著者
井上 裕之 松坂 利之 鈴木 健二 大鶴 洋 高木 洲一郎 長谷 徹 長谷 則子 西村 康
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.100-107, 2003-02-20 (Released:2011-10-07)
参考文献数
42

摂食障害患者の身体症状として, 多くの口腔内症状が指摘されている. 今回この実態を解明するため, 女性摂食障害患者群51名および女性比較対照者群64名に対し病歴の聴取, 口腔内診査, 唾液検査, 細菌検査などの調査を実施し, 以下の結果が得られた.1. 食行動の異常として拒食経験を有するものが36例に, 過食経験を有するものが42例に認められ, そのなかの33例は自己誘発嘔吐を経験していた.2. これまでに摂食障害専門医より指摘された口腔病変を確認し, なかでも歯頚部う蝕, 歯頸部実質欠損は摂食障害の早期発見の指標となる理学的所見として有効であることが示唆された.3. 摂食障害患者のう蝕発生要因として, 罹患期間, 過食期での自己誘発嘔吐, 不規則な食行動, 過食時の糖分の過剰摂取などの食行動の異常と拒食期での唾液流出量低下, 口腔乾燥の出現が推察された.4. 摂食障害患者の身体症状として, 口腔症状は重要な予見材料であることが示唆された. そのため, 現在急増しつつある本疾患の回復, 予防, 早期発見に歯科医が担う責務は重大であり積極的に関与しなければならないと考えられる.
著者
前田 顕之 大関 悟 有地 榮一郎 出雲 俊之 大鶴 洋 岡部 貞夫 小村 健 川辺 良一 桐田 忠昭 草間 幹夫 迫田 隅男 佐々木 朗 篠原 正徳 田中 陽一 中村 太保 野口 誠 又賀 泉 山城 正司
出版者
Japanese Society of Oral Oncology
雑誌
日本口腔腫瘍学会誌 = Journal of Japan Society for Oral Tumors (ISSN:09155988)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.163-175, 2007-09-15
被引用文献数
1 1

舌癌治療ガイドラインの作成にあたり, 日本での舌扁平上皮癌治療の現状を把握するためアンケート調査を行い, 75回答の集計結果から本邦における舌扁平上皮癌治療の現状を報告した。<BR>有効回答の得られた75施設の過去10年間 (1995-2004) における総症例数は5, 906例であった。T, N分類ではT2が2, 700例 (45.7%) , N0が4, 367例 (73.9%) と最も多かった。<BR>手術療法では原発巣の切除範囲の適応基準, 頸部リンパ節転移に対する頸部郭清術および舌癌切除後の再建術における適応と術式については, 各施設とも適応基準がほぼ共通しており標準的な治療ガイドラインの作成は可能であるように思われた。<BR>一方, 原発巣や頸部の放射線や化学療法による, 術前・術後の補助療法の目的と適応が各施設それぞれに基準があり, その標準化はガイドライン作成の大きな問題点になると思われた。いずれにしても質の高いエビデンスを持つ治療法をガイドラインに盛り込む必要がある。