著者
安田 正次 大丸 裕武 沖津 進
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:13479555)
巻号頁・発行日
vol.80, no.13, pp.842-856, 2007-11-01 (Released:2010-03-12)
参考文献数
25
被引用文献数
3 6

近年, 群馬県と新潟県の境にある平ヶ岳頂上部の湿原が縮小しているとの報告がある. そこで, 平ヶ岳湿原の面積の変化を航空写真より検出した. 航空写真補正用ソフトおよびGISソフトを用い, 航空写真をオルソ画像化して歪みを取り除き, 面積の算出を行った. その結果, 1971年から2004年までの33年間で湿原面積は10%縮小していた. 湿原が顕著に縮小している部分において植生調査を行った結果, 湿原内部ではハイマツを中心としたパッチ状の群落が侵入し, 面積の変化が大きい湿原縁部ではチシマザサが優占する群落が侵入していた. ハイマツとチシマザサの湿原への侵入の様子とその生態的特性を検討したところ, ハイマツは湿原へ先駆的に侵入して植生変化のきっかけとなり, 面積の変化にはチシマザサがより大きく寄与していた. こうした植生の変化は, 湿原の生成, 維持に関わっている積雪量が減少したことが原因であると考えられた.
著者
宮縁 育夫 大丸 裕武 小松 陽一
出版者
日本地形学連合
雑誌
地形 (ISSN:03891755)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.23-43, 2004-01-25
被引用文献数
3

The 29 June 2001 rainstorm (total 238 mm; maximum hourly rainfall 98 mm) triggered more than 700 landslides and associated lahars at Aso Volcano, central Kyushu, SW Japan. Most of the landslides were concentrated in a 20-km^2 area that includes the northeastern slope of post-caldera central cones, the northern slope of Nekodake Volcano and the eastern caldera wall. We mapped landslides triggered by the storm using field observations and 1 : 20,000-scale aerial photography provided by the Kumamoto District Forest Office taken in December 2001. Most of the triggered landslides were shallow (about 1 m thick) soil slips in unconsolidated airfall tephra layers overlying lava flows and pyroclastic rocks. Average volume of the landslides was 550 m^3, but some had volumes exceeding 10,000 m^3. The rupture surfaces of most landslides were formed near the boundary between upper blackish and lower brownish tephra layers. These layers have differences in permeability, grain size and soil hardness. Most landslides mobilized completely into lahars, traveling a few kilometers along stream channels. Although some lahars eroded channel side slopes and transported boulders (2-3 m in diameter), most contained up to about 80 percent silt-to-clay-size particles, similar in composition to the original landslide debris. Sediment discharge volumes by the tephra-slip-induced lahars were estimated at an order of 10^3-10^4 m^3/km^2 using sediment volumes trapped by check dams. These volumes are similar or one-order of magnitude smaller than the volumes of the 1953 and 1990 landslide disasters in the same region. The characteristics of landslides and lahars and their estimated volumes provide important information about landslide and lahar hazards at Aso Volcano.
著者
岡本 透 大丸 裕武 池田 重人 吉永 秀一郎
出版者
Japan Association for Quaternary Research
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.215-226, 2000-06-01
参考文献数
30
被引用文献数
2 6

下北半島北東部の太平洋岸には,砂丘砂や泥土に覆われたヒバの埋没林が各所に認められる.この埋没林の形成期は,約2,600~2,000年前,約1,000~850年前,約500年前,および現代である.調査地域に分布する砂丘砂中に認められる埋没腐植層の年代は,<sup>14</sup>C年代値と白頭山苫小牧火山灰の年代から,約5,300年前,約2,700年前,約1,000~900年前,約600~500年前,そして約200年前に区分された.埋没腐植層の年代により,調査地域に分布する砂丘の形成期は,約5,000年前以降,約2,500年前以降,約1,000年前以降,約600年前以降,約100年前以降と推定された.約2,500年前以降は,砂丘の形成期の年代とヒバ埋没林の形成期の年代とがほぼ一致するため,ヒバ埋没林の形成には砂丘砂の移動が大きく関与している.約2,600~2,000年前のヒバ埋没林は,その年代と分布から,約3,000~2,000年前の小海退にともなう砂丘砂の移動によって形成された.約1,000年前以降に形成された砂丘については,人為的影響によって形成された可能性がある.<br>一方,調査地域周辺には,約700~500年前の製鉄遺跡が数多く分布し,江戸時代後期にも南部藩などによって製鉄が試みられている.砂鉄採取のための砂丘の掘り崩しや,製鉄用の木炭を得るための沿岸部における森林伐採といった人為的影響によって,約600年前以降と約100年前以降に砂丘砂の移動があった.それにともなって,約500年前,現代の年代を示すヒバ埋没林が形成された.
著者
大丸 裕武
出版者
水利科学研究所
雑誌
水利科学 (ISSN:00394858)
巻号頁・発行日
vol.56, no.6, pp.60-67, 2013

