- 著者
-
秋山 美紀
- 出版者
- 日本健康教育学会
- 雑誌
- 日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
- 巻号頁・発行日
- vol.26, no.1, pp.100-108, 2018-02-28 (Released:2018-02-28)
- 参考文献数
- 27
緒言:効果的なヘルスコミュニケーションプログラムは,個人はもとより,組織,コミュニティ,そして社会全体を健康な方向に変えていく影響力を持つ.本稿は,健康課題を抱える人を取り巻くマクロな環境を変えることを念頭に置いたヘルスコミュニケーションの実践例や教育プログラムを紹介しながら,人と環境との交互作用の重要性を再確認する.内容:コミュニケーションは単体でも,当該社会における健康課題や優先課題を知らしめたり,組織間関係を強化することが可能である.しかしながら,起きた変化を持続させたり,より複雑に絡み合う課題を解決するには,他の戦略と組み合わせる必要があることが知られている.このことから,ヘルスコミュニケーションの研究,実践,教育は,他分野と融合しながらダイナミックな広がりを見せており,例えば,欧米の公衆衛生大学院ではアドボカシーや住民参加型ヘルスリサーチ等を関連科目として教授するようになっている.最近のヘルスアドボカシーの顕著な成果として,糖分を多く含むソーダ飲料への課税が挙げられる.Berkeley市を筆頭に米国の複数の都市で導入されることになったものである.親の会,学校,公衆衛生の専門家らによる効果的なパートナーシップが,キャンペーンを成功に導いた事例である.まとめ:日本でも多分野の知見を導入しながら多層的に健康活動が展開されていくことが求められている.そのためにはヘルスコミュニケーションの裾野をさらに広げていく必要がある.