著者
松原 要一
出版者
新潟大学
雑誌
新潟医学会雑誌 (ISSN:00290440)
巻号頁・発行日
vol.122, no.1, pp.25-29, 2008-01

医療崩壊が地方の病院で進んでいる.これは医師不足により医師確保が困難で,かつ勤務医が過重労働で病院を辞め,残った医師に負担が増えて更に医師が辞める悪循環による.なかなか改善されない医療制度の欠陥と医療費抑制政策など医療行政に大きな問題があるが,その抜本的な改善・改革は今後も当分の間期待できない.医療崩壊が大きな社会問題となって国民の医療に対する意識が変わらない限り難しいであろう.それまでは,それぞれの地域と病院でできることを積み重ねるしか方法はない.与えられた条件の中で姑息的ではあるがやるべきことは少なからずあり,早急に実行すべきである.医師の確保は容易でないが,勤務している医師が過重労働で病院を辞めないで長く勤務できるように先ず働きやすい環境を整備することであろう.例えば統合医療情報システムによるチーム医療の推進,業務の見直し,業務の外部委託,そして地域医療機関の役割・機能分担による医療連携の推進である.これらに対する当院の取り組みを紹介する.
著者
秋山 美紀 的場 元弘 武林 亨 中目 千之 松原 要一
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.112-122, 2009 (Released:2009-10-29)
参考文献数
10
被引用文献数
2 1

【目的】診療所医師の在宅緩和ケアの実施状況および困難感を明らかにし, がん緩和ケアを地域で推進するための有効策を検討することを目的とした.【方法】緩和医療資源が十分でないと考えられる地域の全診療所69カ所の医師を対象に, 質問紙調査によって在宅緩和ケアの実施状況と今後の対応の意向を評価したうえで, 62カ所の診療所医師のインタビュー調査により在宅緩和ケア実施の阻害要因などを明らかにした.【結果】質問紙の回収率は81%で, 在宅緩和医療の実施率は, 比較的末期のがん患者の在宅診療27%, モルヒネ内服による疼痛管理29%, 精神面サポート12%などであった. インタビュー内容分析の結果, 緩和スキルの向上, 病院医師との関係構築, 患者・家族・一般市民の啓発などの必要性が示された. 【結語】在宅緩和ケア推進のためには, 地域で研修会などを開催し, 病院, 診療所間で良好な関係を築きながらスキルアップを行うとともに, 一般市民の在宅ケアへの理解を培うことが重要である. Palliat Care Res 2009; 4(2): 112-122