2011年8月25日にマリアナ諸島の西で発生した台風12号は,9月2日から4日にかけて,ゆっくりと日本列島付近を進み,紀伊半島を中心とする広い範囲に豪雨をもたらした。とくに奈良県南部では記録的な豪雨を観測し,上北山のアメダスでは72時間雨量が1,652mmと国内観測記録を大きく塗り替えた(図1)。レーダー解析雨量では,山地奥部の雨量はさらに大きく,場所によっては2,000mmを越えたと推定されている(大阪管区気象台,2011)。このような記録的な豪雨のため,紀伊半島や中部地方の山岳域では多数の山地災害が発生した。とくに,紀伊半島内陸部の山地では,多数の崩壊が発生するとともに,大規模なもののいくつかは十津川支流の河道をせき止めて,土砂ダムを形成した。このような豪雨による深層崩壊や土砂ダムの発生については多くの専門家の注目を集めており,今後,その実態解明が進むと期待される。しかし,今回の災害に関しては深層崩壊や土砂ダム以外の現象については報告が少なく,災害の全体像についての十分な理解が進んでいないように思われる。本論では筆者がこれまでの現地調査を通して見ることが出来た現象のうち,今回の災害の特徴を理解する上で重要と思われるものを中心に紹介し,今後の研究のための基礎資料として提示したい。
著者
岡本 透 大丸 裕武 池田 重人 吉永 秀一郎
出版者
日本第四紀学会
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.215-226, 2000-06-01 (Released:2009-08-21)
参考文献数
30
被引用文献数
6 6

下北半島北東部の太平洋岸には,砂丘砂や泥土に覆われたヒバの埋没林が各所に認められる.この埋没林の形成期は,約2,600~2,000年前,約1,000~850年前,約500年前,および現代である.調査地域に分布する砂丘砂中に認められる埋没腐植層の年代は,14C年代値と白頭山苫小牧火山灰の年代から,約5,300年前,約2,700年前,約1,000~900年前,約600~500年前,そして約200年前に区分された.埋没腐植層の年代により,調査地域に分布する砂丘の形成期は,約5,000年前以降,約2,500年前以降,約1,000年前以降,約600年前以降,約100年前以降と推定された.約2,500年前以降は,砂丘の形成期の年代とヒバ埋没林の形成期の年代とがほぼ一致するため,ヒバ埋没林の形成には砂丘砂の移動が大きく関与している.約2,600~2,000年前のヒバ埋没林は,その年代と分布から,約3,000~2,000年前の小海退にともなう砂丘砂の移動によって形成された.約1,000年前以降に形成された砂丘については,人為的影響によって形成された可能性がある.一方,調査地域周辺には,約700~500年前の製鉄遺跡が数多く分布し,江戸時代後期にも南部藩などによって製鉄が試みられている.砂鉄採取のための砂丘の掘り崩しや,製鉄用の木炭を得るための沿岸部における森林伐採といった人為的影響によって,約600年前以降と約100年前以降に砂丘砂の移動があった.それにともなって,約500年前,現代の年代を示すヒバ埋没林が形成された.
著者
安田 正次 大丸 裕武
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.87, no.1, pp.1-16, 2014-01-01 (Released:2018-03-22)
参考文献数
25

