著者
舘内 由枝 島田 隆美子 浦野 洋子 佐藤 エイ子 永塚 智恵 角田 美智子 関根 智子 松坂 利之 樋口 進
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.211-215, 2004-04-20 (Released:2011-10-07)
参考文献数
17

精神疾患患者における, 園芸を用いた作業療法の心理的効果を検討するため, 当院精神科開放病棟入院患者および精神科デイケア通院患者を対象に, 園芸を用いた作業療法前後に感情プロフィール検査(POMS)およびバイタルサイン(血圧, 脈拍)の測定を行った. 一般健康者のPOMS各尺度得点が50点前後を示すのに対し, 患者ではネガティブな感情を表わす5尺度が高く, これらとは負の相関を示す活気の尺度が低いといった谷型のパターンを示した. 園芸を用いた作業療法前後のPOMS得点を疾患別に分類した結果, 統合失調症患者では変化がほとんど見られなかったのに対して, それ以外の患者では, 園芸を用いた作業療法後にネガティブな感情の低下と活気の上昇が見られた. これらの結果から, 1) 精神疾患患者はPOMSにおいて特徴的なパターンを示すこと, 2) 園芸を用いた作業療法は統合失調症以外の患者に短期的な感情・気分の改善傾向をもたらすことなどが示唆された. 今後, より大きな集団での追試と, 繰り返しの介入効果についての検討がなされる必要がある.
著者
井上 裕之 松坂 利之 鈴木 健二 大鶴 洋 高木 洲一郎 長谷 徹 長谷 則子 西村 康
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.100-107, 2003-02-20 (Released:2011-10-07)
参考文献数
42

摂食障害患者の身体症状として, 多くの口腔内症状が指摘されている. 今回この実態を解明するため, 女性摂食障害患者群51名および女性比較対照者群64名に対し病歴の聴取, 口腔内診査, 唾液検査, 細菌検査などの調査を実施し, 以下の結果が得られた.1. 食行動の異常として拒食経験を有するものが36例に, 過食経験を有するものが42例に認められ, そのなかの33例は自己誘発嘔吐を経験していた.2. これまでに摂食障害専門医より指摘された口腔病変を確認し, なかでも歯頚部う蝕, 歯頸部実質欠損は摂食障害の早期発見の指標となる理学的所見として有効であることが示唆された.3. 摂食障害患者のう蝕発生要因として, 罹患期間, 過食期での自己誘発嘔吐, 不規則な食行動, 過食時の糖分の過剰摂取などの食行動の異常と拒食期での唾液流出量低下, 口腔乾燥の出現が推察された.4. 摂食障害患者の身体症状として, 口腔症状は重要な予見材料であることが示唆された. そのため, 現在急増しつつある本疾患の回復, 予防, 早期発見に歯科医が担う責務は重大であり積極的に関与しなければならないと考えられる.