著者
野口 英之 ソウザ カシルダ アデリア サンパイオ シルバ ホジアニ オリベイラ オウリケ ルーカス 諏訪 錬平 梶本 卓也 石塚 森吉 ピント アルペルト カルロス マーティンス リマ アドリアーノ ジョゼ ノゲイラ サントス ジョアキン ヒグチ ニーロ
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.124, 2013

細根は森林の炭素循環の重要な構成要素であるが、その動態を測定する各種の手法には、微環境の改変や測定値の信頼性、機材の価格等、それぞれに問題点がある。とくにアマゾン等の熱帯地域では細根の成長・枯死・分解のサイクルも早いと考えられるため、環境条件に応じた適切な測定方法の検討が不可欠である。本研究では、ブラジル・マナウス近郊の熱帯林において、砂質土壌が分布する斜面下部と、粘土質の土壌が分布する斜面上部で、フラットベッド・スキャナを用いて直径2 mm未満の細根の成長と枯死の動態を測定した。イングロースコアを用いた細根成長量の測定も併せて実施し、結果を比較した。また地形単位ごとに土壌含水率の変動も測定し、細根の動態との関係を検討した。スキャナによる測定では、とくに多雨期に斜面下部で活発な成長と枯死が観察されていたが、斜面上部では成長・枯死のサイクルは非常に緩慢であった。一方、イングロースコアによる測定では、斜面下部と上部で1年間の細根生長量にほとんど差がなかった。後者では埋設期間中の枯死分を測定できず、とくに斜面下部ではかなりの過小評価になっていた可能性が高い。
著者
酒井 敦 野口 麻穂子 齋藤 智之 櫃間 岳 正木 隆 梶本 卓也
出版者
一般社団法人 日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.104, no.7, pp.374-379, 2022-12-28 (Released:2023-01-21)
参考文献数
25

長伐期施業は多様な森林を造成する選択肢の一つである。スギやヒノキでは高齢林の成長データが充実しているが,カラマツに関しては少ない。そこで,秋田県の120年生カラマツ人工林で成長経過を調べ,多雪地におけるカラマツ人工林の長期的な成長や適切な伐期について検討した。カラマツ林には四つの調査区が設定され,初期段階に強度の異なる間伐が実施された。120年生時の立木密度は160~240本・ha-1,胸高直径は平均45.8~56.0 cm,樹高は平均31.6~36.6 mだった。直近10年間に冠雪害による樹高成長の鈍化がみられたが,直径は旺盛に増加していた。そのため,直近の材積成長量は5.5~8.6 m3・ha-1・yr-1と120年生になっても成長を維持していた。間伐材積を含めた総材積は1,035~1,173 m3・ha-1であり,間伐強度や回数の影響は小さかった。総平均成長量は約60~90年生時に最大となり,材積成長の面から伐期の目安となり得る。
著者
小松 雅史 稲垣 善之 三浦 覚 小林 政広 梶本 卓也 池田 重人 金子 真司
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.126, 2015

森林に降下した放射性セシウムは樹冠にトラップされたのち、林内雨や葉枝の脱落によって林床に移行していくと考えられる。そこで、森林内の放射性セシウムの動態を明らかにするため、リターフォールによる放射性セシウムの移行について調査を行った。茨城県石岡市のスギ林およびヒノキ林、茨城県城里町のスギ林および広葉樹林において、リタートラップを用いて樹冠より降下するリターフォールを採取した。サンプルは葉や枝などに分別・計重し、放射性セシウム濃度を測定した。そして重量と濃度から、単位面積あたりのセシウム濃度を求めた。スギ林からのリターフォールによる移行は、主に褐色葉によるものであったが、事故から2か月間、雄花による移行が多いことが明らかになった。城里町のスギ林では、褐色葉のセシウム濃度は指数的に減少しているものの、事故から2年経過後もリターフォールによる移行は継続していた。石岡市の調査地では森林内のセシウム蓄積量分布調査を、また城里町の調査地では林内雨のCs濃度の計測を行っている。リターフォールによる放射性セシウムの移行について、樹種やサイトの比較とともに、これらの結果との関係について考察を行う予定である。
著者
大丸 裕武 梶本 卓也 小野寺 弘道 岡本 透 関 剛
出版者
The Japanese Society of Snow and Ice
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.62, no.5, pp.463-471, 2000-09-15 (Released:2009-09-04)
参考文献数
13
被引用文献数
1 3

1999年4月21日, 岩手県岩手郡松尾村籐七温泉付近の斜面で幅約100m長さ約300mの全層雪崩が発生した.雪崩が発生した斜面は谷地形の発達が悪い地すべり滑落崖で, アバランチシュートなどの常習的な雪崩の発生を示唆する地形は見られなかった.この雪崩は発生斜面における雪食地の拡大と堆積地における亜高山帯林の破壊という景観変化を伴っていた.空中写真判読と現地調査の結果, 同様の景観変化は八幡平の稜線部の鏡沼付近においても, 1986年頃に起きたことが明らかになった.これまで雪崩災害の報告が少かった八幡平地域においても, 頻度は低いものの比較的大規模な全層雪崩が発生していると考えられる.
著者
梶本 卓也 中井 裕一郎 大丸 裕武 松浦 陽次郎 大沢 晃 Abaimov Anatoly P. Zyryanova Olga 石井 篤 近藤 千眞 徳地 直子 廣部 宗
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会大会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.52, pp.265, 2005

