3 0 0 0 OA 頭蓋底外科

著者
岸本 誠司
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.118, no.3, pp.229-239, 2015-03-20 (Released:2015-04-17)
参考文献数
91
被引用文献数
1

頭蓋底は脳頭蓋と顔面頭蓋の境界に位置し, 多くの血管や神経が存在し複雑な構造を呈している. さらに顔面深部に存在するため, ここに生じる病変の診断治療は困難である. 特に手術においては生命予後に直結する頭蓋内合併症に加えて顔面神経, 視覚, 嚥下, 咀嚼, 構音, 整容といった患者 QOL に直結する問題が生じるため, 極めて高度な手技が要求される. そのため, 頭蓋底手術を安全に行うためにはチーム医療の確立, 新たな手術手技の開発や機器の導入と解剖学的検討に基づく十分な知識が必要不可欠である. さらに内視鏡手術などの minimally invasive surgery の開発による機能や形態の温存や, 術後合併症に対する機能再建外科を確立する必要があるが, そのためにはこれまでの知識と技術を伝承していくことが非常に重要である. 本稿では頭蓋底手術に関するわれわれのこれまでの取り組みと得られた新知見, ならびに今後の展望について述べる.
著者
海老 原充 海老 原敏 岸本 誠司 斉川 雅久 林 隆一 鬼塚 哲郎 朝蔭 孝宏 吉積 隆
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.101, no.12, pp.1406-1411, 1998-12-20 (Released:2008-03-19)
参考文献数
13
被引用文献数
2 2

分化型甲状腺癌は比較的悪性度の低い癌として知られているが,中には周囲臓器への浸潤を来すものもある.特に浸潤頻度の高い臓器は気管である。そこで当院での気管浸潤例における手術手技,気管再建法における工夫,及び成績に関して報告をした.対象症例は国立がんセンター中央病院(1978年1月~1990年2月)およびセンター東病院(1992年7月~1996年12月)にて気管合併切除を施行した分化型甲状腺癌30例で,同期間中に手術を施行した分化型甲状腺癌全486例の約6.2%にあたった.病理組織学的には全例乳頭癌であった.性別は男性10例,女性20例であり,平均年齢は58.8歳(22~75歳)であった.切除後,21例に関しては二期的にhinge flapにて気管孔閉鎖が可能であった.気管部分切除•局所皮弁による再建は,気管環状切除•端々吻合に比較して術後の気道管理も容易であり手術侵襲も少なく,甲状腺分化癌のように悪性度の低い癌ではこの術式にて十分対応可能と考えられた.残りの5例に関しては欠損範囲が大きく,そのままでは二期的閉鎖が不可能であったため,3例に関しては気管壁欠損の上下方向を縫縮し残った欠損部に気管孔を作製し,局所皮弁にて閉鎖を行った.さらに,他の2例ではハイドロキシアパタイトを使用し気管壁の支持を試みた.ハイドロキシアパタイトは組織親和性に優れ,わん曲,長さ等の選択が可能で気管再建に有用と思われた.なお閉鎖のできなかった4例に関しては他因死が1例,肝癌併発にて気管孔縮小に止まったものが1例,経過観察中のものが2例であった.
著者
桧 学 中西 和仁 岸本 誠司 牛尾 信也 北村 溥之 東辻 英郎 林 正彦 玉城 進 上原 範子 松浦 健次郎 西条 秀明
出版者
耳鼻咽喉科臨床学会
雑誌
耳鼻咽喉科臨床 (ISSN:00326313)
巻号頁・発行日
vol.74, no.4special, pp.537-563, 1981 (Released:2011-11-04)
参考文献数
25

