- 著者
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松永 義夫
- 出版者
- 公益社団法人 日本化学会
- 雑誌
- 日本化學雜誌 (ISSN:03695387)
- 巻号頁・発行日
- vol.89, no.10, pp.905-919, 1968-10-10 (Released:2011-05-30)
- 参考文献数
- 49
- 被引用文献数
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16
有機分子錯体は,をの振動スペクトルに基づいて電子構造が非結合構造で近似されるものと,電荷移動構造で近似されるものの二つに大別されることが見いだされた。約40種のキノン錯体の比抵抗値と振動スペクトルを調べた結果・低い電気抵抗を示す錯体の大部分は,電荷移動構造で近似される電子構造をもつことが明らかとなった。それでそのような電子構造をもつと期待される新しい分子錯体を数多くつくり,その比抵抗を測定した。なかでもつぎの錯体はとくに低い比抵抗値をもつ。ジペンゾ[c,h]ノチアジン_ジク泣ルジシアン-p-ベンゾキノン(2:1),17Ωcm,5,6:11,12-ビス(ジチオ)ナフタセン-o-クロルアニル(3:1),2~4cm,フェロセンーテトラクロル-p-ジフェノキノン(1:2),24Ωcm叫さらにジアミノピレン-p-クロルアニルとこれΩに関連した錯体はひいちじるしく電気的性質を異にするいくつかの形にえられることが知れた。これらは通常103Ωcmまたはそれ以上の比抵抗値をもつが, ,つくり方によって数Ωcmを示す。低い電気抵抗を示す分子錯体は,いずれも赤外領域に電子吸収をもつことが明らかとされた。