著者
松井 美帆
出版者
日本生命倫理学会
雑誌
生命倫理 (ISSN:13434063)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.128-134, 2007-09-20 (Released:2017-04-27)
参考文献数
15
被引用文献数
1

医療に対する自律性について、日米の高齢者を対象に自記式質問紙調査を実施し、比較検討を行った。対象者は国内の地域高齢者125人と米国ハワイ州ホノルル市における日系高齢者94人であった。医療に対する自律性に関連する要因として両群ともに、意思決定とかかりつけ医との関係が認められた。また、家族機能との関連では、国内高齢者では意思決定と家族の凝集性、適応性が正の相関、日系高齢者では情報希求との間に共に負の相関が認められた。また、国内高齢者では検査の目的や薬の副作用などに関する情報希求が日系高齢者に比較して高く、終末期ケアの意向についても意思決定と療養場所の希望、延命治療の意向との間に関連が認められた。以上のことから、高齢者において医療に対する自律性と医療従事者、家族関係は重要と考えられ、国内高齢者に対する支援として、医療に関する情報提供、さらに終末期ケアも含めた意向に関する理解が求められることが示唆された。
著者
松井 美帆
出版者
防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

慢性心不全は主として高齢者の疾患であり、高齢化のさらなる進展により心不全患者の顕著な増加が見込まれている。心不全の緩和ケアについては十分に実施されているとは言い難く、医療従事者を対象とした教育が必要であるが、教育ニーズや教育効果を検討した報告はなく、研修プログラムについてもその内容は確立していない。本研究では、診断時からの心不全緩和ケアの普及へ向けた研修プログラムの効果を検討することを目的として、1)循環器病棟に勤務する看護師を対象に緩和ケアに関する教育ニーズを明らかにする、2)心不全の疾患特性を踏まえた緩和ケアについて看護師を対象とした研修プログラムを実施、その効果を検証する。
著者
松井 美帆 森山 美知子
出版者
日本生命倫理学会
雑誌
生命倫理 (ISSN:13434063)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.65-74, 2004-09-17
被引用文献数
4 5

本研究の目的は、終末期ケアの啓発活動への高齢者の関心とその規定要因を明らかにすることである。対象は中国地方の老人クラブ会員258名で、医療保健専門家による終末期ケアに関する教育講演については58.9%に関心がみられた。関連要因として年齢があり、前期高齢者に関心が高い傾向であった他、終末期ケアに関する家族や医療従事者との話し合いをはじめ、かかりつけ医の有無、家族機能、手術経験などが関連していた。一方、延命治療の意向では医師や家族に判断を任すとした非自己決定群が58.6〜61.1%であり、リビング・ウイルをよく知っているものは12.2%であった。以上のことから、前期高齢者の世代から家族や医療従事者との関係に配慮した上で、自分の意向を事前に周囲と話し合っておくことやアドバンス・ディレクティブについて啓発活動を行なうことの重要性が示唆された。