著者
松島 格也 小林 潔司 福井 浩
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.69, no.5, pp.I_511-I_521, 2013 (Released:2014-12-15)
参考文献数
28
被引用文献数
2 2

人々の交通機関選択問題を考える際,従来の非集計モデルの枠組みでは交通サービス水準や居住地環境のデータは外生変数として与えられる.しかし,人々は利用する交通行動を想定して居住地を選択していることが考えられ,この場合,個々人が享受する交通サービス水準などは自ら選択した結果である.このような内生性の問題を考慮せずに推計したパラメータはバイアスが生じる可能性がある.本研究では計量経済学における内生性について概念・手法を整理して,交通機関選択モデルにおける内生性を検証するとともに,内生性を考慮した分析手法を提案して居住地選択行動と交通機関選択行動との関係を実証的に分析する.
著者
小林 潔司 松島 格也 菱田 憲輔
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.299-318, 2008
被引用文献数
2

予約システムは供給制約のあるサービスを申し込み順に家計に割り当てるメカニズムである.本研究では,予約システムの経済便益として,1)家計が将来時点におけるサービス購入オプションを確保する便益と,2)大きな効用を持つ家計に優先的にサービスを割り当てる顕示メカニズムとしての便益に着目する.その上で,単一もしくは複数のサービスが供給される独占市場を対象とした市場均衡モデルを定式化し,予約システムの導入がもたらす経済便益を評価する.その結果,予約システムの導入により企業利潤,社会的厚生は増加するが,家計の経済厚生が逆に減少することを明らかにする.その上で,家計の経済厚生低下を抑止するためには,キャンセル料金の規制が必要となることを示す.
著者
松島 格也
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

不確実な状況における交通サービス消費行動をモデル化し,意思決定の自由度とコミットメントの価値を理論的に導出した.料金支払いのタイミングの違いに着目して,事前料金システムと事後料金システムの導入が家計厚生に及ぼす影響を分析し,事後割引料金システムの方が社会的厚生の観点から望ましい結果をもたらすことを示した.さらに,航空サービスの早割チケットのような通時的差別化料金システムの経済便益評価を実施した.
著者
松島 格也
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本研究では,自己の行動をあらかじめ自己規制すること(コミットメント)を表明し,その表明に束縛されることを明確にすることにより,他人が効用を獲得できる場合のコミットメントの経済価値に関する理論的な分析枠組みを開発するとともに,CMV調査による支払い意思額の計測における便益の2重計算(過小計算)の問題を回避iしうる支払い意思額の計測方法を提案した.まず,森林コモンズの考え方の整理及び便益計測のためのCVM調査の調査票設計を行った.過疎地域研究会の参加メンバーから専門的知識の提供を受けながらコモンズとしての中山間地域における森林の役割をとりまとめ,また国内外における人文地理学や林業経済学の分野で行われている森林のとらえ方を探るため資料収集を行った.日野川源流を守る会を結成して先進的な取り組みを行っている鳥取県日野郡日南町の町有林を対象とし,それに対する都市住民としては鳥取県米子市民を取り上げてその意識を探った.その後,CVM調査を実施して森林の便益を計測すると共に当該地域における水源税の導入可能性を探った.設計した調査票を用いて鳥取県米子市に住む住民を対象としたCVM調査を郵送により行い,日野川上流の日南町町有林に対する支払意思額の計測方法について検討した.このCVM調査の結果は森林の資産価値評価の算出根拠となるものである.さらに調査結果に基づいた森林の資産価値を用いて水源税の導入可能性について検討を行った.水源税の理論的根拠として上流域の住民が森林開発を放棄する(森林を保全する)ことを宣言し,下流域の住民がそのコミットメントに対して支払い意思額を有するというコミットメント価値が取り上げた.このような水源税を通じた上下流の住民間の所得移転を分析するために,1)住民間の戦略的な意見の表明行動,2)個人間の効用の相互作用による便益の2重計算,過小計算の問題を克服しうる支払い意思額の計測方法を開発した.