著者
富成 司 市丸 亮太 松本 千穂 平田 美智子 宮浦 千里 稲田 全規
出版者
ファンクショナルフード学会
雑誌
Functional Food Research (ISSN:24323357)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.59-66, 2019 (Released:2020-01-01)
参考文献数
20

カテキンは緑茶に含まれるポリフェノールであり,エピカテキン(epicatechin, EC),エピガロカテキン(epigallocatechin, EGC),エピカテキンガレート(epicatechin gallate, ECG),エピガロカテキンガレート(epigallocatechin gallate, EGCG)の4種類が含まれる.これらカテキンは抗酸化作用などさまざまな生理活性を示すことが明らかとなっているが,骨代謝に対する効果については不明な点が多い.これまで,筆者らは,天然由来因子の骨代謝調節作用の解析や骨系統疾患への効果に着目し,ポリフェノールやカロテノイドについて,骨粗鬆症や歯周病への予防効果を検討してきた. カテキン類の中で,ガレート基を持つEGCGは強い生理活性を持つことが知られている.近年,特定の茶品種に高含有のメチル化EGCG(methylated EGCG, EGCG3’’Me)に生理活性があることが示された.筆者らは,これらカテキンに破骨細胞の分化抑制作用があることを見いだした.その作用機序として,EGCGおよびEGCG3’’Meが骨芽細胞に作用することで,IκBキナーゼ(inhibitor of NF-κB kinase, IKK)の活性阻害を介してNF-κB(nuclear factor κB)の活性化を抑制し,プロスタグランジン(prostaglandin, PG)E2産生,破骨細胞分化誘導因子(receptor activator of NF-κB ligand, RANKL)の発現を抑制することが明らかとなった. In vivo実験における歯周疾患のモデルマウスにおいては,歯周疾患原因子であるリポ多糖(lipopolysaccharide, LPS)の投与により誘導される歯槽骨吸収において,EGCGまたはEGCG3’’Meの投与によってその歯槽骨吸収が改善されることを明らかにした. 現在,日本の超高齢社会において,骨と歯の健康増進は生活の質(quality of life, QOL)の向上に繋がるため国民的課題となっている.EGCGの経口投与実験では,閉経後骨粗鬆症モデル動物におけるエストロゲン欠乏性の骨量減少が改善されたという報告もある.茶に高含有のカテキンは日常的な摂取が可能であり,歯周病など骨系統疾患に有用な機能性成分として期待される.そこで,本総説では,カテキンの中でも特に強力な生理活性を持つEGCGおよびEGCG3’’Meの骨代謝調節作用について最近の知見を紹介し,骨の健康増進作用について解説する.
著者
水越 美奈 松本 千穂 脇坂 真美
出版者
動物臨床医学会
雑誌
動物臨床医学 (ISSN:13446991)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.119-125, 2017-09-25 (Released:2018-09-25)
参考文献数
16

加齢により犬は人における年齢が関係する認知機能不全や認知症と同様な症状を示す。これらの臨床徴候は飼い主が排泄の失敗や睡眠と覚醒サイクル,見当識障害など実際的に観察することでわかることがほとんどである。6歳以上の健康な犬のこれらの徴候を調べたところ,CDSの徴候は年齢と共に上昇し,13歳で70%を超えた。また比較的若い6~9歳では雌より雄,14~18歳では未避妊雌より避妊雌,10~13歳では日本犬系より洋犬で高いことがわかった。さらに認知の低下は飼い主との散歩や遊びに関連することが示された。多くの飼い主は年齢と共に現れる行動変化について気づいていたが,これらについて相談する人はほとんどいなかった。相談しなかった多くの飼い主はこれらの行動変化は問題でないと感じていた。