した.また,クロロタロニルによる土壌中のアンモニア酸化阻害活性は,添加量に依存し,添加量が5mg kg^<-1>以上のときに土壌のNH_4-N含量と(NO_2+NO_3)-N含量の両方に影響を及ぼした.3)クロロタロニルの畑土壌における主要分解産物4-ヒドロキシ-2,5,6-トリクロロイソフタロニトリル(TPN-OH)は,土壌中のアンモニア酸化を阻害するが,その活性はクロロタロニルおよびジシアンジアミドと比べて低かった.4)クロロタロニルの類縁化合物テトラクロロテレフタロニトリル(TTPN)による土壌中のアンモニア酸化阻害活性は,クロロタロニルと比べて低かった.他の類縁化合物1,2,3,5-テトラクロロベンゼン(TCB),イソフタロニトリル(IPN),テレフタロニトリル(TePN),フタロニトリル(PN)およびベンゾニトリル(BN)は,いずれも土壌中のアンモニア酸化を阻害しなかった.5)アンモニア酸化細菌集積土壌において,クロロタロニル区(添加量100mg kg^<-1>)のアンモニア酸化細菌数は,クロラムフェニコール区(添加量500mg kg^<-1>)と比べて急激に低下した.以上のことから,クロロタロニルは,土壌中のアンモニア酸化阻害活性が高いこと,構造中のニトリル基と塩素の存在がアンモニア酸化阻害に必須であり,それらの分子内での配置が阻害活性の強度に大きく関与すること,クロラムフェニコールと比べてアンモニア酸化細菌に対して致死的に作用することが明らかとなった.
著者
松丸 恒夫
出版者
千葉県農業試験場
雑誌
千葉県農業試験場研究報告 (ISSN:05776880)
巻号頁・発行日
no.32, pp.p43-54, 1991-03

千葉県における光化学オキシダントによる農作物可視被害の発生実態を把握する目的で,1973年から毎年7月下旬に指標植物を用いた現地調査を実施した。本報告では1989年までの調査結果をとりまとめた。1973年と1974年の各種農作物の被害調査から,県内で広く栽培され,オキシダント感受性の高いサトイモとラッカセイの2作物を指標植物として選定した。サトイモのオキシダント被害分布および被害の発生程度は年によって異なるものの,地域間差が明確であった。すなわち,東葛飾地域,印旛地域の県北西部と君津地域で甚だしい被害が発生しやすく,海匝地域と安房地域では被害の発生が少ない傾向が認められた。サトイモのオキシダント被害程度の年次間差をみると,1983年と1987年の被害が甚だしく,1978年と1989年の被害が軽かった。被害の発生と関係が深いと考えられる6~7月の光化学スモッグ注意報発令日数とサトイモの平均被害面積率との間に正の相関関係がみられ,サトイモの被害程度は各年次のオキシダント汚染程度を反映していることが認められた。
著者
松丸 恒夫 松岡 義浩 白鳥 孝治
出版者
Japan Society for Atmospheric Environment
雑誌
大気汚染学会誌 (ISSN:03867064)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.279-285, 1985-08-20 (Released:2011-11-08)
参考文献数
12
被引用文献数
3

ヨウ素精製工場に隣接するナシ園において, ナシの葉の葉肉部がネクロシス化し, 激しい場合は落葉するという異常症状が発生した。そこで原因究明をねらいとして現地実態調査を行った。その結果は以下のとおりである。1) 異常症状は葉脈間の葉肉部にネクロシスを生ずるタイプと葉縁部にネクロシスを生ずるタイプに分けられた。前者には品種「幸水」,「新水」が, 後者には「八幸」,「八君」が相当した。2) 異常症状の発生には品種間差が認められ,「幸水」,「八幸」が感受性,「長十郎」が抵抗性,「新水」,「八君」はその中間であった。3) ヨウ素, 塩素, 硫黄, 臭素, フッ素成分の葉分析の結果, 被害葉のヨウ素含有率のみが異常に高いことが認められた。4) ヨウ素精製工場周辺のナシ以外の植物調査の結果, 6種類の植物葉にネクロシス又はクロロシスを伴う異常症状が確認された。また, それらの植物葉を分析した結果, すべての葉に高濃度のヨウ素が検出された。5) ナシの葉の異常症状の原因はヨウ素の過剰集積によるもので, ヨウ素の飛来源は隣接するヨウ素精製工場であろうと推察された。また, 異常症状の発現する葉中ヨウ素含有率の限界値は, 感受性の「幸水」,「八幸」で20~50ppm (乾物当たり) と考えられた。