中央・東シベリアの永久凍土連続分布域には、近縁2種のカラマツ(L. gmelinii, L. cajanderi)が優占する疎林が分布している。これまでの調査から、成熟した林(100年生以上)では、根が全現存量に占める割合は30-50%と北方林の中でも顕著に多く、同化産物のアロケーションが根にかなり偏っていることがわかっている。このことは、個体の成長や林分発達が地上部の光獲得競争よりも地下部での土壌養分、とりわけ窒素をめぐる競争に支配されていることを示唆している。本研究では、こうした点を裏付けるために、中央シベリアの成熟した林(約100年生)や山火事更新直後の若齢林(10年生前後)を対象に新たに伐倒・伐根調査を行い、既存のデータも加えて、アロケーションや根系発達が時系列でどう変化するのか検討した。その結果、100年生林では根が現存量に占める割合はやはり30%以上と高く、各個体の根系水平分布面積は樹冠投影面積の3-5倍に達していた。また林分レベルで推定された根系分布面積合計、単位土地面積当たり1を大きく上回り、根系がすでにほぼ閉鎖していることが示唆された。一方、更新直後の実生や若木では、根の割合は個体サイズとともに低下し、成長良好な大きめの個体で15-20%と成熟木よりかなり少なかった。この永久凍土地帯では、山火事更新後、コケや地衣、低木等林庄植生の回復に伴って、地温が低下し活動層の厚さも徐々に減少する。そして、もともと限られた無機態窒素の利用も制限されていく。こうした根圏環境の時系列変化を踏まえてカラマツ個体のアロケーションを考えると、土壌養分吸収の制限が少ない山火事後の更新初期段階では地上部の成長に偏っているが、数10年を経ると地上部から根へ大きくシフトし、その時期を境に地下部での個体間競争が起こって、やがては根系が閉鎖した林分状態に達することが推察される。
著者
小野寺 弘道 田邉 裕美 梶本 卓也 大丸 裕武
出版者
森林立地学会
雑誌
森林立地 (ISSN:03888673)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.59-66, 1995-12-30
被引用文献数
6

奥羽山脈中央部に位置する焼石岳南麓の多雪斜面における積雪動態と樹木の生態的特性との関係について調べた。低木形態をとる落葉広葉樹林の大半は厳冬期季節風に対する風背斜面に分布していた。風背斜面には積雪グライドに起因する雪ジワと雪割れ目が広範囲にわたって分布し,しばしば全層雪崩の痕跡も観察された。林地には積雪挙動による浸食地形がみられた。他方,風衝斜面には中・大径木の根返りに伴って形成されたピットとマウンドが数多く観察され,斜面形は凹凸が連続する階段状であった。風背斜面に優先する樹種は,ヒメヤシャブシ,タニウツギ,ブナなどであり,風衝斜面に優占する樹種は,ブナ,マルバマンサク,ハウチワカエデなどであった。風背斜面の森林は風衝斜面の森林と比較してサイズがきわめて小さく,傾幹幅が異常に大きい葡匐形態をとっていた。傾幹幅には樹種による違いが認められるとともに,優占順位の高い樹種の傾幹幅は風背斜面では大きく,風衝斜面では小さかった。風背斜面においては積雪移動圧に対し,風衝斜面においては積雪沈降圧に対して適応した樹種が個体維持に有利であると考えられた。いずれの斜面にも出現するブナは,積雪移動圧よりもむしろ積雪沈降圧が卓越する積雪環境に適応した,耐雪性の高い樹種であると考えられた。多雪斜面に生育する樹木の個体維持は,風背斜面においては主に萌芽・伏条による更新に,風衝斜面においては主に実生による更新に依存していると考えられた。そのような樹木の生態的な特性は積雪環境の違いを反映し,群落分布に係わる積雪環境要因としては,単に積雪の量だけではなく,積雪の変態過程の違いというような質的要素や,積雪グライド・雪崩などの積雪挙動が重要な役割を果たしていると考えられた。
著者
正木 隆 森 茂太 梶本 卓也 相澤 州平 池田 重人 八木橋 勉 柴田 銃江 櫃間 岳
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.93, no.2, pp.48-57, 2011
被引用文献数
1 3

林冠の閉鎖した94年生アカマツ人工林において, 間伐後8年間の個体の成長経過を同齢の無間伐林, 140年生天然アカマツ林と比較しつつ, 成長が改善されたか否か, 成長変化と相関する因子は何か, この人工林を天然アカマツ林のような大径木を含む林型に誘導できるか否か, を検討した。サイズは天然林 (DBH=68 cm, <I>H</I>=30∼35 m) の方が人工林 (DBH=41 cm, <I>H</I>=25∼30 m) よりも高い値を示した。形状比は人工林で50∼80, 天然林で40∼70だった。樹冠長率は人工林0.2∼0.4に対し, 天然林では0.25∼0.5だった。間伐により人工林の約4割の個体の成長が0.1 cm yr<SUP>−1</SUP>改善されたが, 無間伐林では逆に8割の個体の成長が低下した。個体の成長の改善度は, 隣接個体との競合環境の変化や, 樹冠長率など個体の着葉量の指標と連関していなかった。この人工林が140年生時に天然林のような大径木を含む林型に達するには, 今回観測された成長の改善では不十分である可能性が高いと考えられた。