- 著者
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松野 保久
後野 剛一
- 出版者
- 鹿児島大学
- 雑誌
- 鹿兒島大學水産學部紀要 (ISSN:0453087X)
- 巻号頁・発行日
- vol.53, pp.7-13, 2004-12-24
改正された遊漁船業の適正化に関する法律の重要な目的の1つとして,第1条に,遊漁船の利用者の安全確保が明記されている。楽しむべき遊漁において,海難事故等の発生は,遊漁船業者においてあってはならないことである。今回,遊漁船業者へのアンケート調査から主として,船舶の航海術・運用術の観点から遊漁船の安全確保に関する問題点等を指摘した。過去において,この種の報告は全国を通じてみられないため,他県との比較検討を行うことはできなかった。鹿児島県下の遊漁船業の形態は漁業と遊漁船業との兼業(70%)が多く,営業種類は船釣り業務が過半数(58%)を占めた。これら遊漁船業者はいずれかの団体に所属することを奨励されているが,約1/3弱の業者が団体に所属していない現状にあった。遊漁船の大きさは総トン数5トン未満が多く(71%),旅客定員は4〜15人が最多(81%)であった。乗組員数は船長一人のみが過半数(60%)を,船長の年齢構成は50代以上が大多数(79%)を占めた。また船長のほとんど(80%)が一級小型船舶操縦士免許の海技免状を所有しているが,大型免状を併せ持っている船長も存在(17%)した。出航・営業中止基準の風速は10m/s,波高2〜2.5m,視程500mとする業者が最多であり,他府県の遊漁船業者が定める基準とほぼ同様であった。この基準を励行するための気象・海象情報の入手方法は,出航時においてはテレビの天気予報,営業時には携帯電話使用によるものが最多であった。遊漁船に搭載されている主たる漁労・航海計器類はブラウン管式魚群探知機,GPS,レーダ,磁気コンパスであり,平成8年度に調査した結果と大差なかった。営業中におけるGPSの使用時間は,常時スイッチオンにして使用している船長が最多(65%)であり,レーダ使用時間は,営業中常時使用する船長はGPSに比べて少なく(18%),必要に感じた時のみ及び移動中のみ使用するとする両者の合計は79%に達した。またレーダ使用目的は他船の存在確認のためとする船長が多数(80%)を占めた。今回のアンケート調査を実施するに当たり,鹿児島県林務水産部水産振興課技術主幹兼漁業監理係長の高橋宏氏及び同課漁業監理係技術主査の山下善久氏には多大の便宜を図っていただいた。ここに感謝の意を表する。また多忙の中,多岐にわたる面倒なアンケートに回答下された多くの遊漁船業者の方々に深謝する。