著者
大沢 晃
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.779-786, 1997-04-15
参考文献数
8
被引用文献数
1

従来隠面消去方式としてはピクセル対応のZ?バッファ法が定着している.しかし,ピクセル単位のため面や辺の取扱いには適せず,ペンプロッタで線画が描けない,マウスによる図形ピックが困難等の問題があった.一方,ペンプロッタ用には,別プログラムで稜線と全物体面の組合せについて不可視数等の隠蔽関係を調べる方法があったが,図形数Nに対して処理時間がO (N2)となり,大規模データではバケット法など画面分割が必要であった.また計算誤差で可視判定が混乱して不正な表示をしたり,図形のトポロジーが矛盾して不安定化する問題もあった.今回スクリーン図形の内部表現として,スクリーン表示形式とは独立のスクリーン・バッファをスペースモデルのデータ構造で構成し,可視データだけを面と辺の形で保持する隠面・隠線消去両用方式を考案し,問題点を解決した.試作結果,従来の専用ハード化したピクセル対応Z?バッファよりは遅いが,道しるべ法により画面分割なしでO (N)の速度が確認できた.不正表示については,本方式では入力面が重なり部分ごとの小区画に分割されることを利用して,誤りを実用範囲まで削減できた.またトポロジーの矛盾については,ポインターでトポロジーを表現し管理する方式で解決した.その他,本方式はピクセルやスキャンラインと独立のため解像度の問題がない,データ構造が図形集合演算等,各種の図形処理に適した汎用性を持つ等の特徴も備えている.A new method for both hidden line and surface removal is developed.Because conventional Z-buffer holds only pixel data,it is inapplicable for a pen-plotter,picking a figure up by mouse,and such.So far,for pen-plotter,the other method examining quantitative invisibility is used.It's deficiency,however,is too large processing time as O(N2) unless dividing the screen.In the new method,where only visible surfaces and edges are held in the "Space Z-Buffer," O(N) processing time is realized without dividing the screen.Conventional hidden line removal systems are unstable if the topology of the figures is inconsistent caused by calculation errors.In this method,the system is stabilized by controlling the consistency using pointer representation of the topology.Another problem brought by calculation errors in depth comparison is erroneous display of invisible parts.This can be eased by dividing the figures into regions each of them overlaps with a different surface and by comparing the depth at the central portion of the each region.
著者
梶本 卓也 中井 裕一郎 大丸 裕武 松浦 陽次郎 大沢 晃 Abaimov Anatoly P. Zyryanova Olga 石井 篤 近藤 千眞 徳地 直子 廣部 宗
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会大会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.52, pp.265, 2005

中央・東シベリアの永久凍土連続分布域には、近縁2種のカラマツ(L. gmelinii, L. cajanderi)が優占する疎林が分布している。これまでの調査から、成熟した林(100年生以上)では、根が全現存量に占める割合は30-50%と北方林の中でも顕著に多く、同化産物のアロケーションが根にかなり偏っていることがわかっている。このことは、個体の成長や林分発達が地上部の光獲得競争よりも地下部での土壌養分、とりわけ窒素をめぐる競争に支配されていることを示唆している。本研究では、こうした点を裏付けるために、中央シベリアの成熟した林(約100年生)や山火事更新直後の若齢林(10年生前後)を対象に新たに伐倒・伐根調査を行い、既存のデータも加えて、アロケーションや根系発達が時系列でどう変化するのか検討した。その結果、100年生林では根が現存量に占める割合はやはり30%以上と高く、各個体の根系水平分布面積は樹冠投影面積の3-5倍に達していた。また林分レベルで推定された根系分布面積合計、単位土地面積当たり1を大きく上回り、根系がすでにほぼ閉鎖していることが示唆された。一方、更新直後の実生や若木では、根の割合は個体サイズとともに低下し、成長良好な大きめの個体で15-20%と成熟木よりかなり少なかった。この永久凍土地帯では、山火事更新後、コケや地衣、低木等林庄植生の回復に伴って、地温が低下し活動層の厚さも徐々に減少する。そして、もともと限られた無機態窒素の利用も制限されていく。こうした根圏環境の時系列変化を踏まえてカラマツ個体のアロケーションを考えると、土壌養分吸収の制限が少ない山火事後の更新初期段階では地上部の成長に偏っているが、数10年を経ると地上部から根へ大きくシフトし、その時期を境に地下部での個体間競争が起こって、やがては根系が閉鎖した林分状態に達することが推察される。
著者
渡邉 学 長尾 二郎 田中 英則 浅井 浩司 大沢 晃弘 松清 大 草地 信也 斉田 芳久 炭山 嘉伸
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.537-541, 2009-03-31 (Released:2009-05-12)
参考文献数
16

症例:77歳男性。C型肝炎,肝硬変,多発性肝細胞癌の診断にてTACE(transcatheter arterial chemoembolization)を施行されている。TACE施行7ヵ月後上腹痛を訴え緊急入院。ショック状態・著明な貧血を認め,腹部CT検査・腹水穿刺より肝細胞癌による肝破裂の診断にて緊急血管造影施行,外側区域腫瘍の腫瘍濃染,血管外漏出像を認め選択的にTAE(transcatheter arterial embolization)施行し止血した。その後経過良好にて退院となったが,TAE施行3ヵ月後再度急激な腹痛出現。前回同様ショック状態・貧血を認め,再度肝細胞癌の破裂による腹腔内出血を疑った。緊急血管造影にて肝S6腫瘍の腫瘍濃染認め,そこからの出血と考え選択的にTAE施行し止血した。2度の出血はそれぞれ異なる部位の肝腫瘍からの破裂であったが,迅速な対処による緊急腹部血管造影検査による診断およびTAEによる止血術は非常に有効であり,救命することができた。
著者
大沢 晃
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.42-55, 1990-01-15
被引用文献数
2

計卵誤差により図形演算プログラムが暴走する問題は 従来から図形処理における大きな未解決課題とされていた.これに対し 従来普通には「非常に接近した図形要素は同一点を占めている」とみなす対策が行われていた.しかしこれはある場合にはかえって暴走の原因となり 対策として不完全であった.本論文ではスペースモデルにより図形のトポロジーを表現し 「どんなに接近した図形要素も たとえ両者の座標値が等しくなっても トポロジカには同一点とは考えない」手法を採り トポロジーに矛盾が起きないようにデータ構造を生成する 新しい対策法と実験結果につき述べる.座標値よりトポロジーを優先したこと 図形の正しさは追及せず トポロジーが矛盾しないことを条件としたこと スペースモデルを使うことで起こり得る形状の種類が限定でき すべての場合の列挙が可能になったこと などが本方式のキーポイントである.スペースモデルによれば 二次元・三次元 注目 局所集合演算 運動図形の衝突検出 等 多彩な機能が平均的にO(1)の対話速度で実現できるが 本方式により本質的に高信頼度が得られ 実用化の基礎を固めることができたと考えられる.