におい刺激でおこるめまいの機序を明かにし, その診断法, 治療法を開発する目的で一連の検査が行われ, 次の成果がえられた.(1) におい負荷平衡試験を考案した. この検査では, アリナミン (Diallyl sulfide) 溶液2ml (10mg) のアンプルより1mlをとり出し, それをしみこませた綿花 (1cm3) を被検者の鼻孔前1cmの箇所におき, 口を軽くとぢ, 安静呼吸で60秒間鼻呼吸を命ずる. 刺激中止後10分で愁訴, とくにめまいの変動を問診で確かめ, 各種平衡機能検査で客観化する.(2) (1) で述べた検査を正常成人に実施したがめまいの誘発や平衡失調の出現はなかった. しかし, 頭頸部外傷によるめまい例に施行すると, 次の成績がえられた.1) 受傷後, ある種のにおい物質に過敏となり, それを嗅ぐとめまいをおこした経験のあるものにのみ上述の平衡試験は陽性所見を示した.2) におい負荷平衡試験が陽性所見を示したものはすべて“アドレナリン負荷平衡試験; 桧, 他”が陽性所見を示した. この際, 両者の平衡試験で誘発される平衡失調は, その潜時, その形において相似する傾向を示し, 何れも delayed response を示す傾向が強かった.3) におい刺激で誘発される平衡失調型は病巣の局在と密接に相関した.4) 上肢小脳症状検査で陽性所見を示したものはにおい負荷平衡試験が陽性であることが多く, かつ前者の症状がつよいものほど後者の試験の陽性頻度が高かった.5) 我々が発表した“心因性めまい検出を意図した平衡試験”でA型平衡失調 (心身症型) を示すものは, におい負荷平衡試験で陽性所見をうることが多かった. しかし, A型平衡失調を示すものでも後者の平衡試験が陰性のものもあり, B型平衡失調 (非心身症型) を呈するものでも後者の平衡試験が陽性であることが少なくなかった.6) におい刺激で誘発されるめまい. 平衡失調の治療には cloxazolam (Benzodiazepime 系 minor tranquilizer) は効果がある. しかし, 小脳機能異常を有する例ではその効果を期待しがたい.以上の成績とこれまでにえた動物実験の成績より次の結論をのべた.(1) におい刺激でめまいが誘発される機序のうち, 大脳辺縁系 (とくに扁桃核) 中にふくまれる交感成分の活動性亢進は重要な因子である.(2) におい刺激で誘発されるめまいの機序のうち, 小脳は primary neural element ではない. しかし, その何れかの神経要素に作用し, 機能異常を助長して, におい刺激によるめまい・平衡失調の出現に促進的役割を果す.(3) 心身症によるめまいの機序とにおい刺激で誘発されるめまいの機序は overlap し, 相互に影響を与える可能性はあるが, それぞれの機序が独立した面をもつことを肯定すべきである.(4) 中枢神経系の交感神経成分の活動性抑制を目的とする操作はこの種めまい. 平衡失調の治療法として有用性がある.
著者
岡田 隆平 角田 篤信 籾山 直子 岸根 有美 喜多村 健 岸本 誠司 秋田 恵一
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.115, no.8, pp.791-794, 2012 (Released:2012-10-06)
参考文献数
10
被引用文献数
6 13

困難な術式や新しい術式に際して術前に解剖体を用いて解剖学的理解を深めることは有意義であるが, 従来のホルマリン固定による解剖体では組織の硬化が強く, 術式に即して展開することが困難であった. Thiel法は1992年に発表された解剖体の固定方法で, 生体とほぼ同じ質感を維持することができ, 病原体による感染の危険性を伴わない. 本固定法で処理された解剖体は組織が柔らかく, 実際の術式に即したかたちで解剖, 検討することができ, 術前の解剖学的検討に有用と考えられた. 本法は他の解剖体固定法と比していくつもの有利な点があり, 術式検討に加え, 新しい手術機器の開発, 外科医の技術評価にも有用であると考えられる.
著者
岡田 隆平 角田 篤信 籾山 直子 岸根 有美 喜多村 健 岸本 誠司 秋田 恵一
出版者
The Oto-Rhino-Laryngological Society of Japan, Inc.
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.115, no.8, pp.791-794, 2012
被引用文献数
13

困難な術式や新しい術式に際して術前に解剖体を用いて解剖学的理解を深めることは有意義であるが, 従来のホルマリン固定による解剖体では組織の硬化が強く, 術式に即して展開することが困難であった. Thiel法は1992年に発表された解剖体の固定方法で, 生体とほぼ同じ質感を維持することができ, 病原体による感染の危険性を伴わない. 本固定法で処理された解剖体は組織が柔らかく, 実際の術式に即したかたちで解剖, 検討することができ, 術前の解剖学的検討に有用と考えられた. 本法は他の解剖体固定法と比していくつもの有利な点があり, 術式検討に加え, 新しい手術機器の開発, 外科医の技術評価にも有用であると考えられる.
著者
木村 百合香 加藤 智史 高橋 正時 岸本 誠司
出版者
特定非営利活動法人 日本気管食道科学会
雑誌
日本気管食道科学会会報 (ISSN:00290645)
巻号頁・発行日
vol.59, no.6, pp.551-555, 2008-12-10 (Released:2008-12-25)
参考文献数
12
被引用文献数
1

今回われわれはアンギオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)投与と血管再生治療後に生じた喉頭浮腫治療後,nasogastric tube症候群による両側声帯麻痺を発症した1例を報告した。症例は76歳男性,主訴は吸気時呼吸困難であり,喉頭内視鏡検査にて著明な喉頭浮腫を認めたため同日緊急気管切開術を施行した。3カ月前より高血圧に対しARBであるカンデサルタンシレキセチル(ブロプレス®)を使用し,また閉塞性動脈硬化症に対し末梢血幹細胞移植による血管再生治療後7日目であった。喉頭浮腫の改善後,両側声帯正中固定が明らかとなった。多系統萎縮症等は否定的であり,経鼻胃管を挿入中であったことからnasogastric tube症候群による両側声帯麻痺と診断した。発症後10カ月現在も両声帯は正中位固定のままカニューレ抜去困難状態が続いている。アンギオテンシン変換酵素阻害剤とARBの重要な副作用に血管性浮腫があり,時に重篤な気道狭窄をきたすことがある一方,再生医療のさきがけとして血管再生治療が臨床導入されているが,移植された幹細胞から放出されるサイトカインにより血管性浮腫をきたす可能性も指摘されており,両者が本症例の喉頭浮腫に関与したものと考えた。また,経鼻胃管の留置による重篤な合併症であるnasogastric tube症候群にも留意が必要である。
著者
東辻 英郎 北村 溥之 齋藤 春雄 岸本 誠司 宮本 和雄
出版者
The Society of Practical Otolaryngology
雑誌
耳鼻咽喉科臨床 (ISSN:00326313)
巻号頁・発行日
vol.74, no.4, pp.698-705, 1981
被引用文献数
2

Sixteen patients with progressive bilateral perceptive deafness due to unknown causes were examined using various hearing tests and equilibrium tests with the following results.<br>1. Among the 11 patients examined 11 showed inner ear deafness and 3 showed inner ear deafness combined with retrocochlear one.<br>2. With reference to the appearance and progress of deafness, the deafness of this type was divided into the following two:<br>One was frequently observed in younger patients under twenty and was characterized by the tendency that bilateral deafness which appeared simultaneously and deteriorated equally, showed gradual, high-tone hearing loss. Thus, the hearing loss in these patients tended to be similar in pattern. i) between the first and the last examinations and ii) between the right and the left ears. Furthermore, the deafness of this type was rarely accompanied by vertiginous attacks.<br>The other was frequently found in older patients, of above twenty and was characterized by the tendency that deafness of both ears did not appear simultaneously and did not deteriorate equally. Furthermore, the deafness of this type was sometimes accompanied by vertiginous attacks in anamnesis.<br>3. Among the 16 patients examined, 4 showed fluctuating hearingloss. Furthermore, one of the 3 patients who underwent the glycerol test showed a positive sign. From the above mentioned findings the following conclusions were drawn:<br>(1) There may be differences between the 2 groups of patients, younger and older with regard to the etiological factors of the progressive bilateral perceptive deafness due to unknown causes, although both groups showed inner ear deafness. The deafness in the former group may be induced by congenital factors and may be regarded as a kind of premature presbyacusis. In contrast, the deafness in the later may be induced, at least partly, by acquired factors.<br>(2) Some patients showed findings suggestive of the existence of labyrinthine hydrops. These are valuable in considering the mechanism and treatment of the deafness of this type.
著者
田口 洋美 佐藤 宏之 辻 誠一郎 佐々木 史郎 三浦 慎悟 高橋 満彦 原田 信男 白水 智 佐藤 宏之 辻 誠一郎 佐々木 史郎 原田 信男 白水 智 三浦 慎悟 神崎 伸夫 前中 ひろみ 高橋 満彦 岸本 誠司 中川 重年 梶 光一
出版者
東北芸術工科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究が開始された翌年平成18年度においてクマ類の多発出没が発生し、捕殺数は約5000頭、人身事故も多発した。本研究はこのような大型野生動物の大量出没に対する対策を地域住民の歴史社会的コンテクスト上に構築することを主眼とし、東日本豪雪山岳地域のツキノワグマ生息地域における狩猟システムと動物資源利用を「食べて保全」という市民運動へと展開しているドイツ連邦の実情を調査し、持続的資源利用を含む地域個体群保全管理狩猟システムの社会的位置づけとその可能性を追求した。