奥利根・奥只見の中央に位置する平ヶ岳の山頂周辺に分布する湿原は,多雪による多湿化によって成立したとされてきた.しかし,実際の調査データに基づいて湿原の成立を検討した研究はなく,湿原の形成要因は不明瞭なままであった.本研究では,湿原の分布と夏期の積雪の分布との対応を,衛星写真および現地調査によって詳細に検討した.また,積雪の分布に影響を与える冬季の風向を,偏形樹と雪庇から調査した.これらの調査の結果,積雪と湿原の分布は一致しており,積雪による日光の遮断や低温・湿潤な環境のために,樹木が生育できず湿原となっていることが確かめられた.湿原の一部では乾燥地に適応した植物種が認められたが,それらは冬季の強い風によって積雪が吹き飛ばされて積雪が消失するのが早い場所に成立していることが明らかとなった.こういった場所では,冬期に積雪による保護効果が得られないために乾燥害が起きて樹木が生育できないと考えられる.
著者
小野寺 弘道 田邉 裕美 梶本 卓也 大丸 裕武
出版者
森林立地学会
雑誌
森林立地 (ISSN:03888673)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.59-66, 1995-12-30
被引用文献数
6

奥羽山脈中央部に位置する焼石岳南麓の多雪斜面における積雪動態と樹木の生態的特性との関係について調べた。低木形態をとる落葉広葉樹林の大半は厳冬期季節風に対する風背斜面に分布していた。風背斜面には積雪グライドに起因する雪ジワと雪割れ目が広範囲にわたって分布し,しばしば全層雪崩の痕跡も観察された。林地には積雪挙動による浸食地形がみられた。他方,風衝斜面には中・大径木の根返りに伴って形成されたピットとマウンドが数多く観察され,斜面形は凹凸が連続する階段状であった。風背斜面に優先する樹種は,ヒメヤシャブシ,タニウツギ,ブナなどであり,風衝斜面に優占する樹種は,ブナ,マルバマンサク,ハウチワカエデなどであった。風背斜面の森林は風衝斜面の森林と比較してサイズがきわめて小さく,傾幹幅が異常に大きい葡匐形態をとっていた。傾幹幅には樹種による違いが認められるとともに,優占順位の高い樹種の傾幹幅は風背斜面では大きく,風衝斜面では小さかった。風背斜面においては積雪移動圧に対し,風衝斜面においては積雪沈降圧に対して適応した樹種が個体維持に有利であると考えられた。いずれの斜面にも出現するブナは,積雪移動圧よりもむしろ積雪沈降圧が卓越する積雪環境に適応した,耐雪性の高い樹種であると考えられた。多雪斜面に生育する樹木の個体維持は,風背斜面においては主に萌芽・伏条による更新に,風衝斜面においては主に実生による更新に依存していると考えられた。そのような樹木の生態的な特性は積雪環境の違いを反映し,群落分布に係わる積雪環境要因としては,単に積雪の量だけではなく,積雪の変態過程の違いというような質的要素や,積雪グライド・雪崩などの積雪挙動が重要な役割を果たしていると考えられた。
著者
阿部 和時 黒川 潮 浅野 志穂 岡本 隆 松山 康治 落合 博貴 寺嶋 智巳 島田 和則 野口 宏典 大丸 裕武 宮縁 育夫 小川 泰浩
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.91-96, 2002-08-31
被引用文献数
6 5

2000年6月から始まった三宅島の火山活動による多量の降灰で雄山山腹の植生は壊滅的被害を受けた。この影響で泥流災害が島全域で発生し,現在も危険性は非常に高い状態にあると考えられる。本研究では,このような火山降灰地帯が形成された直後の激しい土壌侵食の実態を実証的に明らかにすることを目的とした土壌侵食の発生状況は降灰による森林被害の程度と相関性があると推察されるので,空中写真による森林被害区分を行い,それぞれの区分において現地水路侵食実験で侵食特性を検討した。その結果,降灰が堆積し形成された地表面は流速が20〜35cm/secと早く,浸透性が低いこと,しかし流出土砂量は降灰層中に枝葉が混入した地区よりも少ないこと等が示された。このデータをもとに汎用土壌侵食式(USLE)によって相対的な面状侵食の危険度を,火口を中心とした14.5km^2の範囲について示した。