- 著者
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松藤 泰典
河上 嘉人
- 出版者
- 一般社団法人日本建築学会
- 雑誌
- 日本建築学会論文報告集 (ISSN:03871185)
- 巻号頁・発行日
- no.329, pp.8-14, 1983-07-30
セメントモルタルの凝結性状を振動時の物理特性によって把握することを目的として実験検討を行った。それらを要約すると以下のようになる。(1) フライアッシュモルタルにおける分散粒子の凝集速度は, 分散状態を初期状態に保つのに要する最小の振動エネルギーレベルE′_<min>経時変化曲線より推して, 単分散粒子の2分子反応の式で近似できる。(2) セメントモルタルの場合も, 特に高性能凝結遅延剤を添加したモルタルに顕著にみられるように, 水和反応の潜伏期間においては, 2分子反応の理論の適用が可能である。(3) 凝結過程が進行し, セメントの水和反応が活発になれば, 明らかに系が変化するため, 2分子反応の理論からはずれ, E′_<min>としてより大きな値が必要となる。この時期を凝結の始発とすることは, 物理的意味も明確であり, また, 実用的にも適切と考える。(4) E′_<min>は調合に依存し, 分散粒子の濃度が大きい程, 大きな値を必要とする。以上, 本研究は, コンクリートの凝結進行程度を測定する合理的な一方法として, 凝結過程におけるコンクリートに振動を加えることにより, 凝結を解除し, これに要する振動エネルギーの大小から凝結の程度を測定する方法を示したものである。本方法によれば, 凝結開始点を特定できると同時に, コンクリートを一体連続の構造として打継ぐための許容打継ぎ時間間隔を見出すことができる。ことに, 凝結が極端に遅延する高性能凝結遅延剤添加コンクリートや, 砕石微粉末のような非水和性微粒子を多量に含むコンクリートなど, 分散粒子の物理的凝結が卓越する場合を包含して同一基準で取り扱えることから, 凝結過程における施工管理特性値として有効である。なお, 本研究は, コンクリートをウエットスクリーニングした場合のモルタル部分を想定して実験を行ったが, 今後, 実際のコンクリートによる実験を継続し, スクリーニングの影響等についても検討する予定である。最後に, 本論文作製に当り貴重な御指導と御援助をいただいた本学教授佐治泰次博士に, また実験に御協力いただいた技官津賀山健次氏をはじめ, 関係諸氏に感謝いたします。なお, 本研究には, 昭和57年度文部省科学研究費の助成を得た。