著者
飯田 泰浩 村田 龍 井上 航 重松 康彦 板橋 豊
出版者
The Japan Society for Analytical Chemistry
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1.2, pp.9-17, 2021-01-05 (Released:2021-04-04)
参考文献数
27

Using high-resolution capillary gas chromatography with flame ionization detection, we determined the fatty acid compositions of each ten sample of the margarines, fat spreads and butters currently consumed in Japan, with special reference to trans fatty acids. The total trans fatty acid contents of the margarines, fat spreads and butters examined were 0.19–1.49 g 100 g−1 (av. 0.71 g 100 g−1), 0.16–0.88 g 100 g−1 (av. 0.51 g 100 g−1), and 2.49–3.37 g 100 g−1 (av. 2.74 g 100 g−1), respectively, clearly showing lower levels of trans fatty acids in all the samples of margarines and fat spreads than those of butters. In addition, the total saturated fatty acid contents of the margarines, fat spreads and butters were 17.3–45.6 g 100 g−1 (av. 29.7 g 100 g−1), 4.51–25.6 g 100 g−1 (av. 16.2 g 100 g−1), and 48.8–54.8 g 100 g−1 (av. 52.4 g 100 g−1), respectively, also showing lower levels of saturated fatty acids in all the samples of margarines and fat spreads than those of butters. The most predominant trans fatty acid of butters is vaccenic acid (11t-18 : 1), comprising av. 30.4 % of total trans fatty acids, while in margarines and fat spreads trans 18 : 2 (9c,12t- and 9t,12c-isomers) and trans 18 : 3 (9c,12c,15t- and 9t,12c,15c-isomers) were the major ones, suggesting that they were derived from refined vegetable oils as raw materials. The present study demonstrates that modern Japanese margarines and fat spreads have significantly lower levels of trans fatty acids and saturated fatty acids than butters.
著者
田尻 智計 板橋 豊
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.51, no.9, pp.667-674, 2002-09-05
参考文献数
13
被引用文献数
1 3

高速液体クロマトグラフィーと質量分析法を用いて,生体膜の主要構成成分であるホスファチジルコリン (PC) の分子種の詳細を明らかにする高感度で簡便な方法を確立した.植物油及び魚油から分離した PC を逆相 HPLC とエレクトロスプレーイオン化質量分析法 (HPLC/ESI-MS) により分析した.HPLC 分析では,粒径 4μm の ODS 充填剤を含むカラム (25 cm×4 mm i.d.) と少量の塩基を添加した移動相{メタノール-アセトニトリル-トリエチルアミン (90 : 10 : 0.1, v/v/v)}を用いることによって,高度不飽和酸を含む種々の分子種が明りょうに分離された.HPLC/ESI-MS では, [M + H]^+と [M + Na]^+の強い分子量関連イオンと [M - RCO + 2Na]^+のフラグメントイオンが得られた.これらのイオンを利用して各分子種を同定した.
著者
倉沢 康大 板橋 豊 山本 麻希 綿貫 豊
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.137-141, 2012 (Released:2012-04-27)
参考文献数
26
被引用文献数
2 6

繁殖地を離れて1週間にもおよぶロングトリップ中にミズナギドリ類は餌の大部分を消化・吸収し,吸収しづらいトリアシルグリセロール(TAG)やワックスエステルを胃油として胃に蓄積する.胃油のもととなる餌生物を特定するため,胃油中のTAGの脂肪酸組成を新潟県粟島で育雛中のオオミズナギドリにおいて分析し,潜在的な餌の脂肪酸組成と比較した.胃油の脂肪酸組成は,カタクチイワシあるいはサンマに似ていたが,他の外洋性の生物を食べた可能性も完全には否定できない.この2種だけを食べたと仮定すると,その比率はオイルベースでカタクチイワシが77%,サンマが24%と推定された.
著者
板橋 豊 河野 真子 青山 倫也 中島 寿昭
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.49, no.6, pp.375-380, 2000-06-05
被引用文献数
3 2

必須脂肪酸の一つであるγ-リノレン酸のトリアシルグリセロール(TG)分子中での結合位置を決定する簡便な方法を検討した。糸状菌Mucor circinelloides及びその変異株の脂質からγ-リノレン酸高含有TGを分離し,これをグリニャール分解してsn-1,2-及びsn-2,3-ジアシルグリセロール(DG)のエナンチオマー混合物を得た。この混合物を3,5-ジニトロフェニルウレタン誘導体に変換した後,(R)-1-(1-ナフチル)エチルアミンを不斉部位とするキラル固定相を装備したHPLCを用いて光学分割し,純粋なsn-1,2-DG(I)及びsn-2,3-DG(II)画分を得た。IとII及びTGの脂肪酸組成からTG分子中のsn-1,sn-2及びsn-3位におけるγ-リノレン酸の分布を算出した。また,IとIIを逆相HPLCで分析して,それぞれの分子種組成を明らかにした。得られた結果から計算により求めたTGの脂肪酸組成はオリジナルTGのそれと近似したことから,本法の正確さを良好であると判断された。Mucor circinelloidesの産生するγ-リノレン酸はTG分子中のsn-3位に最も多く存在し,次いでsn-1位,そしてsn-2位であり,大きく偏って存在することが明らかとなった。
著者
鷹野 浩之 板橋 豊
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.51, no.6, pp.437-442, 2002-06-05
被引用文献数
3 14

抗肥満作用を有する 1,3-ジアシルグリセロール (1,3-DG) の分子種を正確に求める方法を確立した.食用油(エコナクッキングオイル)中の 1,3-DG を 3,5-ジニトロフェニルウレタン (DNPU) 誘導体に変換した後,高速液体クロマトグラフィー (HPLC) と質量分析法 (MS) を用いて分析した.その結果,C30 カラム (25 cm×4.6 mm i.d.) を装備した逆相 HPLC により 1,3-DG を構成する種々の分子種が 60 分以内に明りょうに分離された.また,HPLC/エレクトロスプレーイオン化 (ESI)-MS 分析では,分離された各成分について顕著な [M-H]^-イオンが得られた.このイオンを利用して,各分子種を同定した.本法は,種々の食用油に存在する 1,3-DG の分子種分析に適用できる.