著者
藤井 一至 松浦 陽次郎 菅野 均志 高田 裕介 平舘 俊太郎 田村 憲司 平井 英明 小崎 隆
出版者
日本ペドロジー学会
雑誌
ペドロジスト (ISSN:00314064)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.73-81, 2019 (Released:2020-12-31)
参考文献数
23

2022年から実施される学習指導要領の改訂では,地理歴史科の科目が「地理総合」,「地理探求」に変更となり,地図や地理情報システムの活用による国際性,主体的な思考力の養成が求められることとなった。これにあわせて,土壌に関して国内外で蓄積されてきた研究成果を基礎にした,正確な地図および用語を高校生が活用できるように,高校地理の土壌に関わる教育内容の更新が喫緊の課題である。そこで,現行の高校地理(地理B)の教科書にみられる用語および地図の問題点を整理し,教育内容の修正・更新案を提示した。具体的には,(1)チェルノーゼム,プレーリー土,パンパ土,栗色土の統一,(2)単独の土壌分類名と対応しないツンドラ土の削除,(3)「ラテライト」の削除とフェラルソル(ラトソル)への統一,(4)ポドゾル,フェラルソルの分布域の過大評価の修正,(5)テラロッサ,テラローシャを含む「粘土集積土壌」の追加,(6)間帯土壌(成帯内性土壌)として黒ボク土,沖積土の追加である。これによって,世界の土壌の分布と生業や文化との関わり,日本の主要な土壌の地理的分布とその特異性の理解促進に貢献できる。
著者
梶本 卓也 中井 裕一郎 大丸 裕武 松浦 陽次郎 大沢 晃 Abaimov Anatoly P. Zyryanova Olga 石井 篤 近藤 千眞 徳地 直子 廣部 宗
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会大会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.52, pp.265, 2005

中央・東シベリアの永久凍土連続分布域には、近縁2種のカラマツ(L. gmelinii, L. cajanderi)が優占する疎林が分布している。これまでの調査から、成熟した林(100年生以上)では、根が全現存量に占める割合は30-50%と北方林の中でも顕著に多く、同化産物のアロケーションが根にかなり偏っていることがわかっている。このことは、個体の成長や林分発達が地上部の光獲得競争よりも地下部での土壌養分、とりわけ窒素をめぐる競争に支配されていることを示唆している。本研究では、こうした点を裏付けるために、中央シベリアの成熟した林(約100年生)や山火事更新直後の若齢林(10年生前後)を対象に新たに伐倒・伐根調査を行い、既存のデータも加えて、アロケーションや根系発達が時系列でどう変化するのか検討した。その結果、100年生林では根が現存量に占める割合はやはり30%以上と高く、各個体の根系水平分布面積は樹冠投影面積の3-5倍に達していた。また林分レベルで推定された根系分布面積合計、単位土地面積当たり1を大きく上回り、根系がすでにほぼ閉鎖していることが示唆された。一方、更新直後の実生や若木では、根の割合は個体サイズとともに低下し、成長良好な大きめの個体で15-20%と成熟木よりかなり少なかった。この永久凍土地帯では、山火事更新後、コケや地衣、低木等林庄植生の回復に伴って、地温が低下し活動層の厚さも徐々に減少する。そして、もともと限られた無機態窒素の利用も制限されていく。こうした根圏環境の時系列変化を踏まえてカラマツ個体のアロケーションを考えると、土壌養分吸収の制限が少ない山火事後の更新初期段階では地上部の成長に偏っているが、数10年を経ると地上部から根へ大きくシフトし、その時期を境に地下部での個体間競争が起こって、やがては根系が閉鎖した林分状態に達することが推察される。