- 著者
-
渡辺 容子
松岡 博厚
- 出版者
- Japanese Society for Food Science and Technology
- 雑誌
- 日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
- 巻号頁・発行日
- vol.41, no.9, pp.627-632, 1994-09-15 (Released:2011-02-17)
- 参考文献数
- 22
P.caseicolumを熟成用スターターに用いた大豆チーズの製造工程および熟成中のフィチン酸の変化について調べた.また, P.caseicolumのフィターゼの産生能について確かめ,諸性質についても検討した.(1) 試料大豆に含まれるフィチン酸の82%は, 10倍加水量豆乳に移行した.乳酸発酵により得たカードでは,豆乳に含まれるフィチン酸の約48%,大豆中のフィチン酸の約40%が移行した.(2) カードに含まれるフィチン酸は,熟成1週目において未熟成カードの約50%に減少した.一方遊離リン量は約10倍に上昇した.熟成1週目以降の変化はゆるやかであった.(3) 小麦ふすま培地にP.caseicolumを培養した結果,抽出液および硫酸アンモニウム画分中(30~80%飽和)にフィターゼ活性がみられた.(4) フィターゼ活性に及ぼすpHの影響を調べた結果, pH3.0~3.6とpH4.8付近に最適作用pHを示す活性ピークがみられた.(5) pH3.6の条件下でのフィ夕ーゼ活性の至適温度は45℃付近, pH4.8の条件下においては30~40℃と至適温度の範囲が広かった.(6) 米のフィチン酸ナトリウムを基質とした場合,至適基質濃度はpH3.6の条件下では0.375mM, pH4.8の条件下では2.5mMであった.