- 著者
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関本 征史
伊是名 皆人
石坂 真知子
中野 和彦
松井 久実
伊藤 彰英
- 出版者
- 日本毒性学会
- 雑誌
- 日本毒性学会学術年会 第45回日本毒性学会学術年会
- 巻号頁・発行日
- pp.O-34, 2018 (Released:2018-08-10)
【背景】近年、環境基準が定められていない化学物質による河川の潜在的な汚染が報告されており、ヒトや野生生物に対する生体影響が懸念されている。共同研究者の伊藤らは、天白川(愛知県)や境川(東京都)などの都市部河川において、MRI造影剤に使用される希土類元素ガドリニウム(Gd)の河川中濃度が増加していることを見いだしている(Bull. Chem. Soc. Jpn., 77, 1835(2004)、Chem. Lett., 46, 1327(2017))。本研究では、Gd造影剤の水生生物に対する毒性影響を把握する基礎実験として、水生生物由来培養細胞に対する致死毒性の有無を検討した。【背景】ティラピア肝由来Hepa-T1細胞およびアフリカツメガエルの肝由来A8細胞は理研バイオリソースセンターより入手した。両細胞をそれぞれの培養条件で24時間前培養した後、有害重金属(Cd、Cr、Hg)およびGd無機塩、あるいはGd造影剤(Gd-DOTA、Gd-DTPAおよびGd-DTPA-BMA)を最大濃度100 µMで24時間または72時間曝露し、Alamer Blue Assayにより細胞毒性を評価した。【結果】Hepa-T1細胞に対してHg、CdおよびCrはいずれも強い細胞毒性(生存率20%以下)を示した。一方A8 細胞に対してHgは強い細胞毒性を、Crは弱い細胞毒性(生存率 50%以下)を示したが、Cd は24時間処理では全く毒性を示さなかった。72時間処理では、100 µM Cd 処理によりA8細胞での細胞死が認められた。なお、Gd およびGd造影剤処理による細胞毒性はどちらの細胞株においても観察されなかった。【考察】本研究より、現在の河川中濃度レベルのGd造影剤は細胞死を引き起こさす可能性は小さいものと思われた。また、水生生物由来細胞の間でいくつかの環境汚染重金属の毒性影響が異なることが示された。これは、用いた細胞間での「重金属の取込・排泄」「重金属毒性発現に関わる細胞内因子」の相違に起因することが考えられた。現在、分子レベルでの毒性影響について、遺伝子発現変動を指標とした検討を進めている。