著者
関根 智子
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:13479555)
巻号頁・発行日
vol.76, no.10, pp.725-742, 2003-09-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
24
被引用文献数
4 4

本研究では,千葉県松戸市における眼科医院を事例として,都市施設への近接性の安定度を時空間的に分析した.GISを利用して町丁・字の中心から眼科医院への最短道路距離を測定し,近接性の測度とした.この近接性を,測定対象数の変更(第2近隣施設の考慮),測定地域単位の細分化(100メートル・メッシュ),診療時間の考慮,の三つの側面から分析し,安定度を考察した.その結果,測定対象数の変更では,近接性の良い地区でも,施設の分布密度が下がると,安定度も急激に低下することが明らかになった.居住地の地域単位を100メートル・メッシュに細分化すると,20%の町丁・字では,その地区面積の半分以上で100メートル・メッシュの近接性と異なり,安定度が低かった.診療時間を考慮すると,市内の第1の中心地周辺では近接性は安定している一方,第2,第3の中心地周辺では大きく低下していることがわかった.
著者
関根 智子
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:13479555)
巻号頁・発行日
vol.81, no.2, pp.76-87, 2008-02-01 (Released:2010-03-12)
参考文献数
17

本研究は, 東京都足立区北東部を事例として, GIS上で25,359棟の建物に対し, 商業施設の一つであるコンビニエンスストア (以下, コンビニと略称) への最短道路距離を求め, 建物レベルの近接性を測定した. 建物レベルの近接性の分布を詳細に検討したところ, 近接性は道路網のパターン, 施設と道路網の位置関係, 建物と道路網の位置関係, 施設同士の位置関係, などによって規定されていた. 次に, 建物レベルの近接性と, 町丁目中心点からみた町丁目レベルの近接性を比較したところ, 町丁目レベルでは, 施設への平均距離が若干長いことから, 全体的にみると近接性は多少悪くなった. 最寄りのコンビニは, 町丁目の境界を成す主要道路沿いかその外側に8割立地していることから, 町丁目中心点に比べて, 主要道路沿いにも分布する建物の方が, コンビニへの近接性は良くなると考えられる. したがって, 近接性を測定する場合, 地域単位の中心点と建物とのコンビニに対する位置関係の差が, 生態学的誤謬をもたらす原因となっていることが明らかとなった. 最後に, 町丁目内における建物レベルの近接性の差異を分析したところ, 近接性が“良い”町丁目内では内部の差異は小さかった. それに対し, 近接性が“普通”の町丁目内では差異が大きくなる傾向がみられることから, 町丁目の中心点で近接性を代表させることの限界が明らかになった.
著者
舘内 由枝 島田 隆美子 浦野 洋子 佐藤 エイ子 永塚 智恵 角田 美智子 関根 智子 松坂 利之 樋口 進
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.211-215, 2004-04-20 (Released:2011-10-07)
参考文献数
17

精神疾患患者における, 園芸を用いた作業療法の心理的効果を検討するため, 当院精神科開放病棟入院患者および精神科デイケア通院患者を対象に, 園芸を用いた作業療法前後に感情プロフィール検査(POMS)およびバイタルサイン(血圧, 脈拍)の測定を行った. 一般健康者のPOMS各尺度得点が50点前後を示すのに対し, 患者ではネガティブな感情を表わす5尺度が高く, これらとは負の相関を示す活気の尺度が低いといった谷型のパターンを示した. 園芸を用いた作業療法前後のPOMS得点を疾患別に分類した結果, 統合失調症患者では変化がほとんど見られなかったのに対して, それ以外の患者では, 園芸を用いた作業療法後にネガティブな感情の低下と活気の上昇が見られた. これらの結果から, 1) 精神疾患患者はPOMSにおいて特徴的なパターンを示すこと, 2) 園芸を用いた作業療法は統合失調症以外の患者に短期的な感情・気分の改善傾向をもたらすことなどが示唆された. 今後, より大きな集団での追試と, 繰り返しの介入効果についての検討がなされる必要がある.
著者
牟田 浩二 草野 邦明 関根 智子
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2006, pp.9, 2006

本研究は、京都市中心部に立地するホテルを対象として、ホテルのサービス・設備・利便性について評価し、ホテルのランク付けを行うとともにランク別のホテルの立地傾向を明らかにする。 研究対象地域は、京都市の主要ホテルが多く立地している、京都市の上京区、中京区、下京区、右京区、左京区とし、その地域に立地する61のホテルを取り上げた。 ホテルを評価するために、"サービス""設備""利便性""料金"の4つを評価因子として取り上げた。評価因子は、サービスに対しては11、設備に対しては6、利便性に対しては5、料金に対しては4の、計26の評価項目で構成されている。ホテルはこれらの評価項目に対し得点化を行い、それらを総合して5_から_74点で評価した。 その結果、ホテルはA_から_Dの4ランクにランク付けされた。Aランク(50点以上)が12箇所、Bランク(40_から_49点)が10箇所、Cランク(30_から_39点)が22箇所、Dランク(29点以下)が17箇所となった。 ランクごとの立地をみると、Aランクは、京都駅、歴史的建築物、市役所周辺、BランクのホテルはAランクのホテル近く、CランクのホテルはAランクのホテルの中間、DランクのホテルはA・Cランクのホテルの中間や道路(堀川・烏丸・河原町通り)と駅前に多く立地している。
著者
関根 智子
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.101-108, 2018 (Released:2018-04-13)
参考文献数
15

本論文では,GISによる近接性研究の進展について,近接性と公平性,近接性と移動性,そして潜在的近接性に関わる公共交通の近接性から論じる.GISは,地理情報の重要性を社会に認識させるとともに,近接性の研究に対しても,1)分析地域の広域化,2)分析対象のミクロ化,3)距離の測定方法の変化,4)単一交通手段から複数交通手段への考慮,5)近接性の可視化など,研究方法を大きく変化させ,詳細な研究結果を得ることを可能にした.また,近接性の概念が,人々と場所を隔てる距離の側面から,移動性を通じて距離を克服する能力の側面へ変化している.GISは,距離を克服する能力として,複数の交通手段による移動を測定する交通手段間近接性や,出発時間や到着時間を測定する行程近接性での分析を可能にした.
著者
高阪 宏行 関根 智子
出版者
Tokyo Geographical Society
雑誌
地學雜誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.117, no.2, pp.455-463, 2008-04-25
被引用文献数
1 2

The aim of this paper is to review the present situation of business Geographic Information Systems (GIS) in Japan. This paper especially focuses on various geographic information services produced by geographic information technology. Geographic information is defined as attribute data with location and geographic information technology is considered in the second section in terms of software and hardware for manipulating geographic information. The third section reviews location-based services (LBS), which trace positions in real-time using location sensor technology. LBS are classified into six types of service: provision of information specified for a position, tracing service for people, tracing service for vehicles and ships, tracing service for luggage and goods, proximity-based notification, and proximity-based actuation. Spatial analysis on GIS has been applied in business tools to assist sales promotion activities and the posting of handbills in shops and offices. The fourth section presents trade area analysis used to perform effective sales promotion activities. Rating methods and spatial interaction models are also used for location assessments of sites proposed for new shops. The fifth section considers geodemographics as an area marketing tool. The last section presents the outlook for business GIS in Japan.