著者
張 瑞軍 鹿島 勇治 松井 三明 岡部 とし子 土井 陸雄
出版者
日本衛生学会
雑誌
日本衛生学雑誌 (ISSN:00215082)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.492-499, 2001-07-15 (Released:2009-02-17)
参考文献数
26

Total mercury in the muscles of three fish species was analyzed in fish caught in Tokyo Bay and the surrounding sea areas, Sagami Bay and Choshi. Tokyo Bay is a semi-closed sea area surrounded by Tokyo, Kanagawa and Chiba prefectures. Sagami Bay and Choshi are open to the Pacific Ocean. A total of 412 fish consisting of northern whiting (Sillago japonica), flatfish (Limanda yokohamae) and sardine (Sardinops melanosticta) were caught in these areas over a 6 months period from November 1998 to April 1999.Total mercury concentration ranged from 0.008-0.092μg/g (wet wt.) in northern whiting, 0.006-0.065μg/g in flatfish and 0.001-0.045μg/g in sardine. All concentrations were below the restriction limit of fish mercury in Japan, 0.4μg/g of total mercury concentration. A significant correlation was found between mercury concentrations and body length or body weight in northern whiting and flatfish, irrespective of the sea area. A correlation was also found between mercury concentration in fish and their feeding habits: among the 3 species caught in the same area, crustacean feeding northern whiting had the highest, polychaete feeding flatfish moderate, and plankton feeding sardine had the lowest mercury concentration.In a comparison of mercury concentration in the same species caught in different sea areas, a higher concentration was noted in fish caught in the semi-closed sea area of Tokyo Bay, than in fish caught in the open sea areas of Sagami Bay and Choshi. This difference was most marked in fish caught at the bottom of Tokyo Bay and we considered that the mercury concentration of seawater and sediment in these areas was the cause of mercury accumulation in fish. These findings suggest that improved water quality control and environmental monitoring is necessary in semi-closed sea areas such as Tokyo Bay.
著者
松井 三明 池田 憲昭
出版者
日本国際保健医療学会
雑誌
国際保健医療 (ISSN:09176543)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.69-78, 2010 (Released:2010-09-06)
参考文献数
32

目的 母性保健の分野では、妊産婦死亡率が課題の把握や対策策定に用いられる。しかし、その算出は推計によることが大半であり、誤差範囲が広いことなどから、比較的小規模の人口集団を対象としたプログラムのモニタリングや地域間の比較に用いることはできないことも知られている。本研究では、セネガル国タンバクンダ州において、De Brouwereによって提唱された“unmet obstetric need”指標を用い、重症産科合併症に起因する妊産婦死亡の推計を行い、同指標の妊産婦死亡削減対策における利用可能性について考察することを目的とした。方法 2005年にタンバクンダ州および隣接するカオラック州の7医療施設で実施された帝王切開について、その適応と患者居住地を調査し、タンバクンダ州居住者に対して実施された帝王切開数および率を求めた。また帝王切開を実施しなくては死亡に至る可能性が高い「絶対的母体適応」という重症産科合併症群を定義し、それに対して必要な手術数をタンバクンダ州内各保健管区について推計し、実際に提供された手術数との差を求めた。この差が、重症産科合併症を発症したにもかかわらず病院で適切な医療サービスを受けることなしに妊産婦死亡に至った症例数と仮定し、各保健管区ごとに絶対的母体適応に起因する妊産婦死亡率を推計した。結果 タンバクンダ州内の6保健管区における帝王切開率は、全適応に対しては0.3-2.0%、絶対的母体適応に対しては0.1-0.9%に分布した。タンバクンダ州の絶対的母体適応に起因する妊産婦死亡率は651(95%CI 554-761)、また保健管区ごとでは、クンペントゥム 966(741-1239)、グディリ 877(588-1260)に対し、ケドゥグ 249(119-457)、バケル 296(128-584)と、統計学的有意差がみられた。結語 本調査から、“unmet obstetric need”指標を用いて、州内保健管区の絶対的母体適応に起因する妊産婦死亡の違いを明らかにすることが可能であった。この手法を適用することで、妊産婦死亡の現状を把握し対策策定に用いることができるだけでなく、地域間の比較、トレンドのモニタリング、プログラムの評価に用いることができる可能性が示唆された。
著者
井上 千尋 松井 三明 李 節子 中村 安秀 箕浦 茂樹 牛島 廣治
出版者
日本国際保健医療学会
雑誌
国際保健医療 (ISSN:09176543)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.25-32, 2006 (Released:2006-06-09)
参考文献数
17

本研究は、東京都心の医療機関における、1990年から2001年まで12年間の外国人分娩事例のうち、日本語によるコミュニケーションが困難な事例について検討することにより、言語の問題に伴う在日外国人の周産期医療上の課題を明らかにし、その対策について考察した。日本語によるコミュニケーションが困難なことにより、医療従事者と妊産婦との適切な意思伝達の阻害、保健・医療・福祉に関する情報不足、の2点が特有の問題として挙げられた。特に意思伝達の阻害は、病歴や自覚症状の確認困難、相互信頼関係形成と精神的支援の阻害、医療従事者の負担の増大を引き起こし、さらにインフォームドコンセントに基づく医療サービス提供の妨げになっていた。外国人妊産婦に対して、日本人と同じようにインフォームドコンセントに基づいた医療を提供するには、医療通訳制度を整えることが急務の課題であると考